魔法少女スタン☆ハンセン:闘魂マジカル乱入編
テキサスの荒野に現れた謎の魔獣。
その脅威から世界を守るため、聖なるカウボーイハットが選んだのは――
なんと、“超獣”スタン☆ハンセン!
「テキサスの魂よ! 私を魔法少女に変えてくれッ!!」
掛け声と共に荒野にリングが競り上がり、観客の大歓声が魔力となる。
華麗に変身したハンセンは、フリル付きのピンクドレスに身を包む。
手に輝くのは魔法ラリアット!
「いくぞォォォ!! ウィィィィィ!!!」
愛と友情のラリアットで魔獣を次々と浄化するスタン子。
だが、その瞬間――
荒野の空が突如暗転。
鎖の音と共に観客の悲鳴が響き渡る。
実況魔法使い
「な、なんということだ! あれは……ブロディカだ!!!」
解説魔導士
「鎖を振り回してるぞ! これは試合どころかリング崩壊の危機だ!」
スタン子
「やめなさい! お客さんに当たるでしょ!!」
ブロディカ
「知るかァ! リングは血で染めるもんだァァ!!!」
ドガァァァンッ!!
鎖がロープを打ち砕き、火花が飛ぶ。
その時――
カンカンカン!!
「待ったァァァァァァ!!!」
場外から一人の男が現れる。
黒いトランクス、鋭い眼光、燃える闘魂。
「元気ですかーーッ!!!」
観客
「いぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉぉ!!!」
――“アントニ夫・イノ鬼”、乱入。
イノ鬼はリングに飛び込み、スタン子の肩を叩く。
「お前……魔法少女だとか関係ねぇだろうが! 闘魂があるなら立て!」
スタン子
「は、はいっ!!」
鎖を振り下ろすブロディカ。
しかしイノ鬼は身をかわし、間髪入れず延髄斬り!!!
ブロディカ
「ガハッ!!!」
観客
「延髄ぎりぃぃぃぃぃぃ!!!」
スタン子(心の声)
「な、なんだこの安心感……魔法より効いてる……!」
イノ鬼とスタン子はアイコンタクトを交わす。
「……行くぞ」
「はいっ、師匠!!」
二人は同時にロープへ走り出す。
イノ鬼の腕には真紅のオーラ、
スタン子のステッキには虹色の魔法陣――
観客総立ち。
「ま、まさか……合体奥義だァァァ!!」
「闘魂――!!」
「マジカル――☆!!」
「ラリアァァァァァァトォォォ!!!!!」」
ズガァァァァァァァンッッッ!!!
赤と虹の衝撃が重なり、ブロディカを宙へ吹き飛ばす。
鎖は砕け散り、リング全体が閃光に包まれた。
実況魔導師
「出たァァァ!! 奇跡の合体奥義! 闘魂マジカル☆ラリアットォォォ!!!」
奇跡のフュージョンを浴びたブロディカは、リング中央で完全に失神した。
会場全体が大歓声に包まれる――はずだった。
だが。
スタン子はなお、立ち上がり、魔法ラリアットを再び構える。
その目には危うい光。
観客の声が悲鳴に変わる。
「もうやめて……! 倒れてる相手に……!」
「これ以上は……デスマッチでも反則だ!!」
「フフ……まだ終わってないッ! 魔法少女に情けは無用だァァ!!!」
スタン子がドレスの裾を翻し、再度助走を取ろうとしたその瞬間――
イノ鬼が立ちはだかる。
「……やめておけ、スタン子!!!」
観客
「!?!?!?」
イノ鬼の目は真剣そのもの。
リングのスポットライトが彼の汗を照らす。
「これ以上の攻撃は……試合じゃねぇ!!!」
「師匠!? なぜ止めるのですかッ!!!」
「わからんのか……! これ以上は……」
(観客、息を呑む)
「……著作権が絡むッ!!!」
「!?!?!?!?!?!?!?」
「訴えられるぞォォォ!!!」
カンカンカン!!!
レフェリーが慌ててゴングを鳴らす。
実況魔導師が絶叫する。
「で、出たァァァ!! プロレス史上初ッ! “法務リスクによる試合終了”だァァァ!!!」
観客席では誰かが泣き叫んだ。
「俺たちは……二度と見られないのか!? 追撃ラリアットを……!!」
イノ鬼はマイクを取り、汗を飛ばしながら叫ぶ。
「いいか! 元気があれば! 戦える!!
だが――版権がなければ! 何もできねぇ!!!」
スタン子はラリアットを下ろし、悔し涙を流した。
「……わかりました師匠……法律に…魔法をつかうのは諦めます」
ブロディカ乱入……弁護士じゃなくてよかった。
※この作品はフィクションです。登場する人物・団体名はすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。