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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第三部:魔神編
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(38) ~ 帰還の条件

ちょっぴりあれといいますか、見る人によっては不快に感じる描写がございます。シェルさんかっ飛ばしました←

それではどうぞ。

 ヴォーゴの取りなしで、なんとかその場は手出ししないという約束をしたシェルは、めざとくカミラを見つけると、すり寄って抱きついた。


「うふふ~ここにいたの、カミラだったんだね? ねえねえタイキは優しかったあ? 仲良く悲鳴挙げちゃったりしてたし、なんかすっごーいカミラの体からタイキの気配がするんだけど……ひょっとしてひょっとしちゃう?」

「何がなんなんだろうね!? ちょっとお互いにびっくりして抱きついちゃっただけだよ!?」

「わっ、タイキひどい! 僕が抱きついたときはあんなにいやがってたのに。カミラみたいな子がタイプなの~?」

「…………ヴォーゴさん」

「……(ふるふる)」


 静かに顔を横に振られて、タイキは膝をつく。戸惑うカミラにひとしきりほおずりしたシェルは、椅子に座って彼女を膝の上に載せると、そのまま髪の毛を編み込み始めた。


「しぇ、シェル……あの、俺ほんとそろそろ帰りたいんだけど」

「えー……ええー」

「っていうか、あの、ロティは?」

「…………」

「ディ、ディアボロ様……寒いです」

「あ、ごめん」


 ロスティスラフの名前が出た瞬間に、周囲の温度を低下させたシェルは、膝の上で震えるカミラに気づき暖めてやる。三本ほど細い三つ編みを作ったところで、不機嫌そうな顔つきでつぶやいた。


「勝ったといえば勝ったんだけどー、とどめさせなかったんだよね。とりあえず体半分吹っ飛ばしたから、まだ再生中だと思うんだけどー」

「どえええっ!!?」


 体を半分吹っ飛ばした? と思わず復唱してしまったタイキを見て、シェルは笑みを浮かべる。それは先ほどまでのふざけたものと違い、彼女が魔族であることを如実にあらわす冷徹な笑み。


「知ってる? ヴァンパイアって、ヴァンプも同じなんだけど心臓つぶせばだいたい死んじゃうんだよねー。だからあいつら、自分の心臓の位置をころころ変えるんだけど、今回は当てられなくってさー。ま、あいつ青い顔してたから、惜しいところ狙ってたんだと思うけど?」


 あー残念、と言って、シェルは作った三つ編みをまとめて、どこからか取り出したピンでサイドに留める。カチューシャをつけたように前髪の上を三つ編みが横切る髪型にされたカミラは、されるがまま大人しく座っていたままだった。


「はい、カミラありがと、少しすっきりした」

「ありがとうございます、ディアボロ様」

「ん。……あ、そーだ」


 そこで、シェルはカミラを膝から下ろすと、タイキに向かってちょいちょいと手招いた。思わずまわりを見回したタイキは、自分が指名されたと気づき慌てて立ち上がる。


「な、なに?」

「んっ」


 するりと、シェルの手が伸びる。

 互いの顔が近づいたとき、あれなんだかこんな瞬間前にもあったような、とタイキは硬直した。


 気づいたときには、すでに唇は重ねられていた。


「シェル……!」


 がたりと近づきかけたヴォーゴの体が吹っ飛ぶ。壁を破壊したその先へととんだ彼の体が見えなくなって、さらに歯止めがきかなくなった。


「ん、むうう!?」


 タイキ自身も離れようとするが、首と頭をがっちりと押さえ込まれているため上手く体を動かせず、下手をすると首を痛めてしまう事態に。その上だんだんと息が苦しくなり、視界がせばまってきた。


(い、息、息がっ!?)

「んう……」


 一度顔の向きを変えたシェルは、最後にぺろりと唇を舐めてタイキを解放した。どさりと荒い息でその場に倒れ込むタイキを見下ろし、嬉しげにつぶやく。


「ふふ、だーいまんぞく、かなあ? 今はこのへんで」


 じゃ帰っていいよ、と言われた言葉を理解するのに、タイキにはまだ少し時間がかかってしまった。

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