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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
廻り始めた運命
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忍び寄る影1

 「何?」


 「へ?」


 「寝ぼけてないで、着替えたらどう?何か、外が騒がしいようだし」


 さっきまで居た、少年なのか、少女なのかは居らず、枕元にいるのはドラゴンナイツの黑で、カロを見ていた。表情は機械で無いが、声音は呆れた感じだ。

 外と言われ、出入口の扉に視線を移す。確かに、騒がしい。

 白い寝間着から狩人のような服に着替える。黑が頭上に乗るのを確認してから、扉を開いて様子を伺った。

 バタバタと鎧で武装したエルフが行き来している。明らかに、ただ事ではない。


 「とりあえず、エルフが多く集まれそうな大広間へ行ってみたら?」


 黑の意見に頷いて、城の出入口をまっすぐ行った奥にある大広間へと向かった。

 エルフの波を掻き分けて、大広間の奥の方へ辿り着く。前にアテネ、その斜め後ろに二フリートが控えるように立ち、スピカは少し離れた柱に近くにいた。

 アテネと二フリートは、他のエルフと同様武装し、配下のエルフ達と真剣な面持ちで話をしている。

 話が終わって、話していたエルフ達が出て行こうとした時、カロに気づき、視線を向けて近づいて来た。


 「来たか。もう少ししたら、呼びに行こうと思っていた所だ。助かる」


 「何事、ですか?」


 「...賊が、現れた。エルフ達が住む森の各集落までは来ていないらしいが、狩場としている森には侵入して来ていると、報告を受けてな。戦えない女、子供は避難させている最中だ。それに...」


 「それに?」


 「賊は空賊でな、飛行船は狩場の近くにあるらしいが、肝心の奴が見当たらないと言うのが...気に掛かっている。が、ウンディーネ様がいない今、我々が民を守らねばな」


 「奴?...ん?そう言えば、ウンディーネさんは、こんな時に何処へ?」


 「世界の歪みを直す為、祈りの間...君が一番最初に目覚めた所にいる」


 「賊より、歪み?が優先なんですか?」


 「そうだ。世界の歪みが広がれば、世界は破滅してしまうからな。それで、ウンディーネ様が祈りの間へ入られた隙に、奴らは攻めてきたわけだ」


 「...こー魔法で、結界とか張ってないんですかね?」


 「...いつもはウンディーネ様の強固な結界が張られいて、そうやすやすと入れない。君も飛竜は、見たことがあるだろう?あれは、結界を具現化したものでここを守っている。だが、癒しの儀式中はどうしても、結界が弱まるようで、今は飛竜も飛んでいないというか、見えなくなっている。ここ最近は特に...」


 「じゃー、最近は、空賊の被害に遭ってるんですかね?」


 「...そう、だな」


 「で、私は、何をすれば?」


 「君かい?君は、私達と一緒に来てくれ。だが、まだクーアが来ていないんだ。どうしたものか...」


 アテネが思案顔で眉を寄せた時、パーマが掛かった真っ赤な髪が特徴的な小柄で年老いた女エルフを背負ったクーアが、焦りながら小走りで入ってくる。


 「す、すいません。遅くなりました。ばーちゃんが、急に連れて行けとせがんだもので」


 コツンと軽く、クーアの頭を叩く年老いた女エルフ。


 「誰がせがんだじゃ。わしは子供じゃ無いんじゃぞ。必要があったから、連れて行けと言ったまでじゃ。ほれ、下ろせ」


 物言いたげな顔のクーアだが、従ってゆっくりと年老いた女性を床に下ろす。


 「ほれ、お前さんにじゃて」


 背負っていた風呂敷から、オフホワイトのフード付きのナイトケープを広げながら取り出すと、カロへ差し出した。


 「へ?私?」


 「ウンディーネ様が身を守る魔法を掛けながら、紡いだ糸で編んだんじゃ。弱そうなお前さんも、これで護身できるじゃろ。それにあ奴らと見た目は一緒じゃが、わしの魔除けの(まじな)いも掛けておいたぞ。ほれほれ、ぼーとしてないで、着てみろ」


 年老いた女性に急かされるまま、カロはナイトケープを羽織る。


 「ほれ、行くぞ。クーア、背負え」


 「え?一緒に行くの?で、でも」


 戸惑ったクーアはアテネに視線を送った。だがそれを他所に、年老いた女性は急かすようにクーアの背中をバンバン叩く。


 「これでもわしは、今のお前のポジションの近衛隊上位四者、治療班小隊長だったんじゃぞ。それに誰が、槍や魔法を教えたと思っとるんじゃ」


 「...そうだな、アンさんもいた方がいいだろう」


 アテネの言葉に、目を丸くするクーア。戸惑いの色が目に見えるが、渋々アンを背負う。


 「さあ、行こう。ニフリート、ウンディーネ様の事は任せた」


 「え?どこに行くんですか?てっきり、ウンディーネさんの所に行くのかと」


 「ウンディーネ様から君を、ミニエーラへ連れて行くように指示を受けている。この状況だからな、私は境界までは私も着いて行く。その先は、スピカとクーアと行ってもらう」


 「え?え?どうしてです?」


 「今は、説明している暇はない。後で、黑君から聞くといい」


 「く、黑??」


 混乱しているカロは、黑がいる方向へ視線を上げる。


 「...後で、話そう」


 感情が読めない静な声の黑。

 カロは、何か言いたげに口を開くが周りの状況に口籠った。


 . . . . .


 イシュカ城には隠し通路がある。薄暗い息苦しさを感じる通路は、人ひとりが通れるくらいの幅。

 アテネが先頭に、カロ、クーアとアン、スピカの順番で歩いていた。


 「そういえば、スピカさんが使ってた転移魔法(ムーブ)とかで一飛びした方が早くないですかね?」


 騒つく気持ちを振り払うように、カロは違うことを考えて、ぽろっと思いついたことを口にする。


 「...この大人数を移動するのは、マナ量を多く使うことになる。これから旅に出るというのに、余計な体力消耗は避けたい。それと、魔法を使用すると賊に、探知される。向こうにはそれが得意な奴がいるんだ。奴に今、見つかると厄介なんだよ」


 「...そ、そうなんですか」


 アテネにはそれ以上は聞けずに、沈黙が訪れる。早く着いてほしいと願いながらカロは歩み続けた。

 どれくらい経ったか。長いと思える距離を歩いてやっと出口の光。閉鎖的な居心地が悪い場所から、外の空気を吸えば安堵感を感じるカロ。


 「この森を少し行った所に、境界の入口がある。そこまで行けば、ミニエーラの民が迎えてくれる手筈になっている」


 アテネは出口を出てから振り返り、カロに告げた。いつも冷静そうなアテネも警戒して顔が少し硬っている。

 森に入り、緊張感が全体に伝わってか、無言のまま突き進む。木々が密集した深い森の中、見失ったら迷いそうで必死に着いていくカロ。道なき道を木々を避けながら歩んでいると、足がもつれてよろけてしまう。


 「あ、ぶね」


 「ククク。だーい、じょうぶかーい?」


 不快な笑いとねっとりとした男にしては少し甲高い声が、少し離れた所から聞こえた。

ここまで読んで下さり、ありがとうございありがとうございました。

感謝の気持ちでいっぱいです。

次話もどうぞ、よろしくお願いします。

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