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挨拶回り

しばらくは不定期投稿となります。


ある程度ストックがたまったら、日に2回の更新にしたいと思っています。

完全書下ろしで他のサイトには一切掲載しておりません。


ゆる~く楽しんでみていただければ幸いです。

「あらカイル君も生産系の洗礼だったの?」

シーンさんは普段物静かな印象で、いかにもモテそうな雰囲気を醸し出している。

ウルトさんの猛アタックの末、結婚を決めたそうだが、

今は、もうすぐ生まれる子供のために一生懸命貯金をしているそうだ。


「はい。それでウルトさんにものづくりを教えていただいてました。」

「ちょっと待っててね。」

シーンさんは奥の土間へと行くと、木製の棚から何かを取り出してきた。


「これは以前この村にいたダリルさんが作ったものだけど、何かの参考になるかしら。」

その手には木箱にはいった2つのコップと2枚のお皿が入っていた。


「これは、陶器ですか?」

「そう。これが陶器よ。いつか私が結婚した時に仲良く使いなさいって作ってくれたの。」


一見、無骨に見える陶器の食器だが、いわゆる素焼きの食器なのだけど少し光沢があり、

何かしらの釉薬が使われているようだ。色は優しい土色でコップには取っ手がついている。

こうゆう形のものはコップではなくカップというらしい。


「俺が作るような木製のコップはある程度厚みもあるから熱い飲み物を入れても問題ないが、

 この陶器のコップの場合、熱いものをいれると持てなくなるらしい。

 だから取っ手を付けたんだと聞いたことがあるな。」

ダリルさんが亡くなったのは10年以上前らしいが、陶器は壊れやすいという事もあって

実物の陶器を見たのはこれが初めてだった。


シーンさん曰く、「特別な日にはこれでウルトとお茶を飲むのよ。」

とはにかんだ姿が非常に印象的だった。


僕もこんな風に人を笑顔にできる食器なんかが作れたらいいなと思った。


それから少しウルトさんとシーンさんの惚気話を聞いて、スーキさんの家に挨拶へ行こうと

ウルトさんの家を出た。多分、二人目の子供ができるのもそんなに遠くないと思う。


昼間の村には、洗濯物を洗う奥様達と子供以外はほとんど畑に行ってしまうので人は少ない。

こんな天気がいい日に村を散策するのは何となく楽しい。


しばらく歩くとスーキさんの家に着いた。


「こんにちは~~」

「おう、カイルか。どした?」

「あら、カイル君じゃない。こんにちは。」

皮を取り扱うスーキさんの家は他の家と違い独特の皮のにおいがする。

丁度、ツツギさんがマタさんが狩った獲物の皮を届けに来ていたようだ。

二人に洗礼を受けたことのご挨拶をすると凄く喜んでもらえた。


「よし、ちょっと見てろよ。」

スーキさんが皮の加工を見せてくれた。


実は単純な皮袋なんかは手縫いでも作れるのだけど、スーキさんにしかできないことがある。

それは水袋や靴など、一部穴をあけられない場合などに便利な『結合』という技術。


スーキさん曰く「変形の応用みたいな感じだね。皮の繊維一本一本を編み込む感じかな。」

つまり皮と皮を縫い目なく切れ目なく物理的につなげてしまうのだ。


例えばシリウス叔父さんお気に入りの靴は靴底が狼の皮を5枚重ねたもので横が柔らかな兎皮。

革ひもを結ぶ上側は丈夫な熊皮でできているらしい。


これらを縫い合わせるのではなくつなげてしまうのが、

スーキさんが『皮工』と呼ばれるところでもある。


靴底などはこの技術が無いとペラペラになってしまうらしい。


ちなみに水袋などは飲み口と蓋はツツギさんが木で作成して、

袋の部分はスーキさんが作る。いわゆる合作の商品であることなどを教えてくれた。

いつか僕がいろいろな陶器を作れるようになったら

『是非一緒にものづくりをしよう。』と温かい言葉もいただいた。


みんな洗礼の内容よりもそれを使った創意工夫を日々行っていることに本当に驚いた。

僕も早く村のみんなの役に立ちたいという気持ちがどんどん高まっていく。


商談中だったこともあり、挨拶も早々にスーキさんの家を出た。

ものづくりしたくてうずうずしているが、あとはドルツさんへの挨拶だけなので、

早く挨拶に向かおうとつい小走りになってしまった。


スーキさんの家からドルツさんの家に向かう途中。

共同トイレの前でシリウス叔父さんとドルツさんを見かけた。

何やらうんうん唸りながらも大人が二人で話しているところに割り込むには多少勇気がいる。

なんて挨拶しようかを考えている間にシリウス叔父さんが僕に気づいててを振ってくれた。


「カイル~こっちこっち!」

「おう!カイルじゃねぇか!聞いたぜ『陶芸』とはまた懐かしい洗礼だな~」

「ドルツおじさんこんにちは。はい。今からものづくりしたくてウズウズしてます。」

「もう、他のみんなには挨拶してきたのか?」

「はい。お父さんが打合せといっていたんで邪魔にならないように最後に伺いました。」


ドルツさんもおもむろにポケットから鉱石を取り出すと簡単な説明をしながら

火箸を目の前で作ってくれた。

「まぁこんなもんよ。」

ドルツさんの手に握られた火箸はつやつやと光沢があって凄く丈夫そうだ。

『鍛冶』の洗礼では他の洗礼とは違って『精錬』という工程があるらしく、

手の上にある鉱石がみるみる小さくなっていくのはなんだか不思議な感じだった。





※ すっご~く大切なお知らせ ※


「面白いかもしれない。だぶん」

「続きが少し気になる。たぶん」

「応援してもいいかも。たぶん」


と思ったら下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援していただけると嬉しいです。


ブックマークもいただけたら作者のやる気につながります。


どうぞよろしくお願いいたします。

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