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6 話し合いは大切です

もぐもぐとお互い食べるのに夢中になっていたが俺はこっそり向かいに座る彼女を盗み見た。


真っ白で透き通るような肌と銀の髪。

目は燃えるように赤いのになぜか冴えたとした印象を与える。

特徴的な外見が印象的すぎて気づきにくいが顔はかなりの美人だ。

切れ長の目にすっとした鼻。化粧はしていないが、肌が白いせいで唇は口紅を塗ったように艶やかにみえる。


表情から感情を読むのは難しいが、今は食事が美味しいのか少しうれしそうに見える。





ひと息ついたところで今日中に話し合わないといけないことを切り出した。


彼女は一体何の店を出すのか



大事なことなのにそこを聞かずに契約した自分も大概だ。


よくよく聞くと彼女は薬菓の資格を持っていて薬菓を売って生計を立てたいとのことだった。

あまり一般的ではないから始めは普通の菓子も作りながらやる予定とのこと。


確かにあまり聞いたことのない職業だ。



なるほど希少性がありそうだ。


彼女が

「あなたはお店で何をするの?」

と問いかけてきた。



うーんと、考えてカイは腰にぶら下げていた小さなポーチから手のひらサイズの球がたくさんついたものを出した。


彼女がそれは何だというふうに赤い瞳を向ける。

声に出せば良いのにと思いながら


あ、今気づいたけれどまつ毛まで銀色だ。




「これは故郷では一般的な演算器です。これで無駄を省いて店の売り上げを上げる方法を計算できる」

と、シャカシャカと演算器を振って見せる。


「あと、売り上げ計算、無理のない事業計画、市場調査、接客、配達などなど厨房仕事以外はやれると思うよ」


一瞬だが彼女の赤い瞳にキラキラと表現したくなるような表情が浮かんだ、がすぐ消えた。



「あと、大事なことだから言っておくけれど、思ったことは隠さないで声に出してほしい。これから一緒にやっていくにあたって意思の疎通は大事だよ。揉め事があっても話し合いで解決していきたい」


それを、聞いた彼女はちょっとしゅんとなって言った。



今までこの容姿のせいで周りから迫害されたり騙されたり、ろくな人付き合いしてこなかったから人との付き合い方がよくわからないのだと。




だからこちらから提案した。


「じゃあ、まずはおはよう、おやすみ、ありがとう、ごめんなさいくらいなどの挨拶はちゃんと言おう」




そのあと、俺たちは最重要問題について話し合った。

よく知りもしない人間が共同生活をするのだ。ルールは必要だ、ましてや自分たちは偽装とはいえ夫婦を演じねばならない。




1. 業務事項(共同生活と店舗運営)

共同生活の維持:外部の者、特に近隣住民や商店街の人間に対し、二人が円満な夫婦であると信じさせること。


2.店舗の共同経営

役割分担: カイは主に商品の仕入れや商談、対外的な交渉を担当。エイラは店舗の運営、帳簿管理、商品陳列、一部の仕入れ交渉など、裏方の実務と判断を担当する。


3.利益の分配

 店舗の利益は、初期投資の回収を最優先とし、その後は二人の生活費、事業拡大のための投資、そして残りを協議の上で分配する。


4.勤務時間: 店舗の営業時間は双方で合意し、それを厳守する。早朝の仕入れや夜間の準備など、必要に応じて協力する。


5.業務外の自由: 勤務時間外は、基本的に互いの自由を尊重し、干渉しない。ただし、下記「秘密保持と個人行動の制限」に抵触しない範囲とする。    

1)偽装結婚の秘密保持: 第三者に対して、この結婚が偽装であるという事実を決して漏らさないこと。いかなる理由があろうとも、この秘密を破った場合、契約は即時解除される

2)近隣への配慮: 夫婦として不自然な行動は慎むこと。

3)異性との親密な関係の制限: 特に近隣住民に誤解を与えるような「女遊び」や「男遊び」は厳禁とする。あくまでも、外面上は互いに貞淑な夫婦であると振る舞うように努力する。

4)将来的な関係の解消

もし、どちらか一方、または双方に、心から愛する相手が現れた場合は、その時点でこの偽装結婚の解消について、速やかに話し合いを行うものとする。


6.秘密の継続

関係解消後も、偽装結婚であったという事実や他の知り得た情報の秘密保持義務は継続する。


7.困った時は、互いに協力し合うこと。特に店舗の運営や、外部からの不審な動きに対しては、夫婦として連携して対処する。


他はその都度ルールを追加していくことした。




こんなところだろうか。


基本的なところだけだが早くに決めておくことに損はない。



その後、疲れ切った俺たちは不動産屋にもらった資料、今作った規約をそれぞれ持ち帰り明日以降協議することにした。


掃除はしていない2階に上がって休むことにした。埃で人は死なない…


少々部屋割りで揉めたけれど俺の「また明日ね!」という言葉に

「…夕ごはん、おいしかった、ありがとう。おやすみなさい」

と彼女は返してくれた。


昼間の雰囲気から少し柔らかくなった彼女の態度が、とても可愛らしく見えた。




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