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20  店を彩る空色と、お針子見習いメアリー

普段は寝起きの悪い俺が今朝はスッキリ起きられた。

あれ?

昨日食べた疲労回復と安眠の薬菓のおかげ?

効果すごい。



店の名前とだいたいのイメージが決まってから俺は店の外の窓枠にペンキを塗ったり、備品の調達に行ったりとしばらくは忙しく過ごしていた。


バートさんの店で空色の吊り下げランプを買った。いくつ買うか悩んだが3つ買ったら2つの値段でいいと言ってくれた。

だったら3個買うでしょ。


光の反射で昼も夜もきれいに見える。

吹き抜けの店内にきれいに光が広がるだろう。

良い買い物をしたと思う。


土地柄的に年配者が多そうだからあまりオシャレすぎると来店しにくいかもしれない。


けど、お年寄りばかりっていうのも行き詰まりを感じる。町に残っている若者にも来てほしい。


首都のようなオシャレさを残しつつ、田舎風な雰囲気も取り入れてみよう。


年配者のために商品を用意する間、座って待っていられる椅子もいくつか用意しよう。


いずれ、店の一角にテーブルとイスを用意して休める場所を作りたい。

そこで彼女とお客が語らうことがあるかもしれない。


彼女は薬も調合できると言っていたからそういったものを並べる棚も設置したい。


メインの薬菓と普通の菓子はカウンター脇のもともとあったガラスケースを利用する。



イメージは固まってきたが何かが足りない。

でも、内装にかける資金はもうそんなにない。


そう考えながら商店街を歩いていたら洋裁店を通りかかった。


これからの季節に合いそうなシックな色合いのワンピースやシャツが陳列されている。


制服とかあれば雰囲気が良くなりそうだけど資金がなー、と考えていたらとある女性に声をかけられた。


「おにーさん、なんか見ていく?」


若い女の子にしては物怖じしないタイプのようだ。


「いやー、ほんと、見てるだけ。ごめんね」


「全然いいですよー!冬物でもう割引しているのもあるから見ていってねー」


気持ちの良い接客をする店員の言葉に甘えて店内に入った。


「ここ、布地も扱ってるの?」

店の一角色とりどりの畳んだ布がいくつも置いてあった。


「既製品よりは高くなっちゃうけど、うちはオーダーも受けてるんですよ」


季節に合わせて彼女がいつも仕事着にしているワンピースとかも変えていったら見栄えもいいんだろうけどなぁ。


明るく話しかけてくれる、くるくるの栗毛の女の子。


「師匠のオーダーはそれなりのお値段だけど、私に指名してくれれば少し安くできますよ」


「本当?」


「私、まだ見習いだから経験が必要なんですよ。数こなしたいからお安く受け付けてますよ」


それでも考え込む。

いくら安くできると言っても服1着の、ましてやオーダーならそれなりにするはず。

お店と統一した色合いのワンピースでカウンターにいる彼女を想像してみた。

…なかなかに良い。

たぶん、何色でも似合う。


「店が軌道に乗った頃検討させてもらうよ。ごめんね」


「おにーさん、お店やるの?」


「そう、もう少しで開店するからよろしくね。パン屋の隣だよ」


女の子は「あ!」と声を上げた。


「ウチの母さんが言ってた!隣に引っ越してきた人がこれからお店をするって、そこの旦那さん?奥さんすっごいきれいでかわいかったって言ってた!牛乳屋のおじさんも同じこと言ってた!」


「じゃあ、君はアンナさんのお嬢さん?」


お互い自己紹介をし、メアリーと名乗った女の子は我が家の隣、【ベーカリー 麦の風】の娘だという。

メアリーはお針子の修行中でこの店の主の元で住み込みで働いているのだそう。


「母さんに聞きましたよ。薬菓とお菓子のお店でしょう?前に首都で薬菓は食べたことあるけど苦くて苦手だった、お菓子なら買いに行ってみたいな」


「薬菓ってみんなそうなの?エイラさんの作るの全然苦くないよ」


他の薬菓がどんなのか知らなかった。


「そうなんだ、楽しみ。その苦い薬菓も効果はあったんだけど味がねー…」


「なんの効果あったの?」


「肌荒れ。あれ食べてる間だけはすごい肌の調子が良かったんです」


なるほど、体調とかではなく若い女の子にはそういったものの方が需要かあるのか。




「開店したら絶対行きますね〜。私、知り合いにも宣伝しておきますよ」


「本当?助かるな〜」


「で、カイさん、お店のものを探してるんですか?」


「そう、商品はエイラさん任せだから俺は今、店の内装とか備品などを揃えてる所」


「そんなきれいな奥さんいるんなら、かわいくしてお店に立っていてほしいですもんね〜。それで服を探してました?」


「いやぁ、理想はそうなんだけどまだそこまで金が回らないかなぁ」


「服が無理なら、小物とかは?」


「小物?」


「リボンとか、スカーフとか。そういうのなら値も張らないし」


なるほど。それくらいなら手が届きそうだ。




メアリーちゃんに勧められ、店に敷く水色のギンガムチェックのクロスを数枚、彼女には三角巾を、俺はタイを同じ布で仕立ててもらうことにした。



これくらいなら季節に応じて変えられて、店の雰囲気に変化もつけられるから、なかなかにいい買い物だった。










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