表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Garden  作者: きょうか
3/45

来店 小動物系少女 3


 三田桃香、15歳、今年高校生になりました。幼稚舎から短大まで一貫教育を行う女子校・聖ハイリアに在学中です。


「はぁ・・・」


 ため息が出ます。

 学校のお友達だけで始めてお買い物に行ったとき、とても素敵なお店を紹介してもらいました。ガーデンというパワーストーンのお店です。最初はアクセサリー屋さんだと思っていたのですが違いました。鳥かごのようなモチーフのペンダントトップアクセサリーが素材デザイン別にたくさん置いてある店内。ネックレスチェーンも豊富に揃っています。他にも可愛らしいアイテムがたくさん置いてあります。パワーストーンなんて一つも飾ってなかったので私が間違ってしまったのは仕方ないと思います。


「ふぅ・・・」

「桃香ちゃんどうしたの?」

「珠ちゃん・・・」


 幼稚舎からのお友達の珠ちゃんが、お昼のサンドを片手に心配をしてくれます。


「珠ちゃん・・・私・・・男の人が苦手みたいなのっ」

「今さら?」


 半年の間悩んで告白した悩み事をすでに珠ちゃんは知っていたようです。さすが幼稚舎からのお友達です。


「何で知ってるんですかっ、私は最近気づきましたっ」


 男の人が苦手とわかったのはガーデンでアクセサリーを買おうとしたときのこと。お会計のカウンターにはいつも男性しか居ないのです。購入するのに3ヶ月かかりました。


「まぁ・・・見てればわかるよ・・・」

「ちゃんとお話できるのはお父様と誠さんだけなんですっ」

「生まれてからずっとの付き合いだものねその二人は・・・」

「むぅ・・・」


 誠さんはお隣に住んでいる7歳年上のお兄さんで、とっても頼りになる家庭教師なのです。


「桃香ちゃん・・・良く考えてみよう。苦手な科目は?」

「今はありません」

「中学のときは?」

「一年の時は国語です」

「二年は?」

「社会です」

「三年は?」

「英語です」

「その共通点は?」

「バラバラです?」


 不思議です。苦手な科目は誠さんが家庭教師をしてくれるので成績は悪くありません。バラバラなのさえ気づきませんでした。


「担当の先生が男性なのよ・・・」

「はぁっ」


 驚きの事実です。


「それで、ため息の理由は?」


 キョロキョロと周りを見渡します。


「昨日ガーデンで予約をしました」


 こっそり珠ちゃんにだけ聞こえる声を出します。珠ちゃんはガーデンに行ったことはないのですが、ガーデンのことは私以上に良く知っています。


「やっとなのね・・・」

「はい」

「おめでとう」


 キョロキョロと再度周りを見渡します。


「選んでくださるのが浅川さんなんです・・・」


 先ほどよりももっと小声で囁きます。


「難関ね・・・」

「はい・・・」

「いつなの?」

「今日なんです・・・」

「わかってるとは思うけど制服で行くのだけはやめたほうがいいよ・・・」

 昨日の今日なので心の準備が整いません。ガーデンのアルバイト浅川さんは人気者でこっそり王子なんてあだ名がついている人なんです。

それよりも何よりも私、同学年の男の人とお話したことないんですっ。




 ガーデンはマンションの二階にあります。中央にエントランスがあり階段を登って右側です。外壁がガラス張りになっていて外から可愛い小物たちが見ることができます。

 店内は中央に大きな鳥かごが天井からつるしてあり中には月替わりでカラフルなボールや星型のクッションみたいなものが入っていて目を引きます。大きな鳥かごを囲むように円形のテーブルが置かれ、テーブル上にはキャンドルスタンドと間違えていた色々な形の水籠が置かれています。

 予約の時間30分前にはお店の階段下に到着してしまいました。もちろん制服は着替え済です。聖ハイリア高等部の白セーラー服はとても可愛いのですが、寄り道は校則で禁止されているからです。この校則違反をしても特に生活指導に呼ばれるというわけではありませんが、珠ちゃんはそういうところに厳しいようです。

 予約のお時間五分前。時間に遅れるわけにはいきません。

 カウンターには予約をしたときに大変親切にしてくれたお兄さんが居ます。


「よよよよよっ」




 私がパワーストーンを購入したのには理由があるのです。男性が苦手だとわかったときはとてもびっくりしました。近くに行くことも緊張します。お話なんてとっても出来ません。でもその時はただそれだけだったのです。


「桃香、お土産気に入らなかった?」

「とっても美味しいです。誠さん」


 誠さんのお土産のお菓子をいただきながらテラスでアフタヌーンティ。

 小学生の時から家庭教師をしてくれていた誠さんは、今年就職をして仙台で一人暮らしをはじめました。今は私の誕生日に合わせ遅めの夏休みをとって実家へと戻ってきています。


「お仕事大変ですか?」

「仕事より一人暮らしが大変かな」


 大変には見えない素敵な笑顔で微笑んでいます。

 そうです、就職なのです。誠さんがお隣さんから仙台に行ってしまいぽっかりと心に穴の空いたように寂しくなりました。誠さんとお会いできなくて寂しい気持ちが恋なのだと気づいた頃に発覚した男性が苦手という事実。これから先男性と関わらずに生きていくことなど不可能なのです。そしてそんな欠点のある女性など誠さんにふさわしくありません。

 誠さんにふさわしい女性になるための努力。努力を後押ししてくれるアイテムがパワーストーンなのです。


「可愛いアクセサリーしてるね」

「はいっ。自分で買い求めたんです」

「桃香が?」

「もちろんです。ガーデンというパワーストーンのお店なんですが、とっても素敵なお店なんです」

「・・・そう」

「最初はアクセサリーショップかと思っていたんです」


 買うまでに時間がかかったのは秘密です。


「誕生日プレゼントはアクセサリーのほうが良かったかな?」

「いいえ、テディベア大好きですから。今年の子は瞳がとっても可愛いですね」

「僕もその子は瞳が気に入ってるよ」

 久しぶりにお会いする誠さんはニコニコとガーデンのお話を聞いてくれました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ