表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さよなら  作者: ゆり
6/29

茜→クスリの恐怖

最近、つまらない。

今日もクラブで踊りながらぼやく。

クラブは休み前は賑わって楽しいけど、平日はいつも同じ顔。 そのメンツの中でもまぁまぁな男とはヤッちゃってるし、茜が遊んでる女ってバレてるから最近あんまり相手にされないし・・・。

こんな堕落した生活を始めてすでに一ヵ月半が経っていた。 茜はクスリで体重がかなり落ちて体はガリガリ。 昔の茜の姿は見る影もなくなってしまった。

『おー。茜!』

健吾が近づいてくる。 健吾とは初めて会った日以来、週の半分位は一緒に過ごしていた。 彼氏ではないけど会えばセックスをしている。 つまり、セックスフレンドの関係だった。

「ねぇ、ケン。

最近つまんなくない?」

健吾に尋ねる。

『そりゃあ、つまんなくなるだろ。

毎日クラブばっかり来てるなんて暇人だなぁ。

友達と遊び行ったりしないの?』

友達・・・。

そんなの、もぅとっくに居ない。 みんな茜にあきれて離れていった。 毎日のように絵里から心配するメールは届くけど、あんな女はもう友達じゃない。

「いないよ。そんなの。

しいて言えば、サヤカやクラブ来てる人たちくらいじゃない?」

『あー、ジャンキー集団ね。』

健吾が淋しそうに笑う。

哀れに思われた気がして、むなしかった。

最近近くにいる人間はジャンキーばかりだ。 茜がそうだから仕方ないけど、会えばクラブかクスリの話題。

「前は楽しかったなぁ。

飲みに行ったりドライブしたり。

クラブより楽しかったかも・・・」

昔を思いだし、いきなり涙が溢れた。

健吾も驚いていたけど、それ以上に自分自身にビックリした。

最近、涙なんて忘れてた。

『おまえさぁ、クスリとかやめねーの?

俺が勧めたから言える立場じゃないけどさ。

最近の茜、おかしいぞ。』

健吾が茜の頭をなでる。

『俺もクスリやめるつもり。

元々クラブ行く日だけしかしなかったけど。 ほとんど週末だけ。

平日は仕事あるし友達と飲みに行ったり、メリハリつけてるつもりだったけどさぁ、もう止める。

茜もそうしろよ。』

驚いた。 健吾が止めるなんて・・・

そして、少しうらやましく、かっこよく見えた。

いつもサヤカの友達のプッシャー(売人)から安くクスリを買っているけど、そろそろ貯金もなくなってきた。

毎日セックスするのも、一人でいたくないって理由もあるが、クスリをタダでもらえるからって理由もある。

茜はクスリ中心の生活。 そんなすさんだ生活に嫌気がないといったら嘘になる。

まともにバイトでもして普通に遊んで、まともな生活に戻りたいとゆう気持ちもある。

でも、もう引き返せないとゆう諦めの気持ちも強い。

『俺、バーで働いてるじゃん?

茜もうちで働かないか?

人手たりないんだよ』

「やってみたいかも」

茜は速答した。

変われるキッカケがあるなら、変わってみたかった。

昔の自分が恋しかった。

その日はそのままクラブを出て、健吾の働くバーに遊びに行くことにした。

バーはクラブから歩いて5分くらいの距離にあり、《ティアラ》という名前だった。

『おつかれさまでーす』

健吾がそう言いながらドアを開ける。

中は十畳ほどのスペースで、カウンターにいる30歳くらいの若造りな男がカクテルを作っていた。

茜たちは空いているカウンター席に座り、ドリンクを頼む。

『祥さん、この子面接してくださいよー』

健吾がカウンターの男に話す。 祥と呼ばれた男がこの店の店長らしい。

『人手たりないから大歓迎だよ!

でも、いくつなの?』

祥は茜の顔をじっくり見て言った。 さっき健吾に『深夜は18歳未満の勤務はムリだから、歳ごまかせよ』と言われたので、18歳ですと嘘をつく。

それから簡単な質問をされ、あっとゆうまに採用になった。

履歴書を書き、平日の夜のシフトを希望する。 健吾と同じシフトだ。

『じゃあ、明日からね』

祥にそう言われ、健吾とティアラを出る。

「あっとゆうまにプーからフリーターに昇格したよ!」

笑いながら健吾に言うと、健吾も喜んでくれた。

バイトが決まり、思っていた以上に茜自身も喜んだ。

そして健吾の一人暮らしのマンションに向かい、コンビニで買った弁当と、就職祝いのケーキを食べる。

「抜けてきちゃったなぁ。今、入れたら明日仕事キツイよね?

どうしよ・・・」

茜はバッグからタマを出す。 クスリが抜けてくるとだるくなり、またしたくなる。

でも、せっかくバイトも決まったし、変わろうと決意したばかりだ。

『やめろよ!

寝れなくなるし、寝ないと明日キツイぞ。

ジャンキーだとろくに働けないし、頑張れよ!』

健吾は茜の手からタマを取り上げる。

「あっ・・・」

取り返したくなった。

でも我慢する。

今日、健吾のお陰で変われる機会がきた。 今を逃したらまた同じ生活・・・。 クラブ漬けの生活なんて長くできないことはわかっている。 茜はそこまでバカじゃなかった。

しかし、体は敏感に反応した。 手足に汗がにじむ。 体が震える。

あぁ、クスリが欲しい・・・

健吾と話しても、弁当食べていても、頭の中ではクスリでいっぱいだ。

『・・・おい?茜?

聞いてるの?』

健吾に指摘される。

「ダメなの・・・。

クスリ、欲しい。

さっきのタマ、返して」

健吾は黙っていた。

そして、健吾は弁当を食べるのを止め、箸を置いた。

そして、意外な名前を出した。

『茜、サヤカと知り合いだよな?

最近連絡取れないだろ?』

「??」

そう言えば、サヤカとはここ一週間会ってなかった。 でも、なんでそんな話?

『茜がショック受けると思うから言えなかったけど、サヤカ死んだって。』

「はぁ?!嘘でしょ?」

ビックリして持っていた箸を落とした。

嘘、嘘、ぜったい嘘!

サヤカは一週間前は普通に元気そうだった。

一緒にタマ入れて、一緒に踊った。 そして、いつものようにクラブ前のコンビニで別れた。

『信じられないだろ?

俺もだよ。 サヤカとはよくクラブで話したし。

サヤカの彼氏、ティアラの常連で、おととい来たんだ。

すげえ落ちてて・・・。

サヤカが死んだって言ったんだ。

葬式行って、火葬場まで行って、骨拾おうとしたら・・・』

そこまで言って、健吾はうつむいて黙る。

そしてタバコに火をつけ、ふぅーっと煙を吐いた。

茜はあまりの衝撃に、固まってしまって声も出ない・・・。

まさか・・・あんなに元気だったサヤカが・・・

『骨、なかったって。

てゆーか、拾えなかったみたい。』

「・・・どーゆうことなの?」

『骨がスカスカになってて、焼いたら骨も灰になってたって・・・。

サヤカ、昔からシンナーやクスリやってただろ?』

確かにサヤカの地元の子から、聞いたことがあった。

中学からガスやシンナーに手を出して、すごかったって・・・。

「サヤカ、何で死んだの・・・」

手がプルプル震える。

『あいつキマってて・・・訳わかんなくなって、車道に飛び出したんだって。

それで車にひかれて・・・。

即死だったらしい。』

「そんな・・・」

頭がパニックになって、喉がビュービュー鳴った。 咳が止まらない。

苦しい・・・

息ができない・・・

「ゲホッ。

ゲホッ・・・オエッ」

吐き気と咳と涙と鼻水が一気に襲ってきた。

「苦し・・・ゲホッ」

『だ、大丈夫か?!

過呼吸だろ?!』

健吾は弁当を買った時のコンビニ袋を茜に渡し、これを口にあてて袋の空気を吸えといった。

しばらくして呼吸が整ってくる。

『大丈夫か?

精神的に不安定な時や鬱病だったりすると、ショックな事起きたら過呼吸になるらしいぞ。

もしかして茜、精神的な病気あるのか??

だからあんなにクスリにはまって抜けれないのか?』

健吾が心配そうに茜を見る。

そして、涙と鼻水でボロボロの茜の顔をティッシュで拭ってくれる。

「あたし・・・。

骨なくなったり、死ぬの嫌っ! 恐い・・・。

ケン、茜にあぶるならシャブも体に悪くないって言ったじゃん!

嘘だったの?!」

パニックになった茜は健吾を責めた。

そして、何も知らずにクスリを常用した自分の無知にくやしくなり、健吾にやつあたりをする。

『ごめん・・・』

「ひどい!!」

健吾の頬を叩いた。

茜は号泣しながら健吾を責め続ける。

恐かった。 誰かのせいにしないと死の恐怖に自分までのまれていきそうで・・・。

その間、健吾はひたすら茜に謝った。

そして、健吾は言った。

『最初はただのバカ女だと思って、クスリとか色々やらせて都合いい女にしてた。

それは、ほんとごめん。

でも、茜が毎晩クラブでクスリして変わっていく姿見て、罪悪感わいたんだ。

サヤカが死んだ話聞いて、他人事じゃないと思って・・・。

茜が死んだらどうしようと思った。

茜、本気で一緒にクスリ止めないか??』

茜は何も答えなかった。

そして健吾に背を向け、ベッドに入る。

布団を頭までかぶり、必死にクスリをやりたい気持ちを押さえる。

そして、そのまま茜は眠りについた・・・

翌朝目が覚めると、隣に健吾はいなかった。 カーテンを開けると朝のまぶしい日差しが暗い部屋に差し込む。

「まぶしっ・・・」

思わず顔をしかめた。

でも、嫌じゃなかった。

いつもクラブで遊んで夜を明かし、外に出ると朝日が昇っていた。 あの日差しは夢から現実へ戻されたようで、すごく嫌だった。

でも久々に夜に寝て、朝日をあびて起きて、今日はすがすがしい。

寝起きのタバコを一服し、部屋の鏡で自分の顔を見る。

鏡の中には、青白く痩せこけ、ボロボロのメイクをした女がいた。

メイクを落とし、きれいにメイクをし直す。 最初よくしていた厚化粧ではなくて、薄くファンデを塗ってナチュラルメイクをする。

一通りメイクが終わると携帯が鳴った。 健吾だ。

昨日の記憶がよみがえり、少し気まずくなった。

「・・・もしもし?」

『起きたか?

俺さぁ、今仲間とスーパーいるんだよ!』

「は??スーパー??」

健吾にスーパーは似合わなかった。

『これから真冬のバーベキューだから!気分転換になるだろ? 用意しとけよ!!』

「・・・はい」

よくわからないまま返事をして電話を切る。 そして、このバーベキューも健吾が茜の為に考えてくれだって気付いて、胸がポカポカ暖かくなる・・・。

携帯のディスプレイには、新着メールの表示がでていた。 きっと絵里だ。

絵里は毎朝必ずメールをしてきた。

『おはよう。最近体調はどう?無理してないかな?

茜に会って話したい。絵里は茜とこれからも友達でいたいよ。

裏切ったくせに勝手だって思うだろうけど、本音なの。連絡まってます。』

そうメールで入っている。

複雑な気持ちだった。 一ヵ月以上、毎日メールを送ってくれる絵里の気持ちもわかる。 でも、茜はそれですぐ許せる程、心が広くなかった。

メールを閉じ、髪をセットする。 クラブ以外に遊びに行くのは久々だった。 用意が終わってくるにつれ、次第に心が弾む。

そして健吾が迎えにくる頃には待ちくたびれていた。

バーベキューは楽しかった。 茜と健吾と健吾の友人カップル二組の計六人で、車で一時間くらいの河原へ行った。 寒いから豚汁を作り、鉄板焼をする。

料理なんてした事がなかったから、茜の切った野菜は不揃いで不恰好だった。でも、健吾や友人たちのカップルはおいしいと喜んでくれた。 茜も素直に嬉しく思えた。

河原にいる時、茜はクスリを忘れる時間が長かった。 健吾が考えてくれた計画に、感謝した。

そして健吾と茜のバイトの時間が近付き、二人で先に帰る。 車内には健吾の好きなR&Bの曲が流れている。

『茜、気まずくなかった?楽しめた?』

健吾が先に口を開いた。

「うん、ありがと」

茜は自然に触れて、素直になれている気がした。

「昨日はごめんね。

パニックになって・・・。

クスリのキッカケはケンでも、はまったのは茜が弱かったからなのに。

ケンのせいにしてごめん。

つらかったよね・・・」

『てゆーか、俺が悪いから。ほんとごめんな。

罪滅ぼしにはならないかもしれないけど、茜が立ち直るまで一緒に頑張りたいから。』

健吾は優しい人だった。 昨日の夜まで、健吾はヤリチンで顔だけの男だと思っていた。

でも違った。 クスリは人格まで変えていたんだ。

帰り道はすいていて、あと少しで駅前に着く。 ティアラまで、あと少し。

「あっ・・・」

赤信号で止まった時、見覚えのある車が横に並んで止まった・・・


※ 作者のゆりです。 誤字や改行のミスが多くてすいません。 葉月さん、コメント読みました! ありがとうございます。 ちなみに小説書くのは初めてです。 読んでくれた方、コメントいただけたら嬉しい!ので、良かったら書いてください。 みなさん、よんでくれてありがとうっ★★★

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ