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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第四部:獣王編
57/62

(46) ~ チェツ

 うぉおおおお……

 ぐぁおおおお……


 ガッフェンに示されたあなぐらの前に立ち尽くすアンデットの一行は、言葉を失っていた。どれだけこのあなぐらが深いのかは分からないが、絶え間なく響いてくるのは間違いなく、苦悶に充ち満ちた絶叫である。


「ガッフェンさん、死んじゃう。俺このまま行ったら死んじゃうって!!」

「あー……確かに、あんまし耐久もなさそうなネクロマンサーに、これは酷だなあと思うッスけど……」


 タイキにすがりつかれたガッフェンは、がりがりとほおの辺りを爪でひっかいて困った表情を浮かべる。


「ここ通っていかないと、さすがに舐められちまって話をするどころじゃなくなっちまうッスよ。ネクロマンサー、なんかこう、すげぇ一発かましたりとかって出来ないんスか?」

「……まあ、タイキは今までのネクロマンサーと比べれば、破格の能力をお持ちですが、戦闘経験がほとんどないんですよ。唯一そう呼べそうなのは、ヴァンプであるロスティスラフ様が永久墓地にいらしたときでしょうか」

「ええ……あれすごく疲れたんだけど……」


 以前、暴走したロスティスラフを収めたことを言っているのだと気づいたタイキは、渋面を作る。しかし、他に何か戦闘まがいのことをしたかと言われれば、リジェラスとの魔術合戦(遊び)がほとんどだ。大体は彼が上空から打ち出してきた魔術を防ぎつつ、応戦するという形なのだが、たまに応戦した攻撃がヒットしてリジェラスが大人げない攻撃に転じる(ヴォーゴかリッパーが止めるが)ときに殺気に近いものをぶつけられたりはする。

 だが、本当の殺気をぶつけられたのは……結界を出て、自由を奪われた人間の世界が初めてだった。

 思わず、そのときのことを思い出してタイキは身震いする。


「……うう、とりあえず、防護術だけはありったけ使っておくよ」


 とうとう諦めて、一行はあなぐらの中へと足を踏み入れた。



※ ※ ※



 あなぐらのなかは光源と呼べそうなものがおよそなく、タイキ以外は夜目が異様に利くのでなんとかなっているようだった。だが、タイキだけは何も見えなかったので、淡い光を発生させる魔術の世話になることとなった。


「奥に奥に……というか、地下にもぐる形になってるんだね」

「そうッス。バルザッハ様はあんまり結界の中でもあなぐらの外へは出てこないッスよ。興味がないっぽいッス」


 ガッフェンに繰り返し、敬語をやめてくれと頼まれたタイキは普通の口調で彼に話しかけた。ガッフェンは、夜目の利かないタイキを馬鹿にするでもなく、足下が危ない場所ではきちんとそれを教えてくれたりと、気配りがビーストとは思えぬ丁寧さだった。


「……ん?」


 ある程度奥まで進んで来たところで、ガッフェンが一行の前に立ち、止まるよう身振りをする。最初はなんだろうと思ったタイキだったが、仲間たちが次々に戦闘の構えを取り始めるのを見て、何かが近づいてきているということを知った。


「……なに、来るの?」

「わかりません。が、大勢ではないでしょうね。一人か、多くて二人……」


 タイキに問われたデルフェールは、彼を守る位置に立ちながらガッフェン越しに前方を見据えている。マジシャンとファントムアーマーに挟まれたタイキは、ごくりとのどを鳴らした。


「すいません、ネクロマンサー。明かり消してもらっていいスか。それがあると、こっちが向こうから丸見えなんスよ」

「あ、うん」


 言われて、タイキは慌てて光を消す。とたんに訪れた暗闇に、タイキは思わずデルフェールの服にすがりついた。そんな彼の背中を、デルフェールが軽く叩いて安心させる。

 とうとう、タイキの耳にも近づいてくる足音がはっきりと届いたところで、ガッフェンが誰何する。


「勝者か、逃亡者か? 後者ならばバルザッハ様に背を向けた罪、リザードマンガッフェンが裁く!!」


 体育会系の敬語をやめたガッフェンの低い声が、あなぐらの中に響き渡った。次いで、それに答えるもう一つの声も。


「あら、ガッフェンちゃん勝ってたのね。おめでとー。あたしよあたし、チェツよ」

「なんだお前か」


 その言葉を聞いた瞬間、ゆらゆらと立ち上っていたガッフェンの殺気が一気に霧散した。

 あなぐらの曲がり角から、青白い光を放つカンテラを片手に現れたのは人間大のビーストだった。鶏のような頭と立派な鶏冠、首回りには鮮やかなオレンジ色のえりまきのような羽毛、肩から先が翼になっており、胴体は人間のようだが膝から下は鳥のそれだった。

 その鳥のような人間のような姿をしたビーストは、カンテラを持つのとは逆の手にもう一体のビーストを抱えていた。それは姿こそ人間に近いが、全身が赤黒く、頭頂部からいくつもの角が生えている……ほとんど、無残に折られていたが。


「あら、あらあら、そっちの方はひょっとして、今日来るって言ってたネクロマンサー様?」


 鳥頭のビーストは、鬼のビーストを壁際に向けて放り投げると、デルフェールの影に隠れていたタイキをのぞき込んできた。タイキは新しい魔族の登場に困惑しながらも、「どうも」と返す。


「礼儀正しい方みたいねー。あたしはキマイラのチェツ。よろしくねー」


 チェツはカンテラを持ち上げると、軽く首をかしげてそう言った。

まことにお久しぶりです、って半年も経ってるじゃねぇか(バンバン

夏休みに入ったので、ちょっとまとまった時間が手に入るようになりました! だからといってはなんですが、なんとなく書けた次のお話を速攻で放り込みます。ちなみに、次のストックはありません。

今晩か、明日以降のがんばりに期待ですね!


……いつか、ランキングに載りたいと思う、今日この頃(ほろり

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