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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
温かな思い出
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家路を急ぐ

 カロは誰かに頭を撫でられた様な気がして、はっと目が覚める。

 懐かしい感覚があるのに、どうも思い出せない。


 「そろそろ、行きましょう」


 カロは上半身を起こして両腕を上に伸ばし、大きな欠伸をしながら声が聞こえた方へ視線を向ける。

 柔らかな笑みを浮かべたクーアがそう言って片手を差し伸べてきたので、掴んで立ち上がった。


 シュッツァーはすでに獣化しており、双子と一緒にハーネスをつけソリと繋がって待っていた。

 一番後ろのソリを見れば、使い込まれた薄い布で包まれた大きな塊が紐で固定されて乗っていた。

 エーバーが原形のまま乗っているわりには、ややコンパクト。


 「あの布の塊は、エーバー?なんかちょっと小さくなってない?」


 「そうですよ。カロ君が寝ている間に、シュッツァー君が皮剥とか肉の解体をしてくれたんですよ。そうそう、それで驚きなのがシュッツァー君が前足の方を担いで、オネスト君が後ろ足の方を自分の頭と背中で支えて、あの三メートルはあろうかというエーバーを二人だけで小屋まで運んじゃうんですよ!!狼獣人(ルプス)は、凄い力持ちなのは知ってましたが、ここまでとは!!それでですね、小屋には色々道具が揃っててですね、まずエーバーを逆さにハンガーに吊るして、ナイフで皮を」


 「ねーねー、お腹空いたー!」


 「そうだ、そうだ。早く帰ろー!」


 「あー...じゃー続きはまた今度。帰りましょう」


 自己主張する為に話に割って入った双子のお陰で話は中断した。内心、あのての話を聞きたくなかったカロは、ほっと胸を撫で下ろす。

 ソリに向かえば、ファーコート二着とターバンの様な布が二枚置いてある。布の方を拾い上げてカロは、首を捻る。


 「今度は、砂漠を()()通り抜ける。砂漠の砂が目や口が砂が入らない様に、それで顔を覆っておけ」


 (砂が入るのは嫌だな。けど、どうやって巻く?)


 カロは取り敢えず、頭を覆ってみた。それだと顔が隠れない。

 見かねたクーアが、口元を手で隠しながら近づいてくる。肩が小刻みに揺れている。笑いを堪えているのだろう。

 胸に片手を置いて小さく深呼吸してから、もう一つの布を取るとカロへ巻き方を見せて伝授した。

 二人がソリ乗ると、狼達は勢い良く駆け出して行った。


 帰りは行きの様にゆっくりした走行ではなく、60キロはあろうかという速度。

 カロはソリに懸命にしがみついて、振り落とされない様にするのが精一杯。

 あっという間に砂漠へと出ると早朝とはうってかわり、ジリジリと肌を焦す様な暑さ。

 その中を、速度は落ちることなく駆け抜けて行けば、カロへ砂まじりの風が当たる。


 (目、目が痛い!布無いよりましだけど...)


 カロは目を開けていられず、目を閉じた。

 それも束の間と思える程、案外早く狼獣人ルプス達の家に着いたのだった。

 家に着くと、カロ達が帰って来る時間を知っていたかの様に、狼獣人(ルプス)の民に出迎えられた。

 男衆には良くやったと乱暴だが頭を撫でられ褒め称えられたが、女衆には砂まみれで汚れると嫌がられ、直ぐに風呂に入る様にとその場を追い出された。

 

 風呂は男女別で、各ドアを開けて入ると脱衣所がある。竹のような素材の網カゴが置いてあり、皆、着ていた服を脱ぐ。

 狼達は帰ると直ぐに人化していた。不思議な事に、人化すると服を着ているのだ。

 カロはそれが気になって聞きたかったが、女衆の勢いには逆らえず今に至る。

 風呂の入口には暖簾の様な布が掛かっている。

 そこを抜けると、中は広く、公衆浴場の様な作りの大きな風呂がある。だが、シャワー、石鹸、シャンプー、リンスなんてものは当然ない。

 湯は別に引かれている訳でもなく、風呂の湯を木の桶ですくうようだ。

 身体は湯で洗い流すだけでなく、瓶に入った白い液状のものを身体につけて洗っており、擦り合わせると泡が立つ。


 「わーい、アワアワ!えい!あははは!カロの頭もアワアワ!」


 「ちょ、何するだよ、オネスト!」


 入り方を伺っていたカロは、後ろから現れたオネストに頭を泡だらけにされた。


 「あははは!カロ君、面白い頭になってますよ」


 「面白いってなんだよ、クーア...」


 カロ本人は鏡がないので分からないが、頭の泡はアフロの様になっていて、それを見たクーアに笑われた。


 「じゃー、クーアも同じにする!いえい!やー!」


 「笑った罰だ!同じ目にあわす!」


 「ちょ、ちょっと!やめてくださいよ」

 

 そんなじゃれ合うカロ達は放っておいたまま、シュッツァーは黙々と身体を洗っている。


 「「おーやっとるなー!!皆の衆!!」」


 入口から息の揃った二人の大きな声がする。カロは戯れるのを止め、声のした方を見た。

 そこには長く編み込みされた茶色の顎髭を蓄えた、ノームより少し背の高い、茶色の髪の赤色の目をしたガタイの良い男が二人。

 身体は毛深く、耳の生えたドワーフの様だ。その二人に比べるとこちらの四人は体毛がかなり薄い。

 その男達は、髭もお揃いで双子の様に似ているが、一人は筋肉はあるが腹が出て、もう一人はすっきりとした無駄のない筋肉質な身体。


 「俺らも、女どもに追いやられてなー!なー弟よ。あはははは!」


 「今日は綺麗にしないとダメだってなー!兄さん!あははは!」


 「まーそんな訳だ!一緒に入れてくれ!で、どっちがカロとかいう奴だ!」


 「兄さん、カロは人間だ!こっちだろ!」


 「そうかそうか!」


 大きな声の二人。地声の様だ。

 その二人はズンズンとカロへと近寄ってきて、その迫力にカロは思わず仰け反りそうになる。


 「じゃー親睦を兼ねて、俺が背中洗ってやろう!」


 「じゃー、兄さんが背中を洗うなら、俺が頭を洗ってやろう!」


 「え、ええ?いやいや、大丈夫です。自分でやります!」


 「「遠慮すんな!!」」


 二人同時に息ぴったりに言って、にーと満面の笑みを向けられたら、カロにはそれ以上断る勇気はなかった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


次回は、何やらサプライズがあるようです。


引き続きよろしくお願いします!


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