ようこそ、ミニエーラへ1
ミニエーラへと続く境界の入口を潜りながら、カロはここまでのことを振り返り、怒涛のようだったと思っていた。
意識が途切れてから三日が過ぎ
起きてみれば、見知らぬベットの上にいたカロ。
頭の片隅がピリピリと痛み、やけに身体は重だるい。
起き上がるや否や、ミニエーラへ行くようにアテネに急かさた。
何故か、隣のベットにいる。上半身を起こし腕を組んでいるアテネは、やけに不機嫌そう。
アテネの圧に怯んで、半ば追い出されるかたちで部屋を出たカロ。他のエルフ達に無言でジロジロ見られて、居心地悪く助かったのはあるが。
丁度出た先でクーアと出会えば、あれよあれよと事は進み、目覚めて半日も経たずに境界の入口まできていた。
また歩いて境界の入口へ行くのかと今は辛いなと思っていれば、飛竜に乗って行くことになった。
カロが目覚めた日と同時に戻ってきたウンディーネのお陰で、結界が正常となり、飛竜が復活したのだ。
初めは慣れない空の飛行で、落ちないかヒヤヒヤしていたが、魔法が掛かっているから落ちないとクーアから言われていたとおり、確かに車にでも乗ってるかのように落ちない。
ともすれば、悠々と飛ぶ飛竜から吹く風は、初夏の風の良いで心地よく、晴れ渡る空は爽快で、降り注ぐ陽射しは暖かく包み込むようで、楽しくなったのは言うまでもない。
気になって、そっと顔を出せば、空からキュアノスを眺める。
樹木が生い茂る群落の中、大小様々な青く澄んだ湖群が滝で繋がり、やがてイシュカ城のある丸い大きな泉へと流れ、その周囲に森が、そして山へと繋がっている。
なんとも神秘的な大陸なのだと思わずにはいられない。
もっと色んな所を見たかったと、残念な気持ちにもなった。
境界は透明な障壁になっている為、見た目ではよく分からないが触ってみるとそこに壁があるように通り抜けできない。
その中で淡い光を放つ場所がある。そこが入口で、普段はそこには何もない。互いに解除魔法を行わないと現れない仕組みになっているらしい。
そしてカロ、スピカ、クーアのさんにんは、飛竜に乗ったまま入口を通り、ミニエーラへ入った。
飛竜は地面に着地し、さんにんを下ろすと、魔法が解けたようにサァーと光の粒子となって消えていった。
ふと見れば、着いた先で待っていた者達がいた。
ひとりは少年というには落ち着いた雰囲気が漂う、肩にツミに似た鷹を乗せた人物と、輝くほどの純白で手触りの良さそうな毛並みのホッキョクグマぐらいは有にありそうな一際大きな狼一匹に、栗色の白い狼ほどではないが、全長160cm以上はありそうな狼一匹とそれよりは小柄なダークブラウンの狼が二匹いた。
「やぁ〜。よく来たの」
ゆったりと間延びした物言いで言ったのは、背がカロの半分ぐらいの高さで、幼さが残る端正で優しげな顔付きに、ダークオリーブグリーンの大きな瞳、柔らかそうな栗色の髪を団子結びし、右側に垂れた長い髪に緑色に輝く宝石のような鉱物で造られた筒状の髪飾りをつけた少年のような人物。よく見れば、頭には狼のような大きな耳がある。
カロは話すとピクピク動く耳に目を奪われずにはいられず、そわそわと尻尾はあるのかとチラチラと見ていた。
「どうかしたかの?」
「いや、いえいえ。何でもないです。で、で、貴方は?」
見ていた事に気付かれ、愛想笑いしながら慌てて話題を逸らそうとするカロ。
「わしは、ノームというでの。これから暫くは一緒に生活するからの、宜しく頼むの」
ゆったりした歩みで近寄り、片手を差し出してくるノームに、カロは慌てて手を出して握り返す。
その時、ちらっと見えたノームにあるふさふさの尻尾を見逃さなかったカロは目で追ってしまう。
「ん?尻尾が珍しいかの?獣の人は初めてかの?...そうか、そうか。狼獣人とっ言って、わしらは人と獣の血が混じっている一族での。そこの三匹もそうでの。今は獣化してるがの」
「ようこそ!はいはい!僕、オネスト!」
「ようこそ!あたしは、ジョリー!オネストと双子なの。こっちの栗色の狼はナビールで、でっかいわんこはゲミュートだよ」
ダークブラウンの狼が交互に自己紹介を始める。二匹ともに顔立ちも大きさも声も似ている。違いは、尻尾の長さだろうか。オネストの方が若干短い。
「日も暮れてきたしの、君らの自己紹介はわしらの住居でという事で、そろそろ行くかの。住居は、あっちにあるでの」
ノームが指差した方は、鋭くそびえ立つ山しかない。
カロは、思わず驚愕するしかなかった。




