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25 計算通りの滑り出し、そして見えた課題

ついに店の開店の日がやってきた。


彼女は心配していたようだが俺はある程度の勝算はあったのでそれほど気にしてはいなかった。



彼女は緊張で寝付けなくて早く起きてしまったと言っていたが俺は普通に寝れた。

なんなら二度寝も出来そうだったけれど今日はそうもいかず起きた。

隣の部屋で、そんなに早くからソワソワしていたのかと思うと、少しばかり、その生真面目さが愛おしくも感じた。


朝から忙しそうにしている彼女に代わって簡単だが朝食を準備した。

彼女のように凝った料理はできないけれど、目玉焼きくらいならできる。

フライパンに卵を割り落としながら、おそらく厨房にかかりきりになるであろう彼女の体力を少しでも温存しておかなければ、と思った。



食べながら、最終確認。


たぶん、最初だからそこそこ人は来ると踏んでいる。


それを滞りなくどうやって捌ききるかが大事だ

たぶん午後くらいになれば追加分の予想もつくはずなので、そのあと彼女は厨房にかかりきりになるはずだ。



普通のお菓子やケーキの他にいずれ売りにしていく薬菓系を数種類。

この辺は今後の需要と売り上げを見てバランスを取っていく予定だ。


開店時間が近づいてくるにつれて彼女の顔がだんだんと不安げな感じが俺にも伝染するかのように伝わってきた。


「大丈夫、最高のお菓子と薬菓だよ。きっとたくさんの人が喜んでくれる」

と、励ましたが俺もちょっと緊張してきたせいか、うまく笑えてなかったかもしれない。



俺は水色ギンガムチェックのタイを、彼女は三角巾をつけ、準備が整った。


**********************************************

開店の時刻。

扉が開かれ、次々と客が訪れた。


いらっしゃいませ、と声を掛けながら接客をする。

思った以上に売れたものもあったので追加のために早々に彼女は厨房に戻らなければいけなくなった。


俺は覚えたての材料や薬菓の効能などをお客に説明をした。

…あっているよな?と不安になるところもあったが客が納得した顔をするたびに、内心『よし』と小さくガッツポーズを取っていた。


売れ筋にムラが出てきたので試食をすすめて他を紹介してみたりと工夫をしてみた。


一番の人気はかぼちゃのスパイスケーキだった。

俺も試食した中で一番おいしいと思ったものだ。




忙しさのピークが過ぎた午後に隣のアンナさんとメアリーちゃんが来店してくれた。


別々に見たら親子って分からなかったけれど並んでみるとよく似ている。

人懐っこい性格のメアリーちゃんは完全に中身もアンナさん似だ。

「メアリーちゃん、宣伝ありがとね。リクエストの美容系の薬菓、いい感じに売れたよ」


「試食でもらった薬菓、おいしくてびっくりしましたよ!続けて食べたらほら、肌つるっつる!」とはしゃいで話してくれた。

「続けたらエイラさんみたいになれるよ」


「えー、ほんとかなぁ」なんてカラカラ笑っている。


こっそりメアリーちゃんが「本当に、奥さんきれいだね、カイさんが言ったとおりだったわ」と、言ってきた。


メアリーちゃんは彼女にも「エイラさん、あなたに会ってみたかったんです!カイさんの言った通り本当にきれいな人!」

彼女の両手でぎゅっと握りながら話している。

アンナさんも同じことしてたな。

親子だなーと思ってほほえましく思っていた。



そしてメアリーちゃんは薬菓を、アンナさんはりんごとくるみのパウンドケーキを買っていってくれた。



夕方、もうほとんど商品がないという状態になった。


初日にしてはかなり良かったのでは?



ねぎらいの言葉を彼女にかけたら、「こんなに充実した日は、初めて」と笑いながら返してくれた。


あー、とにかく疲れた。

足の裏がじんじんと痛いし、肩は鉛のように重い。

やっぱり会計計算は神経を使う。お釣りも間違わないようにしないといけないし。

ある程度暗算はできるがやっぱり今日くらい目まぐるしいと、計算が怪しくなってくるからやっぱり演算器は便利だなと思う。



明日のためにまだ作業は続く。

さすがの彼女もつかれたようで、昨日のうちに買ったパンと残りのスープで夕食を済まそうと提案したら今日は同意してくれた。


そのあと風呂に入って倒れるように毛布にくるまって本日は終了した。





***********************************************

毎日、疲れては倒れるように寝て、起きて、を繰り返し、2週間がたった。


開店から2週間は順調な売り上げだったが、その後の客足は伸び悩んだ。


彼女も「やっぱりおいしくなかったのかも…」と自信なさげだ。


正直、開店直後より俺は数日たった時の方を前から心配していた。


大体、商売の最初は物珍しさからたくさんの人が来てくれるものだ。

そこからどう出るかが今後生き残っていくために大事なのだ。



味は絶対おいしい。

値段は原価計算を頑張ってリーズナブルにしたつもりだ。

多少のリピーターもいる。


ただ、気になっていたのは客層だ。

年配者が多い。


確かに、町には若者が少ないからと言えばそうなんだが、それにしても、だ。


…原因は大体わかっている。

初めからちょっと思っていたがあえて言わなかった自分も悪い。



でも、言わないと解決にならない。


心を鬼にして彼女に伝えなければ。







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