職人への第1歩
しばらくは12:00投稿となります。
ある程度ストックがたまったら、日に2回の更新にしたいと思っています。
完全書下ろしで他のサイトには一切掲載しておりません。
ゆる~く楽しんでみていただければ幸いです。
ウルトさん、スーキさん、ツツギさん、ドルツさんへの挨拶周りが終わって
シリウス叔父さんと家に戻ってくるとミハル叔母さんが早速お昼ご飯を出してくれた。
「ねぇ~カイル~午後から薪作り手伝ってよ~~」
シリルは午前中の薪割りが終わり、まとめられていない薪が庭に散乱している。
単純にめんどくさいのだろう。
「シリルごめんね。早速作りたくてウズウズしているから午後は色々試そうと思ってるんだ。」
「ふ~~~ん」
明らかにめんどくさそうだ。
早々とお昼ご飯を食べ終わった僕は庭へと向かう。
うん。薪が邪魔で地面がみえない。
しょうがないのでとりあえず散乱している薪だけでも薪棚へ運ぼう。
とりあえず、午前中の薪を薪棚に運んでいるとシリルがめんどくさそうに庭に出てきた。
多分ミハル叔母さんに小言話言われたのだろう。
いつもならお昼寝するのに、今日は庭に出てきていた。
せっせと薪棚に薪を運ぶ僕を見かけると少し笑顔になって。
「カイルありがとね。」
「とりあえずもう手伝えないからね。きちんとしてよシリル。」
「は~~~い。」
あっ絶対分かってないやつだ。
そのまま回り右して家に戻っていった。
僕は片付けてスペースの空いた場所に座り込んで地面に手を付ける。
なんとなくこうした方がいいと思ったからだ。
手のひらから地面の温かさを感じる。
頭の中にある酒井田さんの知識と、手のひらから感じる土の感覚を洗礼がより明確に伝えてくれる。
(これは粒度がまだ荒いのか。成分も全然焼き物になりそうじゃないか)
庭の土はまぁ当然、焼き物に適した土ではない。
(よしやってみよう!『変性』!)
頭の中で『陶芸』の洗礼が動き始める。
酒井田さんの知識は明確に『分子構成』まで僕に伝えてくれる。
ケイ素がどのくらいの割合で、粒度がどのくらいでなど、
具体的に『適した』状態が作り上げられていく。
(あっダメだこれ。)
ものの1分もしないうちに僕は意識を失った。
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気が付くと夕方だった。
多分、数時間。僕は外で気を失っていたようだ。
シリルの時もそうだったが、洗礼を受けたからといってすぐに使いこなせるわけじゃない。
最初の頃は少し使っただけで気を失ってしまう。
今のシリルは洗礼から1年たって、午前中くらいなら使っても大丈夫なようになった。
そういった意味では『薪割り』はトレーニングとお仕事を兼ねているといえる。
丁度手のひら2個分。
右手と左手が触れていた土の色が明らかに回りとは違う。
今の僕は一握りの土を変性するだけの能力しかないという事だ。
それからはひたすら『陶芸』を使いまくった。
午前中に一度気を失うまで使ってから、午後にもう一度。
毎日少しづつ『粘土』を貯めていった。
3か月たつ頃には薪棚の横に粘土の山ができていた。
「カイル。あんまり無理はするなよ。母さんが心配してたぞ。」
夕食前、居間でくつろぐシリウスさんが気にかけてくれる。
「はい。気を付けます。」
最近は変性済みの粘土を使って変形にもチャレンジしている。
本当に自分が思った通りに粘土が動くので楽しくて仕方ない。
回りから見たら泥遊びしている子供にしか見えないだろう。
洗礼から半年経つ頃にやっと1個の素焼きのコップを作ることができた。
う~~ん。カップではなく湯飲みって感じ。
まだまだ製品にする工程の半分ほどしか進んでいない。
そこでふと気づいた。
できた湯飲みを落としてみる。
(ガシャーン!)
あっ割れた。
まだまだ脆いのである。
知識の中には『陶器=焼き物=セラミック』といった言葉があって
土の成分によって硬さや脆さ、電気に対する特性なんかも変わるようだ。
電気はないけど。雷はあるか。
それからまた粘土づくりが始まった。
さらに1か月経つ頃には以前作ったものとは明らかに違う湯飲みが手の中にあった。
(かっ軽い!!)
最初の印象はとにかく軽さだった。
以前と同じように落としてみる。
(カーーーン!コロコロコロ)
少し高い音がしたかと思うと割れずに地面を転がった。
それからは釉薬の開発に移っていった。
素焼きの壺をいくつか作成し、変性済みの釉薬や粘土を保管できるようにした。
庭には薪棚と粗末な壺が並んでいる。
洗礼を受けて大体10か月がたつ頃、初めて納得のいくカップを1つ作ることができた。
とはいっても1日1個作るのが限界なんだけど。
「父さん!やっと1個出来上がったよ!」
初めてできたカップをシリウス叔父さんに手渡すとじっくりと眺めた後、
優しい笑顔で頭をなでてくれた。
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