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幸を呼ぶ猫  作者: 梅桃
7/20

7・よく考えたら、恥ずかしい。

 魔道具を取り上げられ、数分もしない内に息苦しくなってくる。

 これがないと、気だるくもなるし息苦しさが増して苦しくなってくる。

 それで今すぐ死ぬということはないのだけど、これを放置しておくと肥大化した体も限界を迎え息絶えてしまう。


 問題にならない様に、ここ来る前に出来るだけ放出しておいたのだけど、気疲れする場ではやっぱり魔力も不調を訴えるのが早かった。


 そろそろこの魔道具の効果の恩恵に預かれる限界にも来ていたのは事実だけど、家族はきっと早くそうなってくれればいいのにとすら思っているかもしれなくて、新しい物をと強請る事が憚られた。


「もう少し耐えろ。現時点での出来るだけの最大差を知りたい」


 差というのは、器と魔力量がどれだけの量差があるか。限界ギリギリまで待ってそれを測るらしい。

 一時間程もすれば魔力が体内に籠り始めた。


「これはかなり酷いですね。魔道具が無ければすぐにでも……」


 アーツ様が仰る様に、これを放っておけば寝て起きたら体から魂が抜けているだろう事は容易に想像出来る。


「よし。悪かったな。返す。魔力を放出出来るか?」


 この状態で集中してあの繊細な放出が出来るかどうか。


「アーツ」

「はい。これは流石に自力では辛いでしょうね。アミィ、少し腹部分に触れますよ」


 返事をするのも億劫なほど意識が朦朧としているのを察したシーゼル様の言葉に、アーツ様が頷き手がおへそ辺りに置き、器から溢れて籠った魔力を引き出していく。

 少しずつゆっくりと。


 自分では出来ても、他人の魔力をこんな風に繊細に扱える人は少ない。

 流石王族に仕える人って感じ。

 だけど、それをするにも制限がある。


 人の魔力は基本誰かに影響されるものではない。

 それをするにはまず、自分の魔力の波長を相手のそれに限りなく近づけて合わせる。

 そして自分の魔力を媒体にして相手のを引き寄せ、引っ張りだし放出する。

 個人差にも寄るけど、放出量は自分の魔力量と比例されるから自分の物が無くなればそれで終了になる。


「少し、楽になりました」


 放出を手伝って貰いながら三十分程経った頃、すっと体が楽になったのを感じて声を掛けた。

 同時に、辛いだけだった状態の思考がクリアになるにつれ、別の事を思い始めて物凄く居たたまれなくなってしまった。


 だって……。

 よく考えたら、締まりも何もないふよふよのお腹に、アーツ様の手が……異性の手が置かれていたわけで……。


「魔力の蓄積速度が思いの外早いのですね。本当にもう大丈夫ですか? 少し顔が赤いようですが。魔力不適合症特有の発熱でも……」

「い、いえ! 大丈夫です! あ、ああ、あの、もう自分で出来ますから!」


 少しアーツ様の手が離れた隙を見て、慌てて起き上がった。


「っく」

「シーゼル? 何かおかしいことでも?」

「いや。なんでもない。ちゃんと女だなと思っただけだ」


 シーゼル様にそんな風に言われてさらに赤くなってしまった。


「?」


 どういう意味だ? と言わんばかりの顔で小首を傾げるアーツ様。

 ぜひ、そのまま気付かないでいて欲しい。


「思っていたより蓄積速度も早かったのは俺も気付いた。そこを改変するのにもう少しかかる。アーツ、簡単な物でいい。料理を運んでくれ」

「はい。お二人だけにするわけにはいきませんので、他の者に頼みましょう」


 腐っても私は女だと認識してくれているみたいなその言葉に少しばかり嬉しくなった。


 アーツ様が伝言の為に席を外している間も、シーゼル様は魔道具に施された術式に、真剣にそして慎重に手を加えていく作業を続けている。


 シーゼル様の得意分野は魔道具研究とその開発。

 シーゼル様が手掛けたそれは市井にも行きわたり、その功績は国民みんなが知る所でもある。


 室内を見渡せば、様々な資料や図面、術式、そして試作された魔道具がそこかしこにあって、何の断りもなく入った所を見るに、ここはシーゼル様が専用で使っている部屋なのだというのが容易に分かった。

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