64 限定お菓子でハートを射止めろ!バレンタイン大作戦 後編
そんな中、途中から存在が消えていたダニエル君が声を出した。
「あの…、メアリーの好きなお菓子って…なんですか?」
少しおどおどしながら話しかけてきたダニエル君の言葉に、俺は彼女と顔を見合わせた。
よくよく聞くと、メアリーちゃんにお菓子をあげたいとのことだった。
しかもバレンタインに!
バレンタインは女性から男性にが王道のパターンだが、逆パターンも全然ありだ。
なるほど、そういうことか。
「メアリーちゃん、基本的にお菓子は何でも好き…だと思う」と彼女が言う。
彼女が、少し困ったように言った。確かに特定のものを気に入ってリピートしている印象はない。
あ、しいて言えばドーナッツは最近リピートしているか?
「しいて言えば新作は絶対買う。あと、見た目がかわいいやつとか?」
俺がそう付け加えると、「確かに!」と彼女も声を上げる。
「…メアリーは変わらないですね。小さいころから新しいものや流行りものはすべて押さえておかないと気が済まないって感じでした」
なんだか遠い目をしてダニエル君は言った。
メアリーちゃんはその流行を追う趣味を仕事にしたのだ。
首都で活躍している師匠こと、有名デザイナーの弟子として洋品店で働きながらお針子の修行をしている、いつか師匠のようなデザイナーになるために。
だから彼氏なんかより師匠を、仕事を、夢を優先する。
一生懸命な女の子だ。
でも、そんな夢に一直線の女の子にこんなおどおどした男が告白して靡くのか?いや、無理なのでは。
ダニエル君には悪いが、勝算が感じられない。
メアリーちゃんはイケメン好きだし、コミュニケーション能力も高いし、ダニエル君では分が悪い気がする。
「お菓子はバレンタイン用にそろそろ新作を出す予定だけど…」
そう言った俺の言葉に被せるように彼女が、とんでもないことを言い出した。
「メアリーちゃんが好きそうなお菓子、考えます!」
「大丈夫なの?エイラさん?」
俺は思わず聞き返した。
「メアリーちゃんは誰よりも先に新しいものを欲しがるし、知りたがる。後日お店に出す予定のお菓子を早めに作るのでそれを渡すの。限定だけれどお店にはまだ置いていないのを一足先に、特別に、とか言って」
彼女の提案に、俺は感心した。なるほど、それは確かにメアリーちゃんが喜びそうだ。特別なものに弱い彼女の性格をよく理解している。
「いいアイディアだね、だったらチョコとかにこだわらなくてもいいし。そしたら春らしいかわいい色合いのお菓子も映えそうだ」
「そういう限定とか好きそうです、お願いできますか」
俺たちは大きく頷いた。
それを見たダニエル君はやっとちょっと笑った。
ん?ちょっと待て。
俺は手を伸ばしてダニエルの前髪をかき上げた。
金色のサラサラの前髪に隠れていた瞳は空色のきれいなブルー。ぱっちり二重、よく見ると鼻筋も通っていて俺より背も高い。うらやましい。
これ、メアリーちゃんの大好物のイケメンなのでは。
「君、とんでもない武器もってるじゃん」
思わず声が出た。ダニエル君は戸惑ったように俺を見ている。
メアリーちゃん、近すぎて気づかなかったかー!!
長年幼馴染として過ごしてきたからこそ、見過ごしてしまっていたのかもしれない。
これは、思わぬ展開になってきたぞ。




