エピローグ
春、それは新たな出会いの季節。
新しい生活、新しい制服、新しい友達。
春には新しいが溢れている。
けれど、そこには何も変わらないこともある。
例えば、家族であり、履き慣れた靴であり、子供の頃から好きな歌であり。
そして、生まれた時から決められた、恋の相手であり。
「おい、聞いてんのか泉。」
「へっ?あ、ごめん!」
高校へと向かう通学路。今日が入学式ということもあり、皆どこか緊張した面持ちで歩いている。道の両脇には大きな桜が立ち並んでいて、如何にもこれが春だと桜が主張しているようだった。
「何ぼーっとしてたんだ?」
「いやぁ、ちょっとね...」
そう言って隣で歩く友人に視線を向ける。
整った顔立ち、スラッとした身体、誰もが認める美少年。そんな彼と並ぶ僕はどこにでもいる『平凡』という言葉が似合う何の取り柄もない高校生。
「あぁ、僕も沢木みたいにかっこよかったらなぁ...」
ついついそんな事を口にしてしまうくらい、中学からの付き合いのこの友人は、春の日差しを受け、輝いているように見えた。
「お前、それ中学の時からずっと言ってるけど、別に顔がよかろうが結婚する相手はすでに決まってるんだし、気にする必要もないだろ。」
「まぁ、そう言われちゃったらおしまいだけどさ...」
そう。いくら沢木裕也の様にかっこよくて女子に人のある人間でも、今の時代にそれがステータスになることはない。
なぜなら、僕たちが生まれる数年前に、日本政府から発表された『少子高齢化対策政策』が存在するからだ。生まれた時点で同年代の異性から婚約者が選ばれ、高校を卒業をすると同時に結婚する事を義務付けされるこのシステムは、10年以上経った今でも継続されている。
もちろん当時は様々な議論がなされ、反対する意見もあった様だが、今では世間一般の認知になっている。
だから誰も恋をしようとしない。婚約者が存在するのに、恋愛相手を作る必要がないからだ。
「それで、お前が悩んでたのは婚約者のことか?」
「うん、もうすぐ誕生日だから...」
16歳の誕生日と同時に政府から婚約者が通達される。『平凡』泉圭太にでも、当たり前のように16歳になれば通達がやってくる。相手がどんな人か気になるが、なんでも、この政策のために政府が作成した特注コンピューターで演算をし、相性が最も高い相手同士が選ばれるらしい。
聞いたところによると、このコンピューターを作るのに国家予算の3/4を使ったらしいが...今はそんなことはどうでもいい。
「そうか、お前誕生日早かったもんな。」
「そうなんだよ...今日高校に入学するのに、あっという間に婚約者が決まるんだよ!?」
「決まるのは生まれた時にだけどな。いいじゃないか、お前みたいな『THE平凡』の人間でも、結婚させてもらえるだから。」
「ねぇ、ひどくない!?幾ら何でも酷くない!?」
「冗談だよ。ほら、行くぞ。」
一頻り笑って、沢木は校門へと歩むスピードを速めた。僕も慌てて彼を追いかけて校門へと向かって行った。
校門を抜けると、クラス分けが発表されていて、辺りから歓喜の声や悲しむ声がチラホラ聞こえてくる。僕と沢木は同じクラスで、僕は少しホッとして息を吐いた。そして教室へ向かって歩き出す。
これからの高校生活への期待を込めた、大きな一歩だった。
そして、僕は運命と出会う。
しかしそれは、決して許された運命では無いと知らずに。
人生初執筆です。
出来る範囲内で書いていきたいと思っています。
よろしくお願いします。