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Garden  作者: きょうか
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来店 霊障系女性 3



 三浦彩音、26歳、現在休職中。販売系の中小企業、総務課に席がある。


「どうしよう・・・・」


 胸元にあるネックレスを握り締め、実家の自分の部屋で途方にくれた。

 思えば3ヶ月前、4年ほど付き合っていた彼氏から携帯のメールで別れを告げられた頃から少し変だったのではないかと思う。

『お前と結婚する気はないから別れよう』

 そんな一文だったかと思う。

 薄々感じていた思いの差。付き合う前は熱心にメールも電話もかかってきていた。付き合い始めて半年で間隔が疎遠になる。人と付き合うということがあまりわかっていなかったのでこういうものなのかな、と思いながら過ごした約4年。

 そのメールでこの日が来たか、と思ったのも事実。前々から遠くなく別れるだろうと思っていたが、その精神的ショックはかなりなものだったと思う。しかし一社会人として失恋で仕事をサボるわけにも行かず、重い身体を引きずって休みなく仕事をしていたはずだった。



   ◆



 失恋から1ヶ月たった頃。


「三浦さん、少し休職してみようか」

「はぁ・・・」


 呼び出された小会議室で突然上司は切り出した。


「この前問診に行ってもらった産業医もね、少し休息が必要、って結果でね。まずは2ヶ月、長くて半年かな。毎月問診に行ってもらって改善されたら復職してよ」

「あの・・・」

「眠れてないんでしょ?クマすごいよ。どこかさ~旅行でも行って心機一転がんばってよ」

「はぁ・・・」

「それじゃこれ休職届けね。最初に有給を割り当ててね、その後は無給。本来は無給らしいんだけど社会保険系は会社が特別に給与としてだしてくれるから心配ないよ」

「え・・・」

「長い休みなんてそうそう取れないよ。ヨーロッパとか行ってみたら?それじゃ俺はこれで」



   ◆



 強引過ぎる展開だったと今になっては思える。あの頃は失恋の痛手と無言電話と終始なりまくる迷惑メールで精神的負荷がキャパシティを超えていた。

 やっぱりやりなおさないか、なんてかかってくるんじゃないかとどこかで期待していて携帯の電源を切ることが出来ず悪循環だったのだ。

 突然の休暇に私は家から1歩も出ることはなく、1ヶ月。2ヶ月目には心配した親に外に出なさいと送りさされ、行った先は彼との思い出デートスポット。


「うわ・・・・恥ずかしすぎる・・・」


 自分のここ2ヶ月の行動を思い出して、床にがっくりとうなだれる。床にばら撒かれた服の数々を見てさらにへこむ。


「まずは掃除っ」


 森ガール系の服が好きだった元彼。


「ガールって年でもないでしょ、もう26よ26っ」


 ぽいぽいビニール袋に詰め込んで、古着屋にでも持っていこう。売れた代金で新しい服でも買えば良い。


 ピリリリリ


 携帯がメールの着信を告げる。


「うっとおしい・・、電源切っちゃえ」


 鏡をのぞいて見るとコントみたいに見えるクマ、がさがさの肌、ぼさぼさの髪。


「こわっ。睡眠不足だけでこんなになるの?いや過ぎる。今日は美容パック決定ね、ああ美容院もいこう・・・」


 はぁ、とため息が出る。

 まともに見えるようになったらお店に行って謝らなきゃ・・・。

 私、ネックレスの代金払ってない。



   ◆



 目の下のクマ、綺麗に消えた。肌の調子、もっちもち。パッツンな前髪はもう伸びるのを待つしかないとして、やぼったい長い髪は美容師お任せで年相応になったはず。トリートメント効果で天使の輪できました。服も森系なんてばっさりとやめて自分の好きなもを買った。タイトジーンズにTシャツ、温度調節にはシャツ、シンプルなパンプス。今までの自分どこ行ったんだろう。


「いらっしゃいませ」


 迷惑をかけた店の下にあるカフェでまずはランチ。今まで奥のほうの席に案内されていたのだけれど今日はカウンターに通される。


「ご注文お決まりですか?」


 にっこりと水を持ってきてくれるのは、やはりいつもと違い若いウェイター。


「Aランチで。お客さん多いですね」

「ランチの時間はいつもこんな感じです。Aランチですね少々お待ちください」


 何度もランチがある時間帯に来ていたはずなのに、初めて見るほぼ満席の店内。元彼とここに来たのは1度だったと思う。でもこの店は元気が出る感じがして怪しい行動の際にはよく立ち寄った。怪しい行動、あいまいな記憶、相当参っていたらしい、と苦笑いが出る。

 スピーディーに運ばれてくるランチセットをもりもり食べて、目指すは2階のショップ。手土産は考えてみたのだがやめた。代金を払って、店のアイテム何点か購入して帰ろうと思う。

 階段を登って扉をあけるとチリーンと爽やかな音がする。すぐ目に入るディスプレイは天上から下げられていてまるでペンダントトップのよう。店内は明るくキラキラと商品が反射している。そして次に目に入るのは左側の小部屋。ガラス張りの小会議室のような空間で、アンティークな家具が置いてある、ちょっと特別な感じのする部屋。

 カウンターには男性が1人。黙々と何かを拭いていて客が来たのに気づいていないのかもしれない。


「あのっ、すいません」


 どうかどうか先日の非礼を許してくれますように。万引きともとられても仕方ないネックレスのペンダントトップを握り締めて私は男性に話しかける。



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