21、茜→病院へ
あれから健吾と幸せな一晩を過ごした。
今まで感じた何よりも、心が幸せで満たされた感覚・・・。
二人は朝方、抱き合って眠りについた―――
『やばい!起きろ!』
健吾に体をグラグラ揺らされて目が覚めた。
「??」
『もう12時!』
「嘘?!やだーっ!」
急いで飛び起きた。
ホテルは10時チェックアウトだから延長だし、今日はいろいろお買物したいから早起き予定だったのに・・・。
夢のような一晩の余韻を楽しむ間もなく、二人はドタバタと用意をする。
そしてホテルを出て、二人は渋谷に向かった。
渋谷はカップルやグループで、すごい人の数だ。
健吾と迷子にならないように手を強くにぎる。
『指輪、痛い。』
「ご、ごめん!」
茜の指輪のダイヤが健吾の指に当たってしまった。
茜の薬指には健吾にもらった指輪が輝いている。
そして、健吾の手首には茜が送ったシルバーのブレスレット。 茜がティアラの初給料で、健吾にプレゼントした物だ。
今日、服やアクセサリーを見る予定だった。 しかし昨日話し合い、服は最低限買う事にした。
そして、残ったお金を家具に回すことになった。
二人で住むための家具・・・。
「新婚さんみたいだね。」
『だよな。
てゆーか、四月には新婚さんだから』
健吾は四月に二十歳になる。 あと4ヵ月もすれば、結婚・・・。
子供のママゴトだと言われてしまうかもしれないけど、茜と健吾は本気だ。
まだ16年しか生きてないけど、これから10年先も20年先も健吾以上の男になんて逢えない。
出会うのが少し早かっただけなの。 若くても健吾がいればやっていける。 健吾は茜にとって運命の相手だって確信してる。
それから茜はお目当てのショップで服を買い、健吾も原宿は断念したけど服を買った。
そして二人はインテリアショップを探す。でも、なかなかインテリアショップが見つからない。
「足が痛いかも・・・」
慣れない靴をはいているから靴ずれができてしまった。
休憩するために、近くにあるマックに入る。
タバコを吸い、ジュースを飲む。
「疲れたねー。」
『さすがに三時間も服見るのはキツイ。
茜が二時間くらい見てたけど。 俺、五分で決めたし。
家具、地元で見るか?』
健吾は早く車に戻りたそうにしている。 普段車ばかりで歩く事にあまり慣れない健吾に、女の買い物はキツかったみたいだった。
「そだね。」
ほんとはもう少し見たかったけど、健吾のヘトヘトな顔を見たら勘弁してあげようかなって思う。
そして二人は車に向かい、地元へと帰った。
地元へ着く頃には、すでに日が暮れていた。
「そーいえば、絵里とケンは仲直りしたのかなぁー。」
『どーなんだろうな。
連絡してみろよ。』
あれから絵里から連絡はない。
茜は絵里の携帯に電話をする。
・・・。
圏外とゆうアナウンスが流れる。
少し嫌な予感がした。
絵里の家にも電話をすると、絵里の父親が出た。
『絵里、入院しているんですよ』
父親はそう言った。
頭から血の気が引いていく―――。
健吾に病院の名前を伝え、Uターンをして絵里のもとへ急いだ。