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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第三部:魔神編
49/62

(39) ~ これにて一安心?

「……」


 閉じていた目を開き、ゆっくりと空を見上げる。

 星々が浮かぶ暗い夜空に、ぽっかりと存在する白い月。

 本物の永久墓地。


「か、帰ってきた……!!!」


 だばり、と涙を流してタイキは走り出す。すると、十秒もかからないうちに目の前の地面が盛り上がり、人の形を為した。その人物も、タイキと同じように両腕を広げていて。


「デル!」

「タイキ!」


 タイキ以上に酷い顔をしていたデルフェールは、タイキを抱きとめたとたんその体を触って無事を確かめた。


「大丈夫ですか変態の魔手から逃げられましたかヴォーゴはちゃんと守ってくれましたかああああもう五体満足で本当によかったですよぉおおおお!!!」

「で、デル、いったん落ち着こう。うん、俺ほんとに大丈夫みたいだからさ、ね!」


 これはしゃれにならないほど心配をかけた、というか実際しゃれにならない事態になるところだったと冷や汗を流しながら、タイキはぽんぽんとデルフェールの背中を叩いた。そして、くるりと振り返り結界の入り口を見やる。

 そこから次々に顔を出したのは、リジェラスとヴォーゴの二人に、ずいぶん暗い顔をしているロスティスラフだった。最後に、よく使うと言っていた灰色の髪の美少年姿をしたシェルが、ひょっこりと現れる。


「やっほーデルフェール! 久々に楽しませてもらったよお? 君のご主人おもしろいねぇ~」

「あなたは! よその! 魔族にまで! 手を出さないでくださいよ!!!」

「ええ~、身内にも手を出すなって言われたんだけどぉ? じゃあ僕は一体だれで遊べばいいのさ~もー」


 きゃははと笑ってヴォーゴの肩にふわりと腰掛けるシェルに、他の面々は何も言えなくなる。とりあえず、永久墓地へ移動する前に無限回廊の一室でぐったりしていたところを拾ってきたロスティスラフを心配して、タイキは彼へ近づいていく。


「ロティ、ずいぶん酷いケガしたらしいけど……だいじょぶ?」

「ああ、タイキ……すまないな、僕の力が及ばないばかりに。くっ、もう何百年か力を蓄えられれば……!」

「あっは、ナルシーヴァンプが僕に敵う日なんて、来るわけないじゃーん?」

「なんだと!」

「はいはい不調なんだから無理しないの。俺ん家でお茶でも飲もう。あとツェーザリとか呼んで、お迎えに来てもらってさ」

「……はあ、わかった、タイキ」


 世話になる、といつになく意気消沈しているロスティスラフ。普段あれほど自信にあふれているというのに、今回はよほど手ひどくやられたらしい。改めて魔族同士の戦いとはすさまじいものなのだなと思いつつ、タイキはデルフェールと手をつないで家へと戻ることにした。

 家へ帰る途中では、タイキの帰還を聞きつけたアンデットたちがわらわらと集まってきて、その無事を喜んだ。ただし、ヴォーゴの肩に座っている人物を見るなり、蜘蛛の子を散らすようにして逃げて言ってしまったが。


「ふふ、アンデットの子たちは別に襲う気ないけどなあ~。見た目そそられないし? あ、でもたまぁーに良い感じのマジシャンとかいるよねぇ。普通のはマントだけだけど、力が強かったら生きてた頃の肉体も持ってるって子! ……あ」

「ひ!?」

「わーっシェルそのマジシャンさん離したげてえっ!? てかなんでこのタイミングで来ちゃうのほら早く行く! あとで挨拶聞くから!」

「はっはいではネクロマンサーまたのちほどっ!!」

「ちぇー」


 ……なんてやりとりもあったり。

 そんなこんなで、家につくと。


「タイキ! おかえりなさぁい!」

「おうおうおうよくけえったなタイキぃ!」

「ゼフィ、リッパーさん!」


 なじみの二人にも出迎えられ、タイキは笑顔で飛び込んでいく。ゼフィストリーはタイキを抱きとめ、その頭を軽く撫でると、なにやらむすっとした顔をしているロスティスラフには珍しく何も言わず、代わりにシェルを見上げてため息をついた。


「まったく……こないだからタイキいろんなところ連れ回されちゃって、いーめーわくよぉ」

「ふふふ、ひっさしぶりぃゼーフィー? 今日もまた一段と色っぽく飾ってるねぇ、僕には負けるけど」

「そっのっ一言付け加えるのもムカツクのよ!?」

「うええ……こいつまで来やがったのかぃ……」


 嫌そうにほお骨をゆがめるリッパーを見下ろし、シェルはふふんと鼻で笑う。


「骨しかないおじさんはさすがに範疇外だしー? あー、でもゼフィストリーもなーんか化粧くさいからやーめた。あーあホントにもうタイキとリジェラスくらいしか楽しめそうなのないなあこのあたり」

「「「やめろっ」」」「やめてくださいっ」


 にんまり笑って、奇妙な手つきをするシェルをタイキ、リジェラス、ヴォーゴ、デルフェールが怒鳴りつける。ゼフィストリーは表情を引きつらせ、「なんでこいつ来たのよぉ」とつぶやいている。

 と、なにやらマントの下でごそごそしていたロスティスラフが顔を上げると、タイキの前にしゃがみこんだ。ちょうど目線が合う位置になって、タイキは首をかしげる。


「部下と連絡がついたんだ。僕はここで失礼するよ、また今度、カードゲームでもしようじゃないか」

「うん、わかった。助けに来てくれてありがと、ロティ」

「今度は、ちゃんと助けられるようにしよう……」


 どうやら、今回のことは彼の中で汚点となってしまったようで、彼がぎりっとシェルをにらみつけるも、シェルはそれを余裕の笑みで返してきた。ばちり、と目に見えない火花が散る。


「……まあ、このお二方は極端ですが、長いこと魔族のリーダーというのはこんな感じに嫌い合ってきたのですよ。目にしてみて分かりましたか?」

「うん、まあ、でももともと相性悪そうだよねこの二人……」

「そうですね」


 しばしにらみ合いを続ける二人を見ながら、タイキとデルフェールは互いに耳打ちをする。

 と、そこへいつか見たような光景が生み出される。突然現れた地面に広がる円形の影が、するすると円錐状に伸びぱくりと割れる。影の中から現れたのは、真紅のクセ毛をツインテールにした美しい少女だった。その背中からは、一対の小ぶりな翼が伸びている。


「ロスティスラフ様、お迎えにあがりました」

「ああ、よく来たシャマーラ」


 ロスティスラフにシャマーラと呼ばれた、そのヴァンパイアの少女は、ざっと回りのメンツを確認するとこれ見よがしに表情をゆがめる。


「まったくごちゃごちゃと……。さ、早く帰って、お休みになって下さいな我が主」

「もとよりそのつもりだ」


 そう答えて、ロスティスラフは軽くタイキの頭を撫でる。タイキも、またねの意味を込めて軽く手を振り替えしたが、とたんすさまじい悪寒に襲われた。なんだろうと見回せば、ロスティスラフの真後ろに立っているシャマーラが、どす黒いオーラを垂れ流しながらタイキのことを睨んできていた。


(え、俺なんかした?)

「あっはー! シャマーラちゃんだあああっ大人なのに子供だなんておいしすぎぃだよねえ?」

「っひゃうわ!?」

「この変態魔神!? 僕の部下をさっそく襲うな!!!」


 もっとも、シャマーラを見た瞬間に目をきらめかせたシェルが、彼女を背後から抱きすくめてしまったため、彼女がそれ以上タイキに目を向けることはなかったのだが。


「まったくもう永久墓地でそんな痴態やらかさないでください!? ヴォーゴ、そうそうにあれ引き取ってください無限回廊へ!」

「……無茶な」

「タイキ、俺しばらくこっちに泊めてくれ……」

「ひゃあああっ!? ロッロスティスラフ様ぁああっ!! ちょっ、も、離しなさい悪魔あっ!!」

「うわ、淫魔でもないのにこの胸のサイズ? ロリ巨乳とかいう言葉は君のためにあるんじゃないかなあこれ」

「貴様いい加減にしろと言ってるだろうがっ!!!」


「……うん、結局カオスだ、ねえリッパーさん」

「……あんでぇタイキ」

「いつだか、シェルに関わったらろくなことにならないって言う意味、ようやくわかったよ」

「そりゃよかったよ……もう……ほんとによ……」


 永久墓地に帰ってきたは良いけれど、シェルは一体いつ帰ってくれるんだろうなー、とタイキは深い深いため息をついた。

ちょっとむちゃくちゃですが、これにて魔神編終了です。

ふらふらふらふらとした更新期間でしたが、お付き合いありがとうございました!


次は外伝を投下して、次の『獣王編』に向けてがんばります。

前まで作っていたプロットがなんかつまらないので、もう一回練り直してドタバタ風にします。


そっそれが終わったらやっとデルのネタバラしだああああ!!! はよ書きたい!!! ていうかどこに書くかもうタイミング見失った!!! どうしようね!!!

それでは。

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