お手軽チーズリゾット
「あー………お昼ご飯作らなきゃ」
時計の針が12時を少し過ぎた頃、アンドレアスがのっそり起きて目を擦る。
今日はアンドレアスは休日で柚月だけ出勤だ。つまり昼飯は自分で確保しなければならない。
取り敢えず髪の毛を一つにまとめ、コンタクトを嵌めて冷蔵庫を物色する。
「お夕飯何か言ってた?」
「特には」
「後で柚月に使ったものメールすればいいか…あ、ピザ用チーズ残ってる」
今日の献立を思い付くともう一度冷蔵庫と冷凍庫を物色し、確認すると使いかけの玉ねぎとコンソメキューブ一欠片、冷凍ご飯を取り出す。
「チーズリゾット作ろう」
手始めに使いかけの玉ねぎを粗めのみじん切りにして、一口大にしたソーセージと共に小鍋で炒める。玉ねぎに火が通ればソーセージを一旦別の皿に避難させ、お椀で目分量計った水とコンソメを投入する。その間に冷凍ご飯をレンジで温め、牛乳をコップ一杯用意する。そして思い出したようにコンソメスープに塩コショウして蓋を被せた。
「ブラッキー、使いかけの玉ねぎとソーセージ二本とピザチーズ使ったって柚月にメールしといて。あとコンソメ一つ」
「わかった」
しばらく煮続けた後、スプーンでそっと玉ねぎを掬い味見する。しんなりと柔らかくなったのを確認してご飯と避難させていたソーセージを投入し、ご飯がスープに浸るようにほぐしておく。ご飯がスープを吸って少しふっくらすれば今度は牛乳を投入。表面がふつふつとすれば急いで冷蔵庫からチーズを取り出す。そしてそれをこれでもか!というくらいぶちまけた。残ったチーズに封をして冷蔵庫に戻し、焦げないようにかき混ぜる。
「テレレッテテテテン!テレレッテテテテン!テテテテテテテテテ、テッ、テン」
もうすぐ出来上がることにご機嫌になったのか某3分クッキングの曲を口ずさみながらチーズがとろけたのを確認してスプーンで掬う。トロリとチーズが伸びた。よく吹き冷まして口に運び、小さく頷く。そして適当な皿を取り出してそれに鍋に入ってるリゾットの3分の2ほど盛った。作るのにそこそこ時間が掛かったせいで、空腹を通り越してしまったのだ。残ったリゾットは別の皿に入れてラップを被せ、鍋に水を入れて浸しておく。
食べる分のチーズリゾットに彩り目的でパセリを振り掛けて完成だ。
「いただきます」
スプーンで掬えばわかってはいるがチーズがみょんと伸びる。そっと持ち上げて行けば腕を伸ばしきってもチーズは細く糸を引いていて、ちょっと楽しい。
そして冷めぬうちに、リゾットを口に入れる。息を吹き掛けなかったせいで思った以上に熱くて口を押さえて悶絶した。あつあつの蕩けたチーズは凶器だと思い出した。
「お水お水…」
コップに水を注ぎ口の中を冷やす。幸い火傷は免れたようだ。席に戻り、今度は用心深く息を吹いて冷まし、口に運ぶ。チーズだ。とてもチーズの味がする。熱を通され甘くなった玉ねぎも、ウインナーも、コンソメを吸ったご飯も、全部チーズを引き立てている。チーズの大勝利だ。
「最高」
実は実家にいた時も作ったことがあったのだが、その時はトーストに乗せるような四角のチーズ1枚でチーズリゾットというよりミルクリゾット、たまにチーズみたいな事になってしまっていたのだ。勿論美味しかったのだが、チーズリゾットはチーズがメインであるべきだ。アンドレアスはリベンジに成功したのだった。
「あー、おなかいっぱい」
別の皿に取り分けたリゾットを冷蔵庫にしまい、ベッドに潜り込む。少し大きくしたブラッキーを抱き枕にして目を瞑った。
「三時半くらいに起こしてね…」
満腹になったアンドレアスは、お昼寝を始めたのであった。
帰宅した柚月が冷蔵庫にあったリゾットを食べて普通に美味しくて微妙な顔をしたのは、また別の話。




