表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/90

65 奇跡の出会い、運命の人は何処に

ダニエル君からの相談で、メアリーちゃんにに特別なお菓子を提案することになった。

好きな人に送るプレゼント、責任重大だ。



夜になり、ベッドに入ると、いつか彼とバレンタインのメニューを相談した時のように、私はノートを広げた。メアリーちゃんのの好みそうなものを思案する。

彼女は甘いものが好きだけど、健康や美容も気にするタイプだから、甘すぎないものがいいだろうか。

バレンタインのチョコレートのように濃厚なものもいいけれど、どうしても色合いが地味になる。もう少しで春。春らしい明るい色合いで、見た目も華やかなものを作りたい。レモンやベリーを使ったタルトや、フルーツたっぷりのゼリーもいいかもしれない。悩みながら、私はふと、昼間メアリーちゃんが言っていたことを思い出した。


(だって、いろいろな人と出会わないと、運命の人って分からないじゃない?)


メアリーちゃんが言っていたその言葉が、私の頭の中でぐるぐると回る。


(確かに……)


私は、ペンを止めて天井を仰いだ。そもそも、運命の人って、会ったら分かるものなのだろうか。

何人に会ったら、そんな人に出会えるのだろう。

人付き合いを避けていた方の自分は、たぶん一生出会えないかもしれない。



「ねえ、カイさん」


隣で横になって本を読んでいた彼に、私は声をかけた。


寒波は去ったものの、薪の高騰で余分に買うこともできなかったため、夜は寒いままだ。


結局、いまだに狭いベッドに二人で寝ている。彼の体温が、すぐ隣から伝わってくる。


「何?エイラさん」


カイは、読んでいた本をそっと閉じ、私の方を見た。


「カイさんはさ、女の人とそこそこ遊んでも、運命の人には出会えなかったの?」



私の素朴な問いかけに、彼は「へ?」と間抜けな声を出した。


私は気にせず、言葉を続ける。


「だって昼間メアリーちゃんが言ってたじゃない。運命の人に出会うためには、いろんな人と付き合うのが大事だって。カイさんは、何人くらいと遊んだの?それでも見つからなかったの?」


私の問いかけに、慌てたように返す。


「ちょ、ちょっと、待って、エイラさん!」



「?」



私は、首を傾げて彼を見つめた。何をそんなに慌てているのだろうか。


彼は、身を起こし、私の方に向き直る。


「あのね、エイラさん。人数増やせば出会えるってもんでもないから!1人目で出会う人もいるし、一生出会えない人もいるから!それに、遊ぶって言い方も語弊があるっていうか……」


彼は、しどろもどろになりながら、言ってくる。


「そうかぁ……運も大事なんでしょうね」

さらに私は続ける。


「……カイさんでも出会ってないのなら、私なんて無理そうね。カイさんがいなくなったら、私も頑張って、少し男の人と遊んでみたりしたらいいのかしら」



その言葉に、

「やめてやめて!エイラさんそういうの似合わないから!」

と、叫ぶように返された。


「えぇー……」



彼の反応が面白くて、私はさらに続ける。

「で、結局カイさんは何人と遊んだの?参考までに教えてよ」

結局、一番知りたいのはここなのだ。


「今日のエイラさん、しつこいね!もう寝る!」



彼はそう言って、プイと向こうを向いてしまった。怒ってしまったか。


「やだ、まだ寝ないで!メアリーちゃんのメニュー、一緒に考えてよ!」


私は、彼の肩を揺さぶる。しかし、彼は頑なに背を向けたまま、聞こえないふりをしている。


「知りません」


と、拗ねたような声が返ってきた。

今日の彼はもうだめだ。もう本当に何も答えてくれなさそうだ。

私は、そっとノートを閉じた。


(運命の人か。人を好きになって、好きになってもらうのって、本当に大変なんだな……)


メアリーちゃんの言葉で、そんなことを改めて考えさせられた。


それこそ、奇跡みたいなものなんだろう。

温かい毛布の中で、隣の彼の体温を感じながら、眠気が襲ってきた。

メアリーちゃんの特別なお菓子を考えるのは明日にしよう。


私ははそっと目を閉じ、まもなく眠りに落ちていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ