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クエスチョン

ハッとした。携帯は5:30を示している。本文を読むのにそこまで時間が掛からなかった事を考えると1時間超の間、俺はボーッとしていたのだろう。


いや、この時間のそれは一般的には寝落ちというのではないか。


真っ暗だった部屋にカーテンの隙間から青白い光が刺す。イラついた様に喚くカラスの鳴き声と相まって寝不足の俺に嫌悪感を抱かせた。


「これはもう寝れないな」


学校は休みだが、今寝ると今日の夜眠れなくなってしまう。生活リズムを治すために今日は意地でも夜まで寝ない事にした。


少しでも寝ない様に冴えない頭を整理しながら狭間の王からのメールの内容を再確認する事にする。


ーーーーーーーーーー

メールが遅れたのは皆様が何を疑問に思っているのかを考えていた為です。

わかりやすく、大まかに何をして頂きたいのか説明します。

置かれている現状に関しましては、気になる方気にならない方様々かと思うので個別に聞いてください。


一、狭間の世界を介して、皆様の元世界に転生させますので指定した転生者を殺してください。殺さなければ現世界に帰れません。


二、元世界で死んでしまった場合、とある事情で今いる現世界に転生させる事が出来ません。補充するのも面倒なのでなるべく死なないでください。


三、転生者を殺す為の能力は与えます。しかし私は神ではなく一介の世界の王に過ぎないので、転生者程の能力は与えられません。


四、元世界には皆様の居場所はありません。


五、5日以内に転生者を殺せなかった場合、放棄と見做して殺します。


六、元世界への転生の前日にターゲットの情報を伝える為と皆様の作戦会議の為に狭間の世界へ飛ばします。


以上になります。


質問はメールで受け付けます。


なお、次回の狭間の世界への転移は4日後です。


ーーーーーーーーーー


メールを再確認して思い出す。俺は寝落ちした訳じゃなくて頭がパンクして呆然としていたんだ。


「疑問はいくつか、処かたくさんある。疑問だらけだ」


この際、何故こうするのかとかこうする必要があるのかって最大の疑問は置いておく。それを抜きにしたって最大にも引けを取らない疑問がある。


一つ目。転生者を殺す能力は与えるが、転生者程の強い能力は与えられないという箇所について。


あたかも転生者が異世界に行った時に得た能力を現実……ややこしいな、今の俺にとっての元世界でも使えるような口振りじゃないか?


待てよ。もし「加護」が能力だとしたら殺せないんじゃないのか?


……いや、殺せないものを殺せなんて言うはずがないし、異世界の神の加護が元世界まで届くとは思えない。仮に届いたとしても「殺す為の能力」をくれるんだからなんとかなるのだろう。


能力は狭間の王が与えてるものだとばかり思っていたが、どうやら違うらしい。


二つ目。とある事情で元世界で死んでも現世界に転生する事は出来ないというところ。


逆に言えば、そのとある事情さえ解決出来れば5日の期限の間なら仮に死んでも生き返れるという事になるのか?


これを行う理由に繋がってそうな核心部分じゃないのか?もしかしたら、その事情がそのまま理由になっているのかもしれない。


そう仮定すれば、使われている間、死んでも良い日が来るかもしれないなんて淡い期待はしないでおいた方が良さそうだ。


もし狭間の王が言っていた「怒ってる」事の理由になってるとすれば……恐ろしいな。あの身の毛もよだつ感覚は二度と味わいたくない。


この疑問だけは胸にしまっておこう。


三つ目。5日間で転生者を殺せないと俺達を殺すとまで脅しておいて、わざわざ元世界に居場所がないとまで言う理由。


やる気を出して欲しいなら殺すまでで充分な筈じゃないのか?


それとも脅しと決め付けて放棄する奴が出ると見込んだ念押し?頑張ってた奴を巻き添えにしない為の彼なりの優しさ?


そもそも居場所がないってどういう意味なんだ。

わざわざ書くほど、俺達をやる気に出来る事柄なのか?


「……やる気か」


狭間の王への恐怖心が頭から付いて離れていないのか、俺は既にやる気になっていた。


やる気という表現は少し違うかもしれない。正しくはやらなくてはいけないと思ったのだろう。


なんで俺がこんな目に!?と癇癪を起こさずにごく自然にメールの内容に疑問を持ってしまっているのだから。


俺の感覚がおかしくないのであれば、他の奴等だってそのはずだ。狭間の王を前にしておいて、ただで済むはずがない事くらい誰だってわかる。


但し、狭間の王の威圧感こそ四つ目の疑問でもある。


四つ目。何故一般人でもわかる程の強さを持つ狭間の王が自ら動かずに、俺達を使うのか。


俺が出来ない事は出来る奴に任せるとは格好付けた中学生時代の俺の決め台詞だが、それが狭間の王の現状に当てはまるのか?


でも、あのページみたいに元世界の俺達に干渉できたり、そもそも今までの転生者も彼が仲介して異世界にやってたんだろ?


代わりを補充するのも面倒とメールに書いてあった。


つまり、ページを通して異世界(現世界)に飛ばされた以外の転生者は狭間の王だけの力や意思じゃなかったのか?


「あーダメだ。パンクする」


聞いても良さそうな事はメールで質問しておくとして、続きは飯を食ってからだ。糖分が足りない。


午前7時。昨日、事が起こるまで見ていたバラエティ番組で紹介されていたコシヒカリとかいうもっちりねっとりとした食感らしい日本産の米を頭に浮かべながら母親が炊いたパラパラのタイ米を頬張った。


母親とは昨日の話の続きを少しとコシヒカリを食べてみたいと言った俺に「嫌なら食わなくていい」なんていつも通りの会話をしていたが、朝飯中に流れていたテレビには異世界転生者は一人も出ていなくて、やっぱりここは別の世界なんだと新鮮な気分で今日を迎えた。


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