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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
竜の嘆き
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最後の戦い2

 黑がサラマンダーに向けて大きく口を開くとそこから凄まじい光線が放たれ、三頭はあっという間の事で避けられず、もろに光線が直撃してしまい力が抜けて散り散りに墜落していく。

 そこを容赦なく、黑はサラマンダーに攻撃を仕掛けていく。

 サラマンダーの首の先程までノームが噛み付いていた所に、誰よりも鋭い牙を立てて噛み付き咥えたまま乱暴に大きく振り上げ、地面目掛けて叩き落とす。更に落ちていくサラマンダーの胴体をプレスする様に勢いよく上から押し付け、鋭い爪を立て食い込ませるとそのまま地面に思い切り叩き付けた。骨が折れる鈍くも大きな音がすると、サラマンダーは大量な血を吐き出し事切れた様に動かなくなった。


 圧倒的な力の差で呆気なく戦いは終わったかとそう思った瞬間、黑は天高く飛び上がり竜巻の様にグルグルと回転しながら天を突っ切らんばかりの速さで一気に心がいる空まで来る。

 そこで大きな翼をバッっとめいいっぱいに広げると、その声を聞けば恐ろしく震え上がりそうな程の大きな咆哮を轟かせた。


 大地はガタガタと地震の様に震え、サラマンダーの放った炎は勢いを増し、ありとあらゆる大地がヒビ割れて崩れ行き、そこから一気に炎が舞い上がると世界をあっという間に火の海と化した。


 その光景を見届けていた心は目の前の黑が恐ろしく悪魔の様に見え、地獄絵図の様な火の海と化した世界に、恐怖でガタガタと震え上がってしまう。

 うまく呼吸ができず、心臓は今にも飛び出すのではないかという程に跳ね上がり、逃げれるのなら今すぐ何処か逃げ出したいのに身体がすくんで動けない。

 

 そんな時に、黑と視線が合う。


 (もう...だめだ)


 そう思った瞬間、今までずっと大人しくしていたゲミュートが大きく吼えて威嚇する。その反動でゲミュートの身体が動いた為に、心は思わずゲミュートの毛から手を離してしまい落ちてしまう。

 それをゲミュートは咄嗟に気づいて、自分の口のへ心を飲み込んでしまう。

 黑はそれを見た途端に怒った様に大きく吼えるとゲミュートに向かって勢いよく飛ん来て、二頭は正面切ってぶつかり合う。


 互いの大きな牙と牙が、鋭く飛び出た爪と爪が、互いの身体を傷つける。互いに容赦なく自分自身の武器を振うのだ、傷ついた箇所から血が吹き出し流れ、それでも互いに一歩も譲らず激突する。

 黑が大きな口を開いて光線を繰り出そうとするのを、素早く空を駆け抜いてゲミュートは回避し黑の背に回り込むと大きな翼に二本の大きな牙を立て噛みちぎる。

 黑が少し怯んだうちに、そのままの勢いで駆け抜けて横顔に爪を立てれば、一気に距離を取る為なのか逆方向の空へと全速力で駆け抜ける。


 流石の黑も負傷した傷が痛むのか無闇に追ってはこず、その場に止まっている。


 ゲミュートと黑の距離はどんどん離れ、いつのまにかキュアノスまで来ていた。ここまで来ると流石のゲミュートもスピードを緩めたが、何処か行く場所があるのか止まる気配はない。

 

 心はといえば、今だにゲミュートの口の中。飲み込まれた瞬間、あの鋭い牙に噛み砕かれあの長い舌を伝って食道行きかと覚悟したが、口の中特有の粘っとした感触もなく、そこは何もない真っ暗闇であった。


 『心』


 急にゲミュート声が頭に響き、心の肩がビクッと飛び跳ねる。


 「...何?」


 心は恐る恐る、普通に話して通じるのかと疑問に思いながら返事を返す。


 『これから、シンモラの所へ行く』


 「...黑はどうするつもりなんだ?」


 『スルトは、暴走している。今のままでは、どうにもできない』


 「...暴走?」


 『スルトとシンモラは、二柱で一対、片方だけでは不完全でその力を振るおうとすれば、暴走する様だ』


 「ちょ...それって...黑は承知してたの?」


 『無論、そうだろうな。ただ、あの場を沈めるには、ああするしか方法はないと思ったのだろう』


 「...スピカちゃんを目覚めさせれば...黑は元に戻るのか?」


 『...目覚めさせれば分かる事』


 「...そうか...なら、行こう」


 『...だが一つ、問題がある』


 「...何?」


 『心...お前はこのままでは、消えてしまう。そして、我は主に逆らった獣、スルトに牙を向けた時点で(えにし)が切れてしまった。主あっての我よ。少し経てば、我も消えてしまう』


 「...どうにか...できないのか?」


 『...方法は一つ...我と心、融合すればよい』


 「...融合?」


 『我が、心、お前の器となればよいのだ』


 「...神族(テオス)としかできないんじゃないのか?」


 『今のお前は、スルトの庇護下であり、その魂もスルトの救いがあったからこそ生き長らえた。謂わば、人であって人に在らず』


 「...人ではない...って...どう言う意味だ?」


 心は不安にかられながらも、聞かずにはいられなかった。


 『そのままの意味だ。お前の器は既に無く、消える運命だった。それを、スルトが自分のマナを分け与えた事で、存在できているのだ。人間で言えば、生命の源である心臓を分け与えた様なものだ。だから、スルトの一部と言ってもいい』


 「...待て...でも、黑は...取り戻す方法はあるって...」


 『...心...それは、スルトの一部となったお前は、我と波長が合い、我を器にできると言う意味だったのだ。我が器になれば、それはお前の身体となって、生き続ける事が出来る』


 「...それって...なら...ゲミュートは...どうなる」


 『我は、お前と融合し、お前の中で生き続ける』


 「それって、魂が二つ存在するって事か?」


 『いいや、お前に融合し、お前はお前として生きていく。ただ、我は死んだのでは無く、お前の一部として一緒に生き続けるだけの事』


 「待て待て待て!違うだろ、それはもう...俺なのか..いや...そうじゃない...ゲミュートの意思はどうなる!」


 『我の意思など、どうでも良い。我はこうなる事を知っていてお前に、この器をやりたいと思ったのだ...欲を言えば、我の愛し子を側でずっと支えてほしい...願うとすれば、それだけだ...時間もそうない、受け入れろ、心!』


 「......分かった...ゲミュート分まで、俺は生きて、黑を支えるよ」


 『いい子だ』


 ゲミュートがそう言った瞬間、目の前が眩い光で輝いて心は耐えられずに目を閉じる。ふっと身が軽くなった気がして、ドンっと強い衝撃を受けた瞬間目を開ければ、目の前は燃え盛るキュアノスの地が見えた。


 (...ゲミュート...)


 語りかけても、返事はない。


 心は自分の手を、背を見て、自身がゲミュートの身体になったのだろうと実感した。


 ただ、一つ違うとすれば、あの穢れのない真っ白だった毛は、自分の色に染まったかの様に、漆黒色になっていた。

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