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Garden  作者: きょうか
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来店 小動物系少女 1

『いらっしゃいませお嬢様、ガーデンへようこそ』


 間違ってもそんな出迎え方はいたしません。キラキラしたお兄様方が素敵なスーツを着てお出迎え、なんてこともありません。ガーデンは石を扱うショップ、いわゆるパワーストーンを扱うお店です。


「よよよよよよっ」


 真っ赤な顔をした小動物系少女が先ほどからうろうろちらちら売買カウンターを見ていたのだが、意を決し、中にいる着物を着たおっさんに奇声を上げる。ちなみにこのおっさんこのショップのオーナー。ふらっと店に来ては売買カウンターに座り、仕事をしていた社員(俺)をバックルームへと追いやる。オーナーの意向には逆らわない俺は、そこから小動物VS着物のおっさんの攻防を見守る。


「よよっ、ょゃくぉねがぃします」


 抑揚のおかしい日本語で予約の一言をつむぎ出す。よくがんばりました、と頭をナデナデしてみたいところだが、ここはバックルーム。 

このショップ石を買うには予約が必要で店員に声をかけなくてはいけない。小動物には高いハードルだったよう。俺こと田辺大樹はひっそりと観察していたこの数ヶ月を思い出して涙が出そうになる。店頭に並ぶ商品をぽやーっと頬を赤く染めながら眺める小動物。商品を買うのにも一大決心な顔をしていた小動物。買えたときはうれしくて階段から転げ落ちそうになっていた小動物。

なんで見守ってた俺じゃなくておっさんがカウンターにいる時に予約なんだ・・・。


「予約だな」


 がんばった小動物にはつらい一言だったかもしれない。美声ボイズをオーナーが振りまくと小動物はぷるぷると震えだす。


「名前は」

「みみ・・・っ」


 ミミさんですか?と思うが、多分かんでいるだけだろうと思われ着物のおっさんも見守っている。


「みみみたもも・・・か・・・デス」


 どこまでがカミでどこまでが名前なのか不明。そんなカミカミ小動物におっさんは話を続ける。


「年は」

「ジュうぅご・・・さぃです」


 年齢は15とかろうじで確認できる度合いだ。


「生まれた日は」

「くがちゅ・・・つ・・・」


 くがちゅ、言ったよこのカミカミ娘っ。極度のあがり症というのは会話と態度で知れるが、日常生活はどうしてるのだろうかと心配になってしまう。


「スリーサイズを上から」

「はぅい・・えっと・・・」


 スパーン

 こぎみ良い音がして店内は静まり返る。とは言ってもお客さんは小動物しかいないんだが。


「おまぇスリッパで頭叩くとか何しやがる」

「アホなオーナーが悪いんです。15歳の少女にナニを聞いてるんですかっ」

「はぁ?!」

「セクハラですよ奥さんに密告しますっ」

「72・55・73のギリギリBカップ」

「はっ?」

「見てわかるもん聞いたって俺の嫁はなんともいわねーよ、ばーか。がっちがちに固まってるから緊張ほぐしてやっただけだ」


 見てわかる、はとりあえず脳内消去だ。小動物をそっと見るとプルプルすることなくフリーズしていた。


「予約は僚哉だ。あとはお前でさばけるだろ」


 おっさんは何事もなくバックヤードへと帰っていく。


「大丈夫?」


 小動物の目の前で手を振ってみてもフリーズしたままうごかないので再起動をまつことにする。

予約用紙をクリップボードに留めて準備を行っていると、小動物は三分後にプルプルが復活し、五分後には口がモゴモゴと動いていた。


「お嬢さんそこの椅子に座って、落ち着いたらコレ書いてね」


 なるべく視線を向けないように、予約用紙を書く椅子を勧めてクリップボードを置く。

 小動物はコックリと頷いて足の高い椅子に不器用に登って座り、プルプルしている手でペンを持ち用紙に向かう。

 見ていません、を装って観察をしながらおっさんが指名した僚哉バイトの予約状況を確認する。予約を割り振るのはオーナーの仕事だが僚哉にはあまり割り振りはいかない。なぜなら予約を僚哉君でお願いします(ハート)な客が多いからだ。

 予約をさばくのは主に俺、そしてもう一人の社員丹羽。時々オーナーの親戚桐生夫人、僚哉となる。

 小動物の手が止まりときおりチラチラと視線を送ってきているのでクリップボードに目をやるとプルプルふるえた字で書き終わっていることが確認できた。

 名前は三田桃香、15歳、9月12日生まれ、予算は三千円内。


「籠アクセは持ってるよね、石だけの予算で大丈夫?」


 桃香ちゃんは首をかしげてハテナをいっぱい飛ばしている。


「石籠、店頭に置いてるアクセサリーね。ああ水籠の方はないか・・・」

「みずぅ・・・?」

「石をね満月の夜に水に入れて浄化?鋭気を養う的な儀式的な何かなんだけど。そのためのアイテムかな?別にコップでもいいんだけどね。うちに置いてあるのはスタンド付きのでちょっとお高め」


 桃香ちゃんは予約用紙の隅に何か一生懸命書いている。


『キャンドルスタンドだと思ってました』


 声は出さないがキラキラした目でこちらを見ている。綺麗な文字で書いてあるのをみてコピー用紙を一枚カウンターに置いた。


「予約日なんだけど月・水・金の夕方以降か今週の土曜、来週の日曜なんだけどどこがいいかな?」

「ぅう・・・・」


 桃香ちゃんは可愛いうなり声をあげる。


『浅川さんが居ない日がいいです』

「あら・・・僚哉が非モテなの初だな・・・」


 オーナーに割り振り担当されたのは浅川僚哉、コレ回避不可。


「ごめん、担当浅川僚哉に決定済みだわ・・・」


 みるみるうちにしょんぼりしてしまう桃香ちゃんを見て顔がほころんでしまうのは仕方ないことだろう。担当が俺だったときの客の落胆を何度も経験しているのだから。


「そぅ・・・で・・しゅか・・・」


 うん。カンダ。


「だ、大丈夫だよ。噛み付いたりしないし、基本優しいし・・・」


 腹黒いけど・・・・オーナーとその息子よりかはマシなイケメン青年、なはず・・・。ちっさい体がみるみる小さくなっていく気がする。


「やっと予約入れられたんだし、がんばろう?」


 ナニを?と自分でも思うが精一杯励ましてみたら、コックリと頷いてくれた。気が変わらないうちに明日水曜の夕方16時の予定を半ば強引に決めさせる。


「写真一枚とるね」


 パッシャ、と可愛らしく頬を染めた桃香ちゃんが映し出される。なかなか可愛らしい写真が取れたのだが本人はフリーズに入ってしまった。

 その隙に会員証の作成。ポイントカードにもなっているので商品購入の際には会員になっておくのをお勧めします。続いて予約カードの記入をして再起動を待つことになる。

 チリーン

 扉の開いた音がしてびくっと桃香ちゃんが動き瞬きを開始する。

 来店した客はふっとカウンターをみて突進してくる。


「僚哉さんで予約お願いしたいんですが」

「申し訳ありません、指名での予約は受けてませんので」


 あからさまにチッと舌打をする来客女性に危険信号を感じる。

 ささっと会員証と予約カードを桃香ちゃんに握らせる。


「次の来店をおまちしてますね」


 それを合図に桃香ちゃんはさっくりと逃げていったのだった。


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