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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
廻り始めた運命
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忍び寄る影2

 男の声が聞こえると、カロ達は一斉に足を止めた。


「なぜ...」


 気になって、小さく呟いたアテネの横顔を見るカロ。困惑気味に見える。


 「クーア、カロを頼む。アンさんとスピカは、そのサポートを」


 それも一時のこと、アテネは隊長らしく瞬時に指示を出し、一点を見据え、剣を握るような姿勢をとった。

 アテネの手の甲には、波を円にしたような形の模様の青い光が浮かぶと、両手に光の粒子が集まり、瞬時に80cmくらいはある大刀のような、青い光の刀が握られた。

 それをぼけっと見ていたカロは、強い力で後ろに引っ張られる。咄嗟のことで、上手く対応出来ずに足をもたつかせながら、カロはクーアの後ろに追いやられる。

 

 「ごめんね、カロ君。後ろで離れず、大人しくしていて下さいね」


 ニコッと笑顔を向けるクーアだが、目が笑っていない。緊張の色が見える。

 カロの前にクーア、右隣にスピカ、左隣にはいつの間にクーアの背中からおりたアンと、カロを囲いように並ぶ。カロ以外は、戦闘体勢となった。


 「奇襲かけないでおいたのに、そんな殺気立つなーよぉ」


 カロの直線上より少し離れた木の上から、ひとりの男がくるりと回転してひらりと軽快に飛び降りた。

 カロと同じくらいの背丈に見える男だが、やけに猫背で実際はもう少し大きいのかもしれない。

 身に付けているフード付きローブは真っ黒で、左肩付近に描かれた片翼のような刺繍は真っ赤な血のようにも見え、不気味だ。

 目元までくる深いフードを被り、影の効果もあって口元しか見えない男。口元はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて、実に気持ちが悪い。


 「驚いたよねぇえ?まーそーでしょ、そーでしょ。あの方が言ったとーり。ここら辺で待ってて正解!しかもここら辺、エルフの残り香が残ってるしさー。ククっ、最近、目が悪いせいか、匂いに敏感でさー。まーまーまーぁ、いいかぁーそんなこと。あっそぼーぜぇ」


 男が地面を蹴って動き出すと同時、真っ直ぐアテネに向かって行く。見た目は人間だが、人間とは思えないほど素早い。

 アテネと近い距離まで詰めると地面を蹴って飛び上がり、何か黒光するピアノの弦のようなものを両手からアテネ目掛けて投げつける。

 アテネは後ろをチラッと窺ってから、大刀で勢いよく地面叩きつける。が、弦は生きているように地面から跳ね返り、アテネに向かっていく。アテネは大刀で受け、弦は大刀に絡みつく。

 男が地面に着地すると、アテネと息が掛かりそうな至近距離。巻き付いた弦を強く後ろに引っ張るような体制をとっている為、自然と男の顔が前に出る。


 「アーテーネ。いやーほんと、会いたかったよーぉ。お前に潰された左目が疼いて、疼いてさーあぁ!!」


 ねっとりとした男の声に、怒気が混じる。


 「知ったことか。お前の非道な悪事に比べれば、代償としては安すすぎだ」


 「はっ!!そーかい。なら、この目の代償は、お前の目だ!くり抜いて、俺の目にしてやるよ!」


 男は一旦、真後ろに飛び、アテネと距離を離してから、弦を右肩の上で両手で持つと力一杯引っ張る。

 アテネは力では負けておらず、留まった場所から動かない。だが、足元の地面はへこんでいる。

 一歩も引かない、アテネと男。緩みなくピンと張った一直線の弦は、素手の男の手を切ったのか血が流れ、地面にぽたりぽたりと落ちている。

 男はそれでも構わず、体勢を変えない。時間が経つにつれ、地面の血の染みは男を囲うように広がっていく。


 「死者反転(ルネートゥル)


 ぼそりと男が呟くと、地面から黒いもやが立ち登り、もやが濃くなり黒い塊から、人のような形へと変化していく。それが、四体並ぶ。

 ニッっと男の口元が釣り上がた。


 「行け!」


 男の掛け声と共に、四体の黒い物体は後方のカロ達へ向かってきた。


 「強壁(プロテクト)


 アンが瞬時に両手を合わせて、魔法を発動した。手の甲にはアテネと同じ模様の青い光が浮かび、ドームのような光の壁がカロ達を包み込む。

 四体の黒い物体はアンの魔法に阻まれて、カロ達の所までは来れない。


 「おっと、はっ、バレたか。ばーさん、伊達に歳をくってないねぇ。やー、ほんと、いつも邪魔してくれるよねぇ?...けど、今の俺は、あの方から力を授かって、いつもとは違うんだぜ?耐えられる、かなぁー。...強化(ブースト)


 男から黒いもやが立ち込めると、四体の黒い物体の方へ流れていく。


 「くっ。なんじゃ、あやつ、バケモンか」


 アンは辛そうに眉を寄せ、呟く。


 「ばーちゃんもうちょっと、耐えて!」


 クーアはそう言うと、空間魔法(ストレージ)から刃に花のような模様が彫られた薙刀のような武器を、取りだし構える。手の甲がアテネと同じ模様に青く光り出すと、刃が青く光りだした。


 「カロ君、僕はあの黒いのやっつけに行きますから、ばーちゃんとスピカさんから離れないようにお願いしますね」


 そう告げ終わるや、瞬時に黒い物体へと飛び掛かっていく。


 「波動(ヴァーグ)


 クーアがそう唱えると、地面から斜め上に斬り上げた武器に水が巻き付いて、その軌道上に巨大な波を繰り出し、四体の黒い物体へと激突させた。

 直撃した四体の黒い物体は、吹っ飛んで消滅する。すると、男は突然よろめく。

 一瞬の隙を見逃さなかったアテネは、迅速に男へ切り斬りかかった。

 男は避けることができず、正面からもろに斬撃を受ける。深く入ったのか、血吹雪が舞い、呆気なく倒れ込む。

 容赦なくアテネは背中に刃を突き立てようとするが、突如動きを止める。


 「困るよ、殺してもらってはね。まだ、やってもらうことがあるんだからさー」


 いつのまに、どこから現れたのか、誰も気付けず、青年が倒れた男の隣に頬杖をしながらしゃがみ混んでいた。


 「全く、力がまだ充分使い切れてないのに、力をバンバン使うバカがどこにいるのさ。電池切れで死んだら、元もこうもないじゃんねぇ?頭足りないのかな?」


 呆れた物言いの青年は、返事のない男をパンパン軽く叩くと鷲掴み、立つと同時に引っ張り上げた。決して、がたいがいいわけでもなく、背もカロよりやや低く、細い体格で軽々と持ち上げる。

 男と同じローブのフードから見える可愛らしくあどけない顔つきからは創造もできない、力強さ。


 「さて、と。どーしようかな。困ったな。死んじゃっても困るけど...」


 男を掴んだままの青年が、ぶつぶつと独り言を呟き始める。

 それに対し、どういう訳か、カロ達は時が止まったように動けずにいた。

 特にカロは青年を認識した時点で、恐怖に慄いていた。恐怖からなのか強い吐き気と頭が割れるように痛く、景色が歪むほどの物凄い眩暈に襲われ、ブツリと意識が事切れた。

ここまで読んで下さり、ありがとうございありがとうございました。

感謝の気持ちでいっぱいです。

次話もどうぞ、よろしくお願いします。

次回は黑視点となります。

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