プロローグ
タイトルが無題な理由?思いつかなかったからですねはい。とりあえず最初は失踪しないと思うのでよろしくお願いします。
俺は大の車好きだ。だが車オタクではなく、特定の車だけを好いてる特殊な車好きだ。ドライブも好きではあるが、あまり行わない。
その上引きこもりだ。まぁ俺の場合は少し特殊でどう言えば良いのかは分からないが、まぁ基本的に家の敷地から出ないのは確かだったりする。
故に30になっても、引きこもって仲間らと一緒にレースをする。親からしたらとんだドラ息子。はたから見たら、親が少し金持ちだから自由に行動している親の七光りガキ程度だろう。
だが正直、そんな事はどうでも良かったりする。俺は好きなように仲間と居られるなら、理解しない人に何と思われても気にしないタイプだ。
「ケーちゃん。頼んでおいたことしてくれた?」
倉庫で買い出しをする部品をチェックしていると、ドアを開けて青年が入ってくる。俺は立ち上がると、青い車を探して前に座る。
「あーっと、コレだな?アヴェンタのブルー。塗装も新しくやっといた。」
「おう、それで合ってる。ちゃんと整備してくれて助かるよ。」
「お前の車、アサヒ特有の改造してあるから、チューニングするだけでも一苦労だ。今回は結構つくぞ。」
アサヒというのは青年の名前だ。正確には呼び名で、本名は知らない。
「分かった。後で金は振り込んどく。それよりも試していいか?」
「コールドスタートになるが良いのか?」
アサヒは「問題ないよ」と言って車に乗る。かなりの轟音がして、アフターファイヤーが出る。色は頼まれた通り、青くしてあるのでかっこよくも見える。
「お、ちゃんと出てるな。だけどこれじゃあ公道は走れないぞ?」
「それで構わないよ。どうせサーキットやイベントでしか使わない車だし、帰りも379に乗せて帰るよ。」
そいやアサヒの愛車はピータービ〇ド製の379がお気に入りだった。理由はとある映画の影響だが、いいトラックで俺も結構好きだ。
その上、俺とアサヒやその他で改造を施して居るので中身はかなりのモンスタートラックとなっている。
「おーい、ケーちゃんは運転しないの?」
「今、相棒が使えないんだよ。」
俺の相棒はカマロだ。米国を代表する自動車メーカーの車で、379と同じ映画に出た事で注目を浴びている俺のお気に入りだ。
塗装は白にしていたので、傷が目立ってしまい今は塗り直しているので動かせない。
「久しぶりにお前とレース出来ると思ったんだけどな……」
「悪いな。カマロの塗装が終わったらやり合おうな。」
アヴェンタが敷地内を走るのを見届けると、パソコンを起動する。そして敷地内にある監視カメラからアヴェンタの調子を確認する。
「悪くない。だが前よりも少しパワーが下がったかもな。」
マイクを取り出すと、アヴェンタに通話を繋げる。
「あー、聞こえるか?」
『どうしたよ?』
「車の調子はどうだ?」
『最悪だ。前よりもパワーが全然ない。チューニングミスったんじゃないのか?』
確かに前の馬力は2000を超えていた。だが今のアヴェンタは1500程度。普通の車を使う人ならどっちも凄いと思うが、アサヒは敏感だから文句を言うのだろう。
だがこれでも俺は大学の頃からこれをやってる。チューニングをミスってもアイツに最悪と言われるほどのミスはしない。
「そうかそうか!その言葉今から変えさせてやる。次の直線で加速してみろ。」
『はぁ?今は250ちょいだぞ?こっからはあがっても300程度だろ?』
アイツに今まで渡していたアヴェンタはあまりトルクにあまり手を回してなかった。だけど、今回のチューニングは馬力を抑えてトルクに力を回した。これにより加速がしやすくなり、速度も段違いに跳ね上がる。
『まぁいい。ここで加速だな…………はぁ!?』
アサヒは驚いたような声を出す。俺はそれを聞いてついニヤけてしまう。
「どうだ?最新エンジンを積み込んで最高速度を350強まで底上げした。DOHCをかなり複雑にした事で、超高性能にしてみた。」
『前言撤回だよ……本当にお前は最高のメカニックだ。』
「おう!ご期待に添えたなら何よりだ!……ちょっと待て。こっちに少しずつ戻ってきてくれ。俺の庭に誰かがいる。」
パソコンの大量にある監視カメラの1つが鮮明すぎる事に違和感を持ち、調べたところジャックされていた。かなりマズいと思い、調べると侵入者は俺の庭に侵入するどころか車庫に入っていたことが分かった。
「アサヒ、そのアヴェンタだけは守れよ。次のレースは負けられないからな。」
『分かった。なら俺はアヴェンタを隠し倉庫に入れてからそっちに向かう。』
隠し倉庫はトンネルに入り、壁に向かって直進すると中に入れる仕組みだ。立体映像とスイッチ式のスライド壁で分からなくしているから侵入者も気付かないはず。
「よし……」
催涙スプレーと六尺棒を持つと、パソコンのネット接続を切りシャットダウンする。これで数時間は再起動を不可になる。これで情報を抜き取られることはまず無い。
一度倉庫から出る。
倉庫には今度レースで使うアヴェンタと塗装をしていたカマロだけなので問題は無い。カマロに関しては、俺の指紋と顔認証でロックを解除しないと使えないので放置安定だ。もし傷付けたら殴るだけだしな。
車庫に向かっていき、窓から中を覗こうとしているとアサヒもちょうど来たようだ。
「中に侵入者が?」
「……ああ、外に出る道は2つだが裏口のドアは開いてなかった。つまりシャッターを開けて入ったんだと思う。」
「中には何が?」
「仕事で頼まれた車、ヴェノムとランエボ。それに痛車頼まれてたシビック。その他にはレース用のヴェイロンにスピードテール。」
「シビックは兎も角として、それ以外がかなりまずいな。」
シビックは知り合いからの頼まれだから何とか言い繕えるが、それ以外の4台は取り繕うとは厳しい。
ランエボはかなりの化け物改造をしたあとであり、かなり高くなっている。
ヴェノムやヴェイロンは大手からの依頼だ。その上ヴェイロンは他で用意することがほぼ不可能に近い。スピードテールは数日後にお披露目をするらしく、持っていけないとなると信用がなくなってしまう。
ほぼ確実に傷付けないで守らなくてはいけない。だが鍵のロックをかけていないので、偽造キーを使われたら動かせるかもしれない。
「いくぞ……」
俺はアサヒの膝を叩くと、シャッターを開けて中に入る。
中は電気がついており、車もズラっと並んでいる。数えたが一台も盗まれてないし傷もないようだ。
「誰だ!ここに侵入者したやつは!」
「誰も居ないぞ?どういうことだ?」
車に触れてチェックをするがなくなっている部品もなければ、目立った動きもない。
「……バグなんじゃないか?」
「かもしれない。一応車は二重シャッターをしておこう。」
車は奥の方にあり、真ん中辺りにシャッターを下げられるので安心して下げる。それと同時に、入ってきた入口のシャッターも落ちていく。
「おい!これじゃ出れないぞ!」
アサヒに言われて、入口のシャッターを開けようとするが外からロックされていて出れない。
「……嵌められたかもしれない。」
「だがここのシャッターは他の仲間が来たら空くぞ?……ただのいたずらにしちゃ下手に手が込んでるしな。」
悩みながらシャッターに触れていると、何か違和感を感じる。
いつもの車庫とは違う何かがある気がして、見渡してみる。
「……あっ!避けろ!」
「ど、どうした!」
俺はアサヒに飛びかかると押し倒す。そして地面につくと同時に後ろから爆風がなって体が焼けるように熱くなる。
慌てて体を見るが、自分の体がドロッと溶けていて、アサヒの体も溶けてしまっている。
「や、やられてしまった……」
俺は仕事で酸化鉄は使わない。そしてアルミニウムも使うが、加工済みのみだ。それなのに置いてある。違和感しかない。
直ぐに逃げるために行動に移したが、1歩遅くやられてしまった。かなりの至近距離なので、もう動けない。こうやって無駄なことを考えるので精一杯だ。
そうして俺は30歳で、大切なレースの3日前に息を引き取ってしまった。
ーーー
それから数時がたった。死んだと思っていたが、その通りで何も無い真っ白な空間をずっとゆらゆらと浮遊し続けていた。
アサヒと一緒ならもっと楽しかったのにと思わずには居られなく、のんびりとぼっちで寂しく色んな事を考えていた。
そういえばレース用の車は用意していたが、実際にはどうなったのだろうか?シャッターを下ろしておいたおかげで車は守られたと思うが、ちゃんと問題なかったのかは気になる。
そんな事を考えているうちに、何か赤い球体が目の前にあった。暇だった上死んだ身、どうでもいいやと好奇心のまま球体に触れることにした。そしてそのまま意識が途絶えた。