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美しい花には秘密がある  作者: 美月すず
第一章 長女 つばき編
3/38

椿2

「えっと・・・。中大路なかおおじ先生やなあ?びっくりしたで。」

フロアの男性店員こと青西優人あおにしゆうとが、患者と接するような柔和な笑顔をつばきに向ける。

身長は、173センチ、体重58キロと、スリムな体形の彼。

髪は、黒い。少しクセがあるため、ワックスで、固めている。

長い眉に、意外に長いまつげ。

切れ長の瞳に、やや高めの鼻。

薄い唇。

全体的に、かっこいいと言われる顔立ちなのは、つばきもわかっている。

しかし、どことなく、チャラさが漂っている。

この瞳の奥にか?今は、にこにこ笑っている顔の裏にか?

それを証明する噂も知っている。

実際に、話したことは、ないはずだ。

あいさつ程度くらいだ。

でも、彼は、接客が向いているのか、笑顔で、つばきに話しかけてくる。

逃げ出したいつばき。

どうすべきか判断できないでいると、青西優人あおにしゆうとの、言葉に、どんどん、クールな自分に、戻れなくなっている。

彼は、普通に、話しているだけだ。

「知合いが、来てくれると嬉しいな。家、近いの?ほんまに、嬉しいな。」

「あれ?やけど、病院、クリニックも、ここから遠いでなあ?ここいら、物価も高いし・・・。もしかして・・・。」

つばきたちの勤め先は、病院とクリニックを経営している。

曜日ごとで、病院勤務かクリニック勤務か分かれている。

午前と午後でも、分かれている。

そんな説明をしている間に、つばきが言葉を発せれないまに、青西優人あおにしゆうとは、つばきの来店を彼なりに解釈したようだ。


「うちに、会いに来たん?」


「!!!」

思いがけない解釈に、更に、目を見開くつばき。

どんどん彼のペースにもっていかれている。

なんとか、落ち着こうと、つばきは、深呼吸をする。

そして、言葉をつむぐ。

「ち・・・、違います。青西先生が、ここで、働いていること知らないですし・・・。ちょっと・・・来て見たかった・・・だけです。」

感じ悪かったかな・・・。

でも、青西先生の言葉をきいていると、心臓に悪い!

早く、退散してほしいから、いいよね?

と、自分に言い訳をしているつばき。

頬が赤いことには、気づいてない。


「まあ、そないに、怒らんといてや。ほんまは、京都弁好きなんやろ?

--------それで、来てくれたんやろ?」

つばきの耳元で、青西優人あおにしゆうとは、ささやいた。

自分でも、真っ赤になるのがわかった。

それでも、なんとか否定したくて、青西優人あおにしゆうとを見ると・・・。

愛おしそうな瞳で、とろけそうなつやっぽい笑みで、甘くつぶやいた。

「かいらしいなあ。」


どうしよう・・・。

この言葉で、この甘い声。

おまけに、見たことにない彼の色っぽい笑顔。

ドキドキが、止まらない!!!

ダメよ!

こんな一番苦手な男に、私の秘密がバレてしまうなんて・・・。

うわーーーーー!

叫びたい!

でも、ここは、落ち着かなくては、いけない。

この男に、ときめいてはいない。

私は、この男の京都弁に、ときめいているのだ!

うん。

大丈夫。

クールな自分を、取り戻せ!

よし!


つばきは、青西優人あおにしゆうとに、話しかけようとしたら、キッチンにいる男性から呼ばれたらしく、さっそうと、去っていた。

「かんにんな。またね。」

と、言葉だけは、忘れずに。


静寂が、訪れる。

手元の、コーヒーを、口に運ぶ。


うん!

おいしい!


つばきは、特集記事どおり、コーヒーもおいしいことに、満足する。

そう、ここは、『方言カフェ』なのだ。

ちまたに、『猫カフェ』、『仏像カフェ』、『メイドカフェ』ある。

それと同じで、ある。

趣向が、『方言』と、いうことだ。

いろいろな方言が、あった方が、客層が増やせるとおもったのか?ここでは、いくつかの方言を話す。

主に、京都弁、大阪弁、博多弁、岩手弁である。

どの言葉を、お客様がご所望かわかるように、メニューの名前に、希望の方言をつける。

ただ、『弁』抜きで。

つまり、『京都コーヒー』というのは、京都弁の店員さんが、コーヒーを運んできてくれるということである。

いうまでもないが、中大路なかおおじつばきは、京都弁が好きだ。

それが、彼女の、ちょっとした秘密である。


「おいでやす。ほんのサービスどす。」

見知らぬ男性が、つばきのテーブルに、レアチーズケーキを置いた。

一歩遅れて、キッチンの男性だと、気づく。

特集記事にも載ってなかったサービスに、どうしたらいいのか戸惑うつばき。

くすっと笑い、さわやかな笑顔を、つばきにむけながら言う。

優人ゆうとの知り合いどすなぁ?来てくれて、おおきに。特別サービスどす。」

長身で、短髪の黒髪。細い黒色フレームの眼鏡。

さわやかで、真面目そうな雰囲気の男性。


どこかで・・・

見たことあったかやぁ・・・。


つばきは、三河弁で、思い出していると、特集記事に載っていたことを思い出す!


「あ、ありがとうございます。記事・・・見てきたのですけど、たしか・・・店長さんでしたよね・・・?」

微笑み返す。そして、おずおずと聞いた。

「おおきに。見てくれたんや。嬉しいな。店長の小梶こかじどす。・・・ゆっくりしていってや。」

店長は、さわやかな笑顔を見せて、去っていった。


うん!

こういうさわやかなのが、いい!

背が高いし、耳に心地良く残る京都弁、最高!!!


大西優人おおにしゆうとと違って、ドキドキしない理由には、まだ気づかないつばきであった。


クールな表情が、ゆるんだままのつばき。

サービスのレアチーズケーキを食べ、更に、表情をゆるませたのである。

クールとは思えない、なんとも愛らしい顔立ちである。

その表情を、京都弁を話した男性たちは、しっかりと見つめていた。


上機嫌になったつばき。

当初の目的を果たせたので、すっかり、青西優人あおにしゆうとに、秘密をバレたことを忘れていた。

意外に、現金なところがある美人らしい。

レジで、再び、青西優人あおにしゆうとと、会い、一気に、我にかえったのである。

すでに、時遅しである。

それでも、クールな顔に戻るつばき。

気にもとめず、笑顔な青西優人あおにしゆうと

お金を払い、おつりとレシートを受け取る。

「それと、これも。どーぞ。」

と、丸い厚紙を渡され受け取った。


クーポンだろうか?


つばきは、何気なしに、受け取り、カバンにしまう。

「楽しみにまってんね。連絡してや。」

つばきは、何気ない言葉の意味に気づき、厚紙を再度、出す。


それは、クーポンでなく、コースター。

小梶カフェの名前の入ったコースター。

裏には、青西優人あおにしゆうとの連絡先が、キレイな大人の字で書かれていた。

すかさず、返そうとする、つばき。

「電話してくれたら、いつでも、京都弁で話したんで。」

つばきの耳元で、小声でささやく青西優人あおにしゆうと

不覚にも、その甘い言葉に惑わされてしまい、真っ赤な顔で、帰宅したつばきであった。


帰宅後、ベットの上で、コースターを見ながら、泣き叫んだのは、言うまでもない。

読んで下さって、ありがとうございます。

京都弁、いろいろ調べて、使っていますが、万が一、「おかしいよ!」と、言うのがありましたら、お詫び申し上げます。ご連絡は、こっそりお願い致します。小心者です。

少しでも、ひまつぶしになっていることを祈って・・・。

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