10、出所
健吾の親が言っていた通り、あれからすぐ健吾は出所してきた。
優は事情聴取されている時、健吾が覚醒剤をしている事を黙っていた。 それがばれていたら、こんなに早くは出れなかっただろう。
そして健吾が出所した日、優や正志や伸は勾留延長になり、今も留置場に残って余罪を問われている。
『茜も被害届けを出しなよ』と、何人かの人に茜は言われた。
絵里に優の生い立ちを聞いて同情したのと、明や優の友人に謝罪されて、茜は悩んだ。
明たちは関係ないのに、茜に土下座して謝った。 そして、『勝手なのはわかるけど、被害届けを出さないでほしいんだ。優たちにも茜ちゃんが納得いくまで反省させるから、お願いします』と、泣いた。
優は他の監禁された女の子から被害届けが出されていて、ただでさえ罪に問われている。 茜も被害届けを出すと、もっと罪が重くなる。
明たちは泣きながら何度も頭をさげる。
その姿が、茜を心配してくれていた絵里の姿とだぶって見えた。
『優が釈放されてから、また同じように繰り返してしまったら、その時に被害届けを出します』と茜は言った。
茜が健吾や絵里で変われたように、優も変われるのだろうか・・・。
茜は、明たちの気持ちを思うと優に変わってほしいと心底思っていた。
そして、健吾は出所して実家に親と向かっている中、最初に茜にメールをした。
《ただいま!》
そして、すぐに茜から電話がきた。 茜の声は涙ぐみ『よかった、よかった』と茜は繰り返した。
そして、二人は翌日会うことを約束した。
その時、茜は絵里と一緒にいた。 絵里は健吾からきたメールを見て、茜と一緒に泣いていた。
絵里も茜に『よかったね。ほんとによかったね。』って、繰り返した。
そして、茜は絵里の家に泊まり、一つのベッドで二人はくっついて眠りについた。