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さよなら  作者: ゆり
8/29

8、絵里→クラブで

最近毎日ケンと過ごしてる。 大ちゃんと別れた事もあり、ケンとは堂々と街中で手を繋いで歩ける。

すごく幸せ・・・。

一個、悩みがあるけどね。

もちろん、それは茜の事。


茜は今、何をしてるんだろう。 元気なのかな?

毎日メールを送り、時々電話もする。 でも、一度も繋がったことがない。

ケンの事もメールでは謝ったけど、直接は言えてないし・・・

茜が絵里を避けるなら、絵里はできる事がない。 茜の悪い噂を聞くたびに、淋しさと悔しさが胸を痛めた。

そんなある日、絵里は結香に誘われてクラブに行く事になった。 結香の先輩が、結香を無理矢理クラブに呼び出したのだ。 一人じゃ行きたくないと言っている結香をほおっておけなかった。 いつも結香には助けてもらってる恩もあるし、もしかして茜に会えるかもしれない。

ケンに話すと、ケンは心配そうな顔をした。 そして、行けたらクラブに来ると言ってくれた。

結香と待ち合わせをし、クラブに入る。

あまりクラブに来ない結香や絵里にとってはつまらない場所だけど、みんな楽しそうに踊っている。

「茜もここにいる人みたいに毎日踊ってるのかなぁ・・・」

『今日の先輩、いろいろ詳しいから聞いてあげるよ』

「うん。ありがと。」

結香の付き添いのはずだったのに、絵里の茜調査を結香に付き添ってもらってる様になっていた。

そして先輩のいるVipRoomに着いた。 フロアとは違い、ゆっくりできそうな作りだった。

何人かの男女が結香に気付き、席をあけてくれる。 フカフカのソファーに結香と絵里は並んで座り、挨拶をした。 そして結香の先輩たちも挨拶してくれ、和やかなムードになった。

その時、先輩の一人の夏くんという人が気になる話をした。

『そーいえば、一週間くらい前に健吾と優がパクられたんだよ。

何か言いづらくて言えなかったんだけどさぁ。』

先輩たちがザワザワする。

結香も『あの健吾さん?』と驚いていた。 健吾さんという人は、このクラブの近くのバーで働いている人らしい。

絵里はそれより優という名前が引っ掛かった。

夏くんは話を続ける。

『綾とティアラ行ったら、健吾と優がもめ始めてさぁ。 祥さんも止めれなくて、暴れて看板壊したから警察にパクられちゃって。

健吾、一週間経っても出てこねーんだよ。 優はあれだから出れなくてもわかるけど。

しかも、健吾は女の為に優ともめたらしいんだよなぁ』

夏くんが話すとそこから話が広がり、その女は誰なのかって話になった。

『茜ってゆう女の子だよ。

知ってる?』

夏くんの質問に他の先輩が答える。

『茜って、ここによく来てた女だろ?

ちょージャンキーの。 俺も一回ヤッたし。

健吾とよく会ってたらしいけど、茜最近こないと思ったらまともになったんだなぁ』

「え?! もしかして茜って、笹原茜ですか?!」

絵里は思わず口をはさんだ。 夏くんが絵里の質問に答える。

『知ってるの?

名字は知らないけど、健吾と同じティアラってバーで働いてるよ。

細くて、可愛い子で、16、17歳くらいかな。

あ!そーいえば、口元にホクロあったかも?』

きっと、茜だ・・・

そして話題に出た優って人は、きっとケンの先輩の優だ。

絵里の中でバラバラだった事が、一つに繋がる。

「ティアラってバーに行きたいんですけど、場所教えてください!」

いてもたっても居られない。 結香も状況がわかったらしく、行って来なよと言ってくれた。

夏くんが一緒に行ってくれると言い、結香や先輩たちに謝りながら店を出た。

ティアラに向かう途中、夏くんといろいろ話す。 夏くんはケンとティアラで会った事があり、ケンが健吾の後輩で知り合いだと教えてくれた。 そして、絵里がケンの彼女だと言うと詳しく話をしてくれる。

茜が今はクスリをしてないと聞き、少し安心した。

『ここだよ』

夏くんがティアラと書いてある一軒の店のドアを指差した。

そしてドアを開けると、聞き覚えのある声がした。

「あ・・・」

声の主は、やっぱり茜だった。

茜は絵里に気付き、顔が凍り付いていた。

そして絵里の方へ来て

『久々だね。

ビックリした。 座ったら?』

と言い、絵里の裏にいた夏くんに気付き、挨拶をする。

夏くんとカウンターに座ると、茜がカウンターの中に入った。

『何飲むの?』

茜に聞かれ、オレンジジュースを頼んだ。 茜と真剣に話したいから今日はアルコールは飲みたくない。

そして夏くんは茜と絵里に気をきかせて、クラブに戻っていく。

少しの沈黙の後、茜が先に口を開いた。

『連絡しないでごめんね。』

「そんなことないっ・・・。 絵里が悪いから。

ほんとにごめんね!

ケンとは・・・」

『もう言わなくていいよ。

絵里を恨んだけどね。

もういいんだぁー。』

茜が笑い、そして言った。

『ケンより好きな人ができたの。』

恥ずかしそうに、はにかんでいる。 その笑顔は以前の茜の笑顔だった。

「好きな人って、どーゆう人なの?」

『うんとねぇ・・・。

優しい人・・・かなぁ。

健吾ってゆうんだけど、健吾のお陰で変われたの。

このバイトも紹介してくれて。 まともにバイトするのなんて久々だよー。』

茜が照れながら言う。

絵里は嬉しくなった。 さっき夏くんから聞いた健吾さんって人、みんながいい奴って言ってたし、茜の為に優とケンカしてくれた人だし。

でも逮捕されちゃってるし、どうなっちゃうんだろう・・・。

絵里はさっき夏くんたちに会った経緯と、健吾さんの話は聞いたと茜に話す。 茜は少し淋しそうな笑顔で絵里に笑った。

『バカだよね、茜なんかの為にさ・・・。 健吾は覚醒剤してたんだ。 だから、ばれてたら年少行くかもじゃん?

ほんとそれ考えたら申し訳なくって・・・。 健吾の親も何も知らないから何もできないし。

てゆーか、茜と健吾は体の関係はあったけど、付き合ってないし健吾の気持ちもわかんないし・・・。

頭の中、グチャグチャかも・・・。』

「そっかぁ・・・」

話しているうちに、絵里と茜のわだかまりはどんどん溶けていった。

そして、絵里は茜を苦しませた分、何か茜と健吾の為に協力したかった。

「絵里、今から健吾さんの友達や夏くんの所に行ってくる!

健吾さんの実家とか調べてくるよ!!」

『えっ?!ほんと??』

茜はパッと嬉しそうな顔をした。

『そうしてくれたら嬉しい! 彼女ってわけじゃないし、いろいろ聞かれると面倒だから誰にも言えなかったの。

店長は知ってると思うけど、聞き辛くて・・・』

絵里はまた電話すると茜に話し、ティアラを飛び出した。

ケンに電話をして今までの事を話すと、ケンも近くにいるから今から来ると言う。 ケンは優さんが捕まってる事を知っていて、だいたいの状況を聞いていた。

『今から俺も行って、夏さんたちに話すよ。

それのほうが早いだろ!

まぁ、俺が行かないと絵里に誰かが手を出しそうで心配だから、口実っちゃあ口実だけどな。』

そんな事を話してるうちに絵里はクラブに着いた。 ケンを待っていると、すぐケンの車がやってきた。 助手席には優さんと同い年で、優さんの親友という明さんという人が座っていた。

ケンと明さんと一緒にクラブに入り、みんなの所に戻ると『おー、久々』とか『ビックリした』とかみんな挨拶をし合っている。

結香もまだ残っていて、ケンと『久々だね』と会話していた。

一通り挨拶が終わると話は本題に戻り、明さんは口を開いた。

『一週間前、優と健吾がパクられたって聞いたんですけど、その後に優の親から連絡きたんですよ。

優が女の子をレイプしたり監禁するのを繰り返していたらしいけど、明くんは関係あるのって聞かれて・・・。

みんな知ってると思うんすけど、俺はそーゆーのは嫌いじゃないっすか? だから知らない振りしてたんですよ。 正志や伸が一緒にレイプとかしてたんですけど、結局優が話してどんどんパクられて。

優の親は離婚してて、優の事も嫌ってるんですよ。 だから親も優がパクられても知らねーって感じで、俺が聞いても面会も行かないからわかってないんすよ。

だから健吾の家に行って・・・あ、健吾の親ってスナックしてるじゃないっすか?それでスナック行ったんですけど、健吾はたぶん10日間で出れるらしいって言ってましたよ。

優は余罪だらけでしばらく無理らしいですけど。』

みんな明さんの話を聞き、複雑な顔をしていた。

『優、変わったよな。』

結香の先輩が口を開いた。

明は続けた。

『優は幼い時に親が離婚して、仕方なく母親に引き取られたんです。

でも母親は毎晩若い男を連れ込んだり優に虐待を繰り返していたらしくて。 小さな頃から目の前で母親はいろんな男とセックスを繰り返してて、優は女性不信になりながら育ったんです。

そして、唯一愛せた幼なじみの女と付き合ったんですけど、その女は次第に覚醒剤に溺れて優を捨てて・・・。

それから優は『女はキモイ。信用しねーよ。ヤルだけだな。』とよく言ってたんです。 そんな事ないって言っても優はレイプや女まわしたりするのを繰り返して。

正志に聞いたんですけど、監禁した女にも、必ず覚醒剤を打ってたらしいです。 母親や愛せた女が、セックスと覚醒剤を愛した。 それがトラウマなんじゃないかって正志が言ってました。

だから優は男にはいい奴だし、淋しい奴なんですよ。』

明さんは、言いおわると下をむいてしまった。

優も夏くんも、もちろん絵里もみんな知らなかった話だった。長い沈黙が起きる。

優さんにそんな過去があったなんて・・・。

確かに茜たちにした事は許される事じゃない。 でも、可哀想だった。

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