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照り焼きチキン


「あれ?」


 合鍵を使って柚月の家に帰ったアンドレアスは、電気の付いていない部屋に首をかしげる。いつもなら車で通勤している柚月の方が、アンドレアスより先に帰っている筈なのに。


「残業かな」

「レイ…………アークライトは今日飲みに誘われていると言っていただろう」


 呆れたブラッキーが見上げれば、アンドレアスの顔にはわかりやすく「しまった」と書かれている。


「えーお夕飯どうしよ……冷蔵庫何があったっけ」


 幸い、柚月は自分で料理するため冷蔵庫には十分の材料はあった。夕飯を作るに何の問題は無い。…アンドレアスが気乗りしないのを除けば。


「…お腹へった」


 冷凍庫にあるご飯を手に取り、ラップを剥いで皿に乗せレンジに放り込む。そして小皿にめんつゆを1:1で割り、あつあつにしたご飯に掛けて冷凍庫にあった天かすを掛ける。軽くご飯が隠れるほど振り掛ければ超簡易な天丼の完成だ。

 スプーンでざっくりかき混ぜ口に運ぶ。つゆをかけられたお陰で猫舌のアンドレアスでも支障無くかっ込める。大量の天かすを掛けるから柚月の前では到底出来ないが、アンドレアスはこれが好きだった。白米を好きに食べれる環境下だから出来る贅沢だ。


「あー、一息ついた」


 勿論、これでご馳走様ではない。というかこの後が本番だ。

 鳥の胸肉を1枚取り出し、あまり厚みが出ないように3枚に下ろす。塩コショウを振り掛けて刷り込み、裏表処理を終えれば今度は同じように両面に片栗粉を付けた。

 一旦手を洗い、フライパンに油を敷いて温める。その間に醤油とみりん、砂糖を目分量でカップに入れカチャカチャ掻き回した。

 暖まったフライパンに鶏肉を入れ、両面に軽く火が通ればタレを投入する。独り暮らしをしていた時にもよく作った、照り焼きチキンだ。

 あとは極力鶏肉を動かさず、火を少し弱めて鶏肉にスプーンでタレを掛け絡ませる。途中でフォークを使いひっくり返し、同じタレを掛けて煮詰めれば完成だ。


「あ、ご飯」


 さっきの茶碗に二杯目の冷凍ご飯を投入してレンジにかけ、出来立ての照り焼きチキンを皿に盛る。タレも残らず掛けて。


「いただきまーす」


 温まったご飯をテーブルに運び、軽く手を合わせる。そして照り焼きにかぶりついた。

 最初に付けた片栗粉のお陰で肉はしっとり柔らかく、濃い目の甘辛いタレは勿論ご飯に合う。はふはふなりながらチキンとご飯を交互に運び、チキン一切れを残してご飯が無くなった。かといって、もう一つ冷凍ご飯を温めれば今度はチキンが無くなってしまうのは目に見えている。


「………よし」


 野菜室にあったキャベツを取り出すと、アンドレアスは自分の家から持ってきた愛用のピーラーで削って千切りキャベツを作る。8枚切りの食パンを二枚取り出すとキャベツと照り焼きを乗せ、余ったタレにマヨネーズを絞って混ぜたソースを掛けて挟んだ。照りマヨサンドイッチの完成だ。こんなの、美味しくないわけがない。ブラッキーが溜め息を吐いたのを見ない振りをしてかじる。柔らかな食パンとの相性は抜群だ。


「あー、幸せ」


 取り敢えず食器を流しに運んでフライパンを水に付けておくと、ブラッキーを巨大化させ、寝そべって抱き着く。


「柚月に鳥胸1枚使ったってメール送っといてね」


 腹が膨れると眠くなるのが人間というもので。


「一時間……やっぱ二時間したら起こして………」


 ブラッキーの返事を聞く前に、アンドレアスは幸せそうな顔をして眠りに落ちたのだった。

柚月・アークライト→アンドレアスの同僚で同居してる。アンドレアスが転がり込んだ。恋人。家事とか基本全部してる。

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