11、茜→クリスタル
『・・・!
・・・て!
・・きて!
茜起きてぇー』
「う・・・うん」
絵里にトントンと肩を叩かれて起こされた。
絵里の部屋の中はもう明るくなっていて、時計を見るとすでに正午近くなっている。
昨日、健吾から連絡がきた。 健吾が逮捕されてから不安であまり眠れなかったから、昨晩は久々にぐっすり眠れた。
少し寝呆けた頭をスッキリさせたくて、ベッドから起き上がりタバコに火をつける。
「んーーっ。
よく眠れたぁ!」
『だねぇ。
全然起きなかったし。
はい、これどうぞ。』
絵里が笑いながら茜の携帯を渡してきた。
着信とメールがきている。
絵里がニヤニヤしてるところを見ると、健吾からの着信やメールっぽかった。
見てみると、案の定健吾から。
思わず茜もニヤニヤしてしまう。
《今日、三時に駅前な!》
茜も返信する。
《おはよ!三時に待ってるね!》
メールを打ちながら、胸がキューって痛んだ。
昨日までの一週間近く、健吾と連絡できなくてつらかった。
こうやってメールしたり、声が聞けたり、会えるのはすごく幸せな事なんだなぁって感じる。
そして、今日は健吾に伝えようと思う。
今の健吾への想い・・・
ありがとうという言葉と、好きですって告白したい。
『今日ねぇ、ケンに会う前に指輪買いに行くんだぁー。
もうすぐクリスマスでしょ? ケンが絵里にプレゼントしてくれた指輪と同じ指輪を探して、ペアリングにするのっ!』
今日は土曜日だから、絵里とケンも学校が休みで会う約束をしているようだった。
そういえば、もうクリスマスだ。
茜も絵里のように、幸せなクリスマスを迎えたい・・・。
少し早めに絵里の家を出て、駅前に向かう。 北風が冷たくて、コートの衿を立てて首を隠す。
バスに乗って駅前で降りるとまだ2時半だった。
「少し早かったかな」
そう思いながら、デパートに入って時間を潰す。 デパートの中もクリスマスムード一色だった。
そして茜はデパート内をプラプラ歩きながら健吾の事を考える。
少し緊張してきた。
振られるのが恐くなった。 振られたら、ティアラでも働きづらくなる。 今までのように会えなくなるかもしれない・・・。
そんな時、水晶売場に目が行った。 いろんな意味があるクリスタルが並んでいた。 恋愛成就の意味があるクリスタルも売っている。
効き目があるかどうか分からないけど、恋愛成就のピンクのクリスタルの数珠を二つ買った。 一つは自分の腕につけ、もう一つは絵里にあげる為に包装してもらう。
時計を見ると、あと10分で待ち合わせの三時だった。
早足で駅前に向かう。