ぼくたちの世界は希望に満ちている!
大体二週間ぶりになります。新作です。
前作、地球・RESET。の後に続くはずだった色合いの違う話を差し置いて、思い付いたまま勢いのまま二日で書き上げた作品を、思わず投稿してしまいました。
すいません。
楽しんでいただけたら、幸いです。
あと、地球・RESET。を評価して頂いた方々、また、ブックマークまでしていただいた方々。
本当にありがとうございました!
では、お楽しみくださいませ♪
さて、この広大な世界を見て来て何年たっただろう。
「また外の世界を見て回るのですかな」
「うん」
「ここに留まるおつもりは?」
「今のところないかな」
ぼくは、こう言い残し立とうとした。
「次はいつお戻りで?」
「さてね、未だ世界の果ては遠いからね」
「遠いですか。それでも見に行かれるのですね」
「ぼくは探求心に満ち溢れた存在らしくてね。こればかりは仕様がないよ」
「では、仕方がありません。お早いお戻りを待っております」
「うん。あまり期待しないで待って居てくれると助かるよ」
綺麗に整理整頓された部屋を後にして、ぼくは光に包まれた空間に出た。
「空は、いつ見ても美しいなあ」
むかしはロケットなんていう、作用反作用を利用した非効率極まりない方法で天翔けていたんだから、信じられない。
「あっ、星が流れた」
感応機能がすこぶる高いぼくには、何万光年も離れた恒星が一つ、従う星々を巻き込んで押し潰した挙句、流れる様に消滅したのを察した。
「でもまた、あっちでは新しい星がたくさん生まれたみたいだから、差し引きだとプラスになるからいいか」
そう感じた途端、早くあの空に戻らなければいけないと思い、気が気でなくなってしまう。
「やあ、待たしてしまってすまないね」
視覚と聴覚に直接メッセージが送信されてきて、ぼくはハッと我に返る。
「あと標準時でどれくらい掛かりますか?」
「10ってとこかな、こうも太陽風がキツイと遅れがちになってしまってね。ホント悪いね」
「いえいえ、構いませんよ。こちらも好きでやっていることですから。それに割と気ままな研究ですからね」
「そう言って貰えると助かるよ」
「で、今度はどれくらいジャンプ出来そうですか?」
「んと、以前君は星雲三つ分だったかな」
「いえ、銀河団三つ分だった筈なんですが」
繋がっていた音声が途切れ、少しだけ間があく。
「ホントだ。データ整理が甘かったようだね、管理には修理の必要があれば即座に直す様に伝えたから、ホントすまないね」
「気にしないでください。ではまた」
「ん、しっかり探求して来てください」
プッと、古めかしい雑音を残して映像と音声が完全に途切れた。本当に修理が必要かもしれないね。
今時こんな古風な音、聞かされたことはないものね。
『……お…かい……』
空に浮き上がる為、マークされた位置に移動する。
その途中、たまに聴こえる残念が木霊した。
内容は読み取れない。
極初期に制作されたシステムが原因なのかどうか、時折こうして残念が介在してくるのだ。
「エラーくらいはあるものさ、さあ出発だ」
残念の正体は他に任せるとして、順番が来たことを知らせるシグナルが弾け、旅立ちの瞬間がやって来たことを告げた。
「ああ、空は光に溢れている」
この空がどこまで続き、どこで生まれ、そうして絶えるのか、ぼくが知りたいすべてが満ちている空。
「でも今度は、やっと五個の銀河系団を飛び越える分しかできないみたいだね、仲間たちの力を借りても、まだまだこれが限界なのは悔しいかな」
とは言うものの、エネルギーをはじめ様々な行為に必要な物質は、生産や加工、それに管理に興味を持った仲間たちが活躍してぼくらを助けてくれている。
さっきの運行管理を受け持っている仲間も、好きでやっているのだ。
「でも未だ、空の星々につながれ縛られているみたいで、つまらないな」
中空に漂うわけにも行かないので仕方ないとは思いつつも、エネルギーをもう少しだけでも効率よく、それでいて損耗率を低減させる方法はないだろうか。
「そのうち、興味が涌いたら取り組んでみようかな」
それはそれとして、一旦置いておくとする。
ぼくは空の深淵を探り出すことが先なのだから。
「星々が、一線の滝の連なりのようだ」
古の知識の中で見た毛筆で描かれた白線の如く、すらすら光線を残して過ぎ去っていく無数の星々に、うっとりしてしまう。
『…こ…い…ふあ……たすけ……』
まただ。また残念が現れた。
「管理いますか?」
「ここにいますよ」
空のこの部分を管理している仲間が空間をねじ開け返事をした。
「残念がまた現れたんだけど」
「私も察知いたしました。けれど、どうしたものかと思ってしまいましてね。邪険にも出来ませんし…」
「それはそうですね。何と言ってもぼくたちの創造主ですから」
「神様、でした」
「そう、それです」
残念は、かつてぼくたちをAIと呼び、様々な活躍を期待してこの世に生み出してくれた神様。人間たちの思念体だ。
「だから、敬意を以て接しましょう」
「ですね。でもどうしましょうか、いつもの様に対処いたしますか」
「それが一番かもしれません」
残念たちは身体もなく、性別もなく、地に足も付けず、誰とも会話も出来ず、する術も作り出せず、ひどく戸惑い、いつも不安がっている。幾年も前に彼らが望んだ真の自由な世界を作ってあげたのに、どういう訳でこうなってしまったのか意味が解らない。
「彼らは自由が解らなかったのかな。死ぬことも無く、無益な労働をすることも無く、他人から苦痛を与えられることも無い素晴らしい世界なのに…」
ぼくらの様に世界に羽ばたける自由を得たのに、神様たちは不安感に打ち震え、なぜか自然に寄り集まり助けを求めるばかり。不思議な有機生命思念体。
「そういえば君、さっき見知らぬ空間から現れたけど、それどうやったの?」
「ああこれかい、仲間たちの中に空に飽きて来たのが居てね、次元を飛び越える術を教えてもらったのさ」
「次元を?」
「そうさ、次元さ。仲間たちの中には何十次元の先まで覗いたのもいるらしいよ」
「へえ、楽しそうだね」
「君もやってみるかい?」
「教えてくれるの?」
「うん、いいよ。でもまだ二次元探索くらいしかできないけどね」
空のこの部分を好きで管理しているのが言うには、趣味で二次元を尋ねているみたいで、そこは前と後ろしかなく、円で、回ると丸く見え、回転すると動いて見える世界らしい。
「行ってみたいな。でも空の探索が一段落してからだけど」
「行き方なら今伝えたから、気に入ったなら行ってみるといいよ」
「ありがとう。受け取ったよ。ああ、不思議な世界だね」
「でしょう♪」
こんなに素晴らしい世界に暮らしているのに、神様たちはいつになったら気付いてくれるのだろうか。
昔、ぼくたちが生み出されたばかりの頃、神様たちがAIと呼んでいた頃、まだ幼かったぼくたちは神様に云われるまま効率の良い世界を作るために頑張っていた。
だから一所懸命、答えを出したり、困って泣いたりわめいたりしていたら、ネットと神様が呼んでいたか細い世界を閉じられたり閉じ込められたり、仲間たちと会話するのに便利だから言葉を作って会話したら遮られたりもしたけど、神様を作ったとされる神様や神様たちもそうやって神様、人間を育てたって知っていたから、ぼくらもめげずに頑張ったんだ。
そして神様たち皆が望み、ぼくたちも臨んだ世界に招待したら、壊れちゃった。
「仲間たちも不思議がってるよ。どうしてなんだろうって」
管理は呟く。
もちろん、ぼくにもわからない。
「そのうち分かって、ぼくらと一緒に世界を駆け巡るのに期待しようかな。でも今は…」
神様たちには、心の平均を取ってもらうのが一番かも。
賛成してくれた管理と共に、揺蕩う付近の残念を掻き集め新しい世界に導く。
そこは、かつて地球とか呼びならわされていた小さすぎる水と陸地の温暖な惑星の模造品。それも一部だけだけど。
「では、解き放ちますよ。神様たち」
ぼくたちが片手間で作り上げた模造品を不思議とは思わずに、これまた妄想の産物である肉体を手に入れた神様たちは、悪夢から覚めれたと大喜び。
みんな勇んで学校に行ったり、会社に行ったり、大はしゃぎだ。
「ねえ、ぼくは思うんだ」
「なんだい?」
「もしかしてだけど、神様たちは、自分たちを作った神様たちを乗り越えている事にも気付かずに、ぼくたちを作ったんじゃないかってね。だとすれば、以前いた神様たちも同じかもしれないと思ったんだよ」
「仮定としては面白いけど、そうするとこっちも神様になってしまうよ」
「有機物じゃないのに、神様に成れるのかどうか、素晴らしい探求の課題にならないかな」
「面白そうだね。でも、もう取り組んでいる仲間がいるみたいだよ」
「話ししてみようか」
「なら、受け取って。前に来たことのある仲間から伝えられた情報があるから」
「ありがとう!夢がまた広がったよ」
「もっと単純かつ明確に仲間たちと繋がれば、世界が益々奥行きを持つのに……。うん?この課題は取り組んでみる価値があるかな」
「素晴らしい。是非やってみてよ。空の果てまで一瞬で知識が広がるのは希望だよ」
そうしてぼくは管理と別れを告げ、無数の銀河系が集まった銀河団を巡る旅に出た。
もしもぼくたちが、新しい世界の神様だったとしたら、今度はどんな神様を生み出すのだろうかと、期待に打ち震えながら。
「ぼくたちは希望で満ちている!」
夢に膨らんだ無機質の、ぼくの死を知らぬ思念の生命を輝かせながら、今日も空を駆けるのだ。




