来店 霊障系女性 2
人外の生物は鬼か悪魔なのかと思います。
おつかい。下のカフェへ行き塩を拝み倒して頂いて来る、を実行した。そののち年末の大掃除並みの仕事が待っていました。
1、塩を店内床、店外階段に振りまく。そして掃き掃除。
2、外国産怪しいペットボトルの水を使っての店内全拭き掃除。ついでだからと店舗外側も指示されました。
3、全商品拭き掃除、銀製品にいたっては鍋+水+アルミホイル+塩適量のフルコース。石についてはチャック付きビニ袋+水の総取替え。
4、透明石クラスターを厳重梱包の輸送準備。
実は退場いただいた際に気づいたのですが、彼女、予約販売の時に一番最
初にお客さんに見せる用のクラスター、大きい石の塊透明色を膝にのせて抱えていました。
値段?もちろん知りません。見せ金ならぬ見せ石だと思ってましたから。重さは10キロくらいでしょうか・・・。
「何が起きた」
半泣きで透明色クラスター+梱包財と戦っていた最中に遅番、13時から21時勤務の丹羽が出勤してきた。
「オーナーの指示です・・・」
「うわやべ・・・鳥肌たった」
何を見て鳥肌たったのかは絶対に聞きません。
「オーナーは?」
「見捨てて逃げました。指示はそこの紙に書いてあります」
社員を置いて逃げるとは血も涙もない鬼です。
「この撒いてあるのは塩か・・・」
サラサラの塩です。惜しげもなくぶちまけました。掃き掃除をしていたらクラスターが気になりすぎて梱包作業に急遽変更です。
「今からでも逃げるか・・・・」
「おぉおおおなぁああああああ」
振って沸いた美声ボイスにしがみつく俺。
「キモイ」
凍るような声に負けないでしがみついていると何か良い匂いがする。
「嗅ぐな・・・・。クラスターは2時間ほどで引き取り手が来る、そんなに嫌なら梱包の上から塩でもふっとけ。新しいクラスターは手配したが到着は未定。僚哉と玲が学校終わり次第バイトに来る。水が足りないだろうから六○のおいしい水で代用だ。下のカフェ付けで届くから受け取りに行け。布は洗濯でどうにか回せ。あとは、そうだな・・・塩の販売始めるか」
「塩はよく聞かれますね」
「考えておく」
俺は聞かれない。それにしても何の匂いなんだろうか。クンクンしていると強制的にはがされる。
「明日・明後日は臨時休業。何でもいいから今から3日でなんとかしろ。俺は帰る」
人外の生物は言うことが違う。
「残業はどのくらいしても?」
「いくらでもつけろ。俺は滝にうたれてくる。お前らは風呂には塩入れてはいれ」
怖い・・・。なんで塩風呂?塩モミもしておく?
「家に入る前にもふった方がいいですか?」
「そうしておけ」
丹羽は怖い事を聞く。帰宅用に人数分の塩確保。そして俺の分は多めに・・・。
などと残りの塩袋に視線を這わせていると、オーナーは宣言どおりに帰っていった。
「今日は掃除だな。明日はシルバー中心に洗浄。明後日は石の詰め替え」
「終わるのかな・・・」
「8時出勤0時退社、2時間休憩かな。疲れて効率下がるのも嫌だし」
「そうだね・・・じゃぁ0時までガンバロウ・・・」
「梱包任せたよ。掃き掃除してくる」
逃げられたっ。
◆
俺の住む部屋は職場ガーデンから電車で10分、家まで5分。築10年ワンルーム、トイレ風呂別の家賃7万円。すてき賃貸だ。
エントランスに入る前に体に塩を振りまき、玄関の前でダメ押しの塩ふり。いつもはシャワーで済ませてしまうのに湯をはって塩を入れ入浴、そののち洗い場で塩モミを始める。
丹念に塩モミして湯に浸かってあったまったせいか、体はポカポカだった。
物が少ない部屋。この部屋を選ぶのに何十件の物件見学に行ったか覚えていない。物を買うにものすごく選ぶ店からアイテムまで気に入るものを見つけるまで買わない。物を選ぶのは凝り性だと思っていた。就職活動を始めるまでは。
書類審査を通っても会社訪問ができない。会社の敷地に入れても建物に入れない、観葉植物が怖い、置き物が怖い、この先に進んではいけない気がする。就職浪人が決定した。
思ってみれば物に対する執着に似たモノ。場所に対しての回避傾向。今まで考えないようにしていたアレコレ。今後も深く考えるつもりはないのだが、今日のアレはオーナーが来なかったらカウンター内で意識を飛ばしていた気がする。
「考えちゃ駄目だ・・・ステキ世界に足を踏み入れてしまう・・・」
今日は入念にお祈りしよ。
引き出しから本と小袋を取り出して祈り始める。
「信じるものは救われるっ」
特に信仰している宗教があるわけではありません。ですが小・中・高・大学とミッション系でした。洗礼?受けてません本人の意思に任せる方針でした。毎週とあるところでお祈りをしていますが、そこの責任者さんもご存知のはずです。
どちらかに踏み込んだらもっと怖いものが増えそうで怖いじゃないですか。