来店 小動物系少女 4
「あああ、あの・・・」
このカミカミはっと俺はバックヤードからカウンターへと飛び出す。
「コんにちわ」
桃花ちゃん6日ぶりの来店です。カウンターに居たもう一人の社員丹羽が任せた、とばかりにバックヤードへと入っていく。ガーデンではカウンター業務は一人と決まっている。
「いらっしゃいませ」
ペコ、と頭を下げる桃香ちゃん。もちろんほっぺたは赤く染まり、手は心なしかプルプル震えています。その可愛らしい動作に抱きしめてしまいたい、そんなイケナイ感情を覚えて完璧なまでに従業員の仮面をかぶることに徹します。
「あの・・・教えていただきたいことが・・・」
前回に比べると格段にカミカミが少なく、予想通りの可愛らしい声を響かせる。石の効果がでているのかは神のみぞ知る、というか確かめようがない。しかし短期間でこれほどの改善の兆候がみれるケースは稀だ。
「どうぞ、座ってください」
予約するときのカウンター席に誘導して、真正面ではなくややずれている位置に立つ。真正面は相手が緊張しやすいらしい。変人オーナーの指導。
「えっと・・・」
一生懸命にしゃべり始める桃香ちゃんの話を要約すると、石の取り扱い説明をまったく覚えていない、とのことだった。
桃香ちゃんの選んだ石はピンク色。透きとおり多少クラックの入ったその石は単四の乾電池くらいの大きさ。女性にお勧めの商品で女性らしさや恋愛の成功などに良いとされているもの。
「太陽の光はあまり得意ではないので、長時間光には当てないほうがいいとされてます」
「つけるのは服の下がいいですか?」
「装飾品としてつける時間分は問題ないです。お手入れ、体から放して石の鋭気を養ってあげるときは太陽にはさらさずに月の光にしてあげてください。満月表お渡してありますよね?」
「はぃ」
「満月の日に一時間程度お水に浸してあげると喜ぶようです」
「はい」
実は俺は石が本当にソレを欲しているかなんてまったく思っていない。ようは使っている側の気の持ちよう。こうするとパワーが充電されますなんて説明を受ければ石の効果を信じる人には効果がある・・・時もある、気がするだけ。もちろん売っているおれ自身が信じていません、なんて宣伝する気はナイ。
「お水は・・・」
「私は水道水で十分だと思ってます。ペットボトルの天然水を使う人もいます。近所の湧き水や井戸水、神社の湧き水などが手に入る環境でしたら色々と試してください」
「わ・・かりました」
ちなみにガーデンでは外国から定期的に怪しい水がペットボトルで送られてきます。飲みたいとは思いません。日本の水道水が一番安全です。
「あまり構える必要はないですよ」
真剣に話を聞いている姿は予約をしたと時の固まってこわばった表情とはまるで違い、少しは緊張も解けている様子です。思い込みパワー・・・、訂正します石の持つパワーの効果は上々です。
補足説明を終え、何度もお礼を言い桃花ちゃんは帰っていく。可愛い後姿を見送って振り向くと丹羽が白い目で見ていた。
「カルテ通りのリンゴのお嬢さん、カミカミだったな」
「あ~、アレ会話できていたほうだ」
「アレで?」
「僚哉に声かけられてフリーズしてた」
「それは聞いた。男が苦手そうなら私でいいと思わない?」
ガーデンの制服は黒のスラックス白のワイシャツ、そして黒の前掛けエプロンをつけます。飲食店店員のような格好はオーナーの趣味などではなく、汚れる作業もあるのでエプロンは必需品。
「丹羽さんさ・・・わかって言ってるでしょ」
20代平均身長170センチの俺よりも3センチ高い身長、、ワックスでしっかりと整えられた髪形は清涼感をともない、男前な空気は垂れ流し。
「可愛い子だったよね。典型的なお嬢様って感じで」
「まぁ・・そうなんじゃない?」
「化粧をしてない顔、白い肌、歩行も動作も綺麗だったね」
「それなのにハイチェアーに慣れていないのかな、座るときは鈍くさく見えて可愛いよ」
「独り占めはよくないし、同姓に任せようよ」
「お前さ、俺より男前な外装しててよく言うわ・・・」
「生物学上れっきとした女だよ」
「ハイハイ。可愛い旦那様もいますしね」
「旦那とはラブラブだよ」
「ハイハイわかってます。わかってますが桃香ちゃんは俺に慣れてきた最中ですから、濃厚な接触は自粛してくださいね」
「同性なのに」
「その男前の外装とっぱらってからどうぞ。ロングスカート支給してもらってください」
石選びの販売相手が俺だとあからさまに落胆されたり、舌打ちを受けるのは僚哉だけのせいではない、と思う。
ガーデンに来店の際は普通の男がカウンターに立っていても、ため息、舌打ちはしないでいただけるとありがたいです。
名前間違えました。透哉× 僚哉○