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幸を呼ぶ猫  作者: 梅桃
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1・祝賀会

 今生の私は太ましい。

 二の腕も太もももお腹もふるふるしている。


 痩せたいと思って食事制限とか運動とかしてみたけど、幾ら足掻いても一ミリも痩せなかった。


 理由ならちゃんとある。


 魔力不適合症。


 もともとの器に対して魔力が多すぎたり少な過ぎたり、器と魔力の性質が互いに噛み合っていない等、器や魔力に異常がある人を一まとめにして『魔力不適合症』と呼ぶ。


 私の場合は、その魔力が器に対して多い上に器事態も平均よりも小さめで更には性質が噛み合っていない。

 そして溢れた魔力が細胞に取り込まれ、過食症肥満状態になっているという訳なんだけど……。

 頑張って消費しても寝ている間に魔力量は元に戻るから、その間に過剰な魔力が細胞に取り込まれていく。


 毎日空っぽになるまで一日数回放出するんだけど、器が小さいし人より回復速度も速くてすぐに溜まって溢れてしまう。

 これをしなければ更なる太ましい体になっている事だろう。

 魔力を強制的に放出させる魔道具もあるんだけど、それを使ってもこの状態なんだから。


 本気で泣きたい。


 好きでこんな体系になったわけじゃないのに。


 太ましい体のせいで遠くからでも聞こえてくる忍び笑いや、醜いものを見たかの様な遠慮のない蔑みの視線、そして移されたくないから・醜いから・同じ空気を吸いたくないからと近付いて来ない。


 だから、本当に参加しないといけない社交以外で、外に出ることが無くなった。


 でも……。


 今日はその社交に強制で参加せざるを得なくて、会場の隅に身を置いた。

 王都にいる貴族は全員参加。

 地方にいる貴族は当主、或いは連なる者一人のみでもいい。伴侶や相手がいれば尚良し。

 そんな感じ。


 想像に難くない程、むしろ分かっていたけど。

 私の周りには誰もいなかった。


 父や母、二人の兄でさえ。


 体裁を整えるためだけに婚約者のいない次兄が、会場入りする時だけエスコートするのもいつもの事。


 その次兄すら婚約が決まりそうで、そうなると私のエスコートはいなくなる。

 そして家のどこにも身の置き場がない私は、どこか田舎の別邸に引っ越す事になるだろう。


「ガルランド国王陛下・エティマ王妃殿下、並びに、オルスカイ王太子殿下、シーゼル第二王子殿下、ミレイン王女殿下ご入場!」


 つらつらとそんな事を思っていると、カーン、カーン、カーンと王族の入場を知らせる鐘の合図と号令の後、ファンファーレが会場内に華々しく鳴り響いた。


 今日は、国王陛下の誕生日の祝賀会。


 だから、成人した貴族は強制参加というわけ。


 大勢の拍手の中、王族方が堂々たる姿で壇上を優雅に歩く。

 それぞれが所定の席に着き、陛下が片手を挙げ応えれば、更なる拍手が沸き起こり、その手をすっと卸せば、あっという間に静かになる。


 陛下の御言葉の後、国王夫妻のファーストダンス、そして王太子殿下と婚約者、第二王子殿下と王女殿下と続き、陛下に奉納するための曲、歌、踊り、趣向を凝らした料理等がお披露目される。


 その後は各々に社交を始める。


 そして陛下の元には祝いの言葉を述べる各家の代表者や友人知人などが列をなし、歓談をしながら時を過ごす。


 いつも思うけど、王族の誕生日って彼等にとっては仕事みたいなもので面倒だろうな。


 私はいつもの様に壁の花になりながら一定の時を過ごし、そっと会場から立ち去った。


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