日常
煉獄庭園のお花の御手入れはお忘れなく。
「はよーっす!」
そう言葉を放った俺は教室のドアを潜った。
「「「おはよー!」」」
教室で騒ぎ立てていた者、朝から女子トークで盛り上がっていた女子グループ、勉学に励む者、全てがこの俺に注目し、そして皆俺を慕っている。
自分で言うのもなんだが、俺が今までに築き上げ、貯めあげてきた信頼の最高頂点に俺はいる。
「なぁ聞いたかそらぁ」
よいせっと机に乗っかる男【坂浦 翔】は中学からの同級生であり、頼れる友人である。
「聞いたって、なにが?」
ははんっと鼻を鳴らし、ネタは上がってると言わんばかりのドヤ顔。
「おめーも隅に置けねーなっ!彼女がいたんなら言ってくれれば良かったんに!!」
にやにや、にやにや、にやにや、にやにや。
「彼女…?何の話だ?」
「ばぁーか、今や女子の注目の的のお前に彼女が出来てるって噂があるんだよ!」
「は、はぁぁぁぁあああ??????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「んで、ほんとの所は?」
にやにや、にやにや、にやにや、にやにや。
全く鬱陶しい。
「ほんとだって!それに、ほら、俺バイトとかで結構忙しいし、作る暇も遊ぶ暇もねーって!」
「ちぇっ、じゃあこの噂もデマかあ」
はぁ、全く勘弁してほしい。こんな小賢しいデマを流したりと、幼い頃から厄介な事にだけは縁があるのだ。
「そーいや、明後日ってコハルちゃんの誕生日じゃなかったっけ?」
コハル____【雨宮 コハル】は俺の義妹であり、2つ年下の女の子だ。
「あぁ、うん。今年はなに作ってやろうかな?」
「それ俺に聞くなよ」
と半笑いの翔を横目に、明後日のメニューを考える。
「にしてもまぁ、お前ら二人揃って有能すぎな?コハルちゃんなんかもー胸はでかいし、胸はでかいし、胸はでかいし!」
「ん?殺すよ?」
「冗談、冗談!ははははは」
そう軽く笑い飛ばす翔。むっかぁ……。
こいつ…普段コハルのどこ見てんだよ、マジで。。
軽く引いちゃったぞ……。今後こいつとコハル会わすの極力避けよう…。
朝から日常的な会話を楽しみ、いつもの担任の笑えないジョークからのホームルームが始まった。
これが俺のなんら変わりない、当たり前の日常、だったのだ。