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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第三部:魔神編
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(36) ~ ホラー耐性なんてない

 少女に連れられてタイキとリジェラスが入った部屋は、青と白が基調の落ち着いた雰囲気をただよわせていた。はめ込み式の窓からは、黄金に輝く満月が顔をのぞかせる。


「はあ……疲れた。なんか飲み物」

「はい、ただいま」


 少女は二人の席を用意すると、てきぱきと動いてお茶の準備を始めた。ただ座っているのも暇だったので、何か手伝うことはないかとタイキは少女に近づいていく。


「あの、なにか俺に出来ることある?」

「え? いいえ……あの」

「ん?」


 茶葉の用意をしながら、こちらを見返す少女の目に怪訝そうな色を見て、タイキは彼女の反応を待つ。


「ええと、君も、ディアボロ様がお連れになった人?」

「あー……まあ、そうっちゃそうだけど……」

「カミラ、そいつも魔族だぞ。アンデットの最上級、ネクロマンサー」

「ひっ!?」


 リジェラスのあっさりとした解答に、少女カミラは顔面蒼白になった。なんとか持っている茶葉の缶をぶちまけることこそしなかったが、全身を震わせて目には涙まで浮かべている。


「も、申し訳ありませんネクロマンサー様! どうか、どうかご無礼お許し下さいっ!!」

「い、いや別にいいよ!? ていうか人間と勘違いしたんでしょよくあるよくある! あとリジェあんまり偉そうに言わないでよ俺のこと。まだ新人なんだし」

「ネクロマンサーなのはホントのことだろ……てか、茶」

「はっはい!」


 すっかりがちがちになってしまったカミラをこれ以上緊張させるのはまずいと思い、タイキも大人しくリジェラスの隣に座ってお茶を待つ。その間、同じ空間で行われているであろうリーダー同士のケンカについて思いをはせた。


「…………リジェ、どう収拾つくと思う?」

「…………いや、ぶっちゃけ俺も、あのナルシーヴァンプの全力って見たことねーんだよな……魔力の質でいったら、年季からしてディアボロ様の方が上なんだけどよ」

「……ヴォーゴさん、無事かな」

「無事でいてくれぇえええええっ……」


 とうとう、リジェラスは机に突っ伏した。とにもかくにも、結界への転移手段すら封じられているのだから、彼らの決着がつかないかぎりタイキは永久墓地へは帰れないのだ。

 そこへ、カミラがまだ青い顔のまま、煎れてきたお茶を運んできた。しばしその温かさに癒やされながら、タイキはここ、デーモンの結界幻想回廊について訪ねてみる。


「ね、幻想回廊ってぐらいなんだから、本当にあの廊下どこまでも続いてんの?」

「んん? ああ、ディアボロ様の魔力に応じて、今でも拡大してるくらいだからな。俺も果てなんて知らねーし。古参のやつでも、隅から隅まで知ってるやつなんていないと思うぞ」

「へえー。ねえ、シェルって結局いくつくらい……なの?」

「それを答えられると思うか?」

「…………ごめん、きっとゼフィと同じ反応なんだろうね」

「わかればいい」


 湯気が立ち上る熱々の紅茶を、一気に飲み干したリジェラスは顔色一つ変えずにドアの方へ歩いて行く。


「リジェ?」

「ちょっと、気配探ってみる。なんかさっきから静かだしな……」


 そう言って、ドアに手を当てるとそのまま動かなくなったリジェラス。彼の集中を途切れさせてはいけないだろうと、タイキは紅茶をゆっくり楽しみながら、ふと傍らに立つカミラに目を向けた。


「えっと、カミラ? リジェもあっち行っちゃったし、座っていいよ」

「えっ!? い、いえ、私はこのままで大丈夫です……」

「ん、そっか」


 あからさまに挙動不審になるカミラを見て、内心落ち込む。地上ではこれ以上ないほどの憎しみにさらされ続けたが、こうして怯えられるのもやはり堪える。

 それでも、タイキはあきらめが悪かった。彼女が怯えるだけだと分かっていても、『人』と話してみたかった。


「ね、君はシェルに連れてこられたんだよね。生活とか大丈……いやなんでもない俺我が身に起こったことを忘れてた大丈夫なわけない……っ!」


 なにか話題を、と思って投げかけた言葉は、くるりと自分に向かって突き刺さってきた。あのシェルが人間をさらってきて、どうこうしない……わけないと思う。実際自分も襲われかけたし(未遂、未遂!)。


「あ、いえ……私はまだ、いろいろと未熟なので、ディアボロ様には足りない知識を教えられているところです。こういったお茶の入れ方なども、教わりました」

「え? そうなんだ」


 意外と、酷い扱いはしてないんだなーと思った瞬間、つんざくような悲鳴が二人の耳を打った。慌ててドアの方を振り返れば、なぜか左腕を肘までドアに埋もれさせたリジェラスがもがいている。


「り、リジェ!?」


 椅子を蹴立てて駆け寄ろうとすれば、リジェラスは鬼の形相で


「来るなっ!!!」


 と叫んだ。



「あっは、こんなとこにいたんだあ、リージェー???」

「ひっ」


 と、ドアをすり抜けるようにして、細い腕が伸びリジェラスのあごをつかむ。様々な恐怖に目を見開いたリジェラスは、とても聞き覚えのある笑い声とともにドアの向こうへ消えてしまった。

 残されたタイキとカミラは、あまりのホラーな光景にしばし互いのことを忘れて抱き合っていた……。

お久しぶりです!!!

先月は、月二回の更新とかいいねえしたいねえと言いつつ、すでに10月が終わりそうだなんてこったい!と慌てて続きを書いてみました。荒いです。そしてあまり話が進まない。


しばし、プロットを紛失したかと思って大変あせりました。シェルののろいか…(ゴクリ

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