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12 夕暮れの商店街、女神降臨

季節的に、この時間はかなり日が落ちているため私が外出するのにはちょうどよい。


少し薄暗くなった商店街は、夕方の買い物客でにぎやかだった。

食堂から漂う美味しそうな香り、人々の話し声、人口減に喘いでいるとは聞いていたがそれなりに活気を感じられる。



あからさまな目で見てくる人はいないがチラチラと視線を感じる。

どうしよう、結局頭巾は言われるままに置いてきてしまった。



彼はとある店で立ち止まり、おいでおいでと手招きした。少し距離を取って歩いていたので小走りで駆け寄った。

お土産屋さん?


店内には色とりどりの雑貨が所狭しと並んでいる。

天井からはガラスでできたランプもぶら下がっている。


彼はとある一角で立ち止まった。


そこには白い陶器でできた人形がたくさん。


銀の髪に赤い瞳、白いローブをかぶった女性を象っている。


「エイラさんの姿、そのままじゃない?」


確かに。

彼が言う通り私と特徴が一致する。



身をかがめてよく見ようと人形に近付いた時、店の奥から「いらっしゃい」とおばあさんが出てきた。


「こんばんは」と彼が挨拶をしたので私もそれに続こうと声を出そうとした時、



「あんらぁ!御子様がいらっしゃった!!」


先におばあさんのほうが声を出した。


びっくりして固まっている私に、お婆さんは近づいてぎゅっと手を握ってきた。


「長生きはするもんだ」とか、「ありがたい」などブツブツ言っている。



「ちょっとぉ〜!誰か来ておくれ!御子様がいらっしゃったよ!」


奥からドタドタと音がして、「もう〜お義母さん、夕飯の準備の最中になぁにい〜」

と赤毛の女性が顔を出した。


カラン



持っていたお玉を落とした音だ。



「ええ!!本当に!?御子様だ!」



娘と思われる女性もお婆さん同じ反応をする。




2人の反応に困っていると彼が助け舟を出してくれた。


「おばあさーん、この人は似てるけど御子様じゃないよー。エイラさん困ってるから手、離してあげて」


やんわりと言ってくれたがお婆さんはさらに手をぎゅっと握ってくる。


「だめじゃ、手を離したら天に帰ってしまうかもしれん!」


そんなやり取りを見かねて少し早く冷静さを取り戻した娘さんが私とおばあさんの手を離してくれた。


「義母がごめんなさいね。」


「こんなにそっくりなのに御子様じゃないのか…」と、おばあさんは少しがっかりしている。


娘さんがこの辺で信仰されている豊穣の女神というのが、私と同じ容姿だと説明してくれた。


「あなたたち、この辺の人じゃないんでしょう?見ない顔だもの」


「そう、俺たちパン屋の隣に引っ越してきたばかりなんです。以後、お見知り置きを。カイ オルウェンです」


私もあわてて「エイラ オルウェンです」、と頭を下げた。


娘の方はオードリー、お婆さんはローズ、と自己紹介をしてくれた。




ローズさんは

「あんた、こんなべっぴんな御子様を嫁にもらうなんてどれだけ徳を積んだんだ」と彼に話しかけている。


得意そうに「でしょう?俺の奥さん、美人さんでしょう?」と私の肩を引き寄せた。


この人はどこまで本当で、どこから演技を混ぜているのだろうか。


何も言えず彼の顔を見てしまう。

かなりの至近距離で目が合ってしまい、思わず私は目をそらして。

たぶん顔赤くなってる。


「うちの奥さん、ちょっと恥ずかしがり屋なんです」


そう、フォローしてくれた。




ローズさんとオードリーさんの店を後にして彼が明日の牛乳を買うと入った店でも、また同じようなやりとりが。



牛乳屋の店主、マルクスさんは「兄ちゃん、確かに本物がいればこれは要らねぇなぁ!」と店のカウンターに置いてある例の人形を指差しながら笑っている。


「てしょう?」と彼はなんだかよく分からないが得意げだ。




思ったより帰宅が遅くなった私たちは、チーズと塩と砂糖、ベーコンと少しの野菜を買って急いで帰宅した。



今日は私が夕食を作ります。

















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