20、絵里→ケンの家
『絵里ちゃん、どうしたの?』
ケンの部屋の前で固まっていた絵里に、ケンの母が話しかけてきた。
そして部屋のドアを開き、ケンに声をかけている。
『ケン、絵里ちゃん来てるわよ』
そして絵里の背中を軽く押して、絵里は少しふらつきながら部屋の中に入った。
ケンの母は絵里に『ゆっくりしていってね』と声を掛け、廊下を歩いていってしまった。
ケンと絵里は、どちらからも口を開かない。
沈黙が流れる・・・。
その様子を見兼ねたのか、明さんが口を開いた。
『え、絵里ちゃん、
メリークリスマスだねぇ。』
「・・・。そうですね。」
『あ、あのさぁ、
俺は邪魔だよね?か、帰るねー。
ケン、またな!』
立ち上がり逃げ出すように帰ろうとする明さんを、ケンが『待ってくださいよ!ちょっと!』と、止める。
そして二人は絵里を部屋に残して出ていってしまった。
それから少しして、ケンが一人で部屋に戻ってきた。 気まずそうに俯いて、タバコに火をつける。
絵里はだんだんイライラしてきた。
「何か言えば?
言うこと、たくさんあるでしょ?」
冷たく言い放った。
ケンは一度絵里の目を見て、また下を向く。
そして話し始めた。
絵里を家に残して明と女の子二人と飲んだ事、それから絵里がいなくなって必死に探した話・・・
ケンは一緒にいた女とは何もないと言った。
そして結香が見た時は、明たちが帰った後だよと絵里に話す。 『気まずいから残された女と二人で一杯飲んでただけなんだ』と。
・・・絵里は信用できなかった。
ケンはもてるし、かっこいい。 だから、いつ浮気されるか不安になっていた。
絵里は疑いの目でケンを見る。
その時、ケンがキレた―――。
『そんなに気になるならXXに問い合わせろよ!
信用できねぇって、前に別れた時と一緒だろ?!
それで、また浮気すんのかよ! おまえ、変わんねーよな!!』
「はぁ?!
逆ギレするの! 意味わかんない!!
もう帰る!!!」
絵里はバッグをつかみ、立ち上がった。
ケンが絵里の腕を掴み、『待てよ!』と言う。
もう自分が止められない―――
「嫌!!」
『だから、素直に聞けよ! 座れよ!!』
帰ろうとする絵里を無理矢理座らせようとするケン・・・
二人はもみ合いになった。
その時、絵里のお腹に激痛が走った―――
「痛っ・・・」
絵里は床に座り込んだ。
お腹がズキズキ痛い。
『だ、大丈夫か?!』
ただ事じゃない様子の絵里に、ケンはうろたえている。
「・・・き、救急車。
早く・・・早く呼んで!
赤ちゃんが―――」
『どうゆう事だよ!?
絵里?!』
「・・・」
膣から生理のように血が溢れてくる。
お腹の痛みも強くなる・・・。
それからケンの家に救急車が到着し、絵里は病院に運ばれた。
そして絵里は手術室に運ばれてゆく・・・。