26、茜→引っ越して
健吾との生活にも慣れ、茜は充実した毎日を送っている。
お金はないから質素な生活。
でも、目が覚めると隣に愛する人の寝顔があるというのは、これ以上ない幸せ・・・。
今朝、ワイドショーを見ていたら『今日は公立高校の卒業式ですね』と言っていた。
外を見ると、化粧のケバいおばさま達がたくさん外を歩いている。 でも、みんな幸せそうな顔。
自分が幸せだと、他人の幸せも素直に喜べる。
そしてワイドショーを見おわった頃、絵里から着信がきた。
「もしもしー」
『茜?
いきなり電話してごめんね!健吾さんとラブラブ中だった?』
絵里がからかってくる。
最近何か吹っ切れたのか、笑顔やジョークが増えた。
「寝てるよ。今日、卒業式らしいね。」
『そぉ。卒業式。』
「てゆうことは、ケンは明日から東京だよね??」
そおいえば昨日、祥さんが明日はティアラで貸し切りの送別会があると言っていた。 もしかして、ケンの事かも・・・。
絵里と会話しながら健吾の手帳を開く。
《23時〜 ケン》
今日の日付にはそう書いてあった。
「絵里はケンとこのままでいいの?
後悔しないの?」
絵里がだまる。
「挨拶くらいしたら?」
『したいけど・・・。
今さらじゃない?』
戸惑うような絵里の声。
「とりあえず話したいから、今日ティアラに来てよ! 夜中の12時くらいまでには絶対に来て!」
茜は強引に絵里と約束を作った。 もちろん絵里に指定した時間は、ティアラにケンがいる。
二人を逢わせたい。
このまま未練を残して終わってほしくなかった。