第6章:労働組合、設立!
「……今、ここに宣言する。この異世界に、労働組合を設立します!」
澪の声がリシュタリアの広場に響き渡った。
彼女の隣には、頼もしさを増したトルテ。
そして、ドラゴン運送から脱出した元社員たちが新たな仲間として集まっている。
その中には、元・受付嬢カリンの姿も。
「“勇気ある告発者に再就職の光を”――いいスローガンですね、ミオさん!」
「でしょ?時代は“守られる勇気”よ」
組合名は――『ユグドラシア労働者連合(ULA)』。
旗印は、黒と白が交錯する「労働と希望の杖」 ジルがデザインに悩んだ末、ラフ案として提出した「湯呑と座布団マーク」は惜しくも却下された。
組合には、次の3つの誓約が掲げられた。
1. 自己犠牲を美徳にしない
2. “やりがい搾取”に魔法でNOを
3. ブラックには、団結と魔法で立ち向かう!
「素敵すぎて涙出てきました……!」
だが――設立早々、ギルド中央局からお達しが下る。
> 「民間で勝手に“組織”作ったら違法。すぐに解散するように」
「来たな……反発第一号!」
組合を潰しに来たのは、ギルド総務部“統制課”の課長代理・フリード・バイン。
淡々とした口調、徹底された服装、指先にまで宿る残業臭。
「システムを乱す存在は、秩序の敵です」 と言い放つ彼もまた、“ブラックに仕え、ブラックを維持する”悲しき歯車だった。
「つまりあなたは、“働き方を変えたくない側”ですか」
「働き方は、体制に与えられるものだ」
そんなフリードに対し、澪は迷わず魔法を展開する――《書類反撃》
一斉に飛び交う“申請書”と“規約の抜け道” その中に混ざる「リフレッシュ休暇申請(96年分)」
さすがにフリードも額から冷や汗をにじませる。
「くっ……手続き、が、追いつかない……!」
「これが“法の穴”を突いた是正措置よ。ブラックには、合法的反撃を」
こうして、ユグドラシアの地に初の“公認労働組合”が誕生する。
街には、こんなポスターが貼られた。
> “あなたの魔力は、仕事のためだけじゃない”
澪の元には、各地から手紙が届き始める。
「私も組合に入りたい」
「次はウチの村にも来てほしい」
火は――確かに灯った。
「次は……この流れ、もっと大きくするよ」
異世界に“ブラックを終わらせるムーブメント”が始まろうとしていた。