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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第三部:魔神編
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(34) ~ 乱入乱闘いざ逃走!

 どこに通じているかもわからない薄暗がりから、蹴散らした壁の残骸を踏み越えてやってくる美青年を見てタイキはぽかんとする。なんだか、自分が思っている以上に彼は自分を気に入ってくれているらしい。


「ろ、ロティ……なんで」

「おおそこにいたか! なぜと言われても、あの性別年齢詐称変態魔神にお前がさらわれて、あのデルフェールが茫然自失だという噂が魔族の間を伝わってきてな。ある意味人間にさらわれるよりたちが悪いではないか。僕……というかヴァンプならば、幻想回廊の強制入場も可能であるし。何より友人の危機には駆けつけねばなるまい!」

「そーいってぇ、ツェーザリたちにまぁたお仕事押しつけてきたんでしょ~? このはた迷惑ナルシーヴァンプ」


 ばちり、とシェルとロスティスラフの間で火花が散る。以前人間の城に乗り込んできた時以上に殺気を放っているロスティスラフの様子を見て、タイキは身体を縮こまらせた。


「ね、ねえ……ロティとシェルって、やっぱ、仲悪い、の?」

「基本的によそのリーダー同士、気が合うって方が珍しい……だから、お前が特殊なんだよ」

「そうなの?」


 首を傾げ、タイキはシェルとロスティスラフを見比べる。ともに初対面でいろいろ酷いことを一方的にされたりなんやかんやあったりしたが、適度に距離を置けばちょっと変わった人だなーレベルで接することは、タイキ的にはアリである。

 ヘンかーとあまり分かっていない風で首を捻るタイキを見て、リジェラスは額を押さえる。強大な力を持つわりに、こういうのんびりした魔族らしくない態度が原因だとは思うのだが、それを言ってやるほどお人好しでもない。第一、言って変わるものでもないだろう。

 と、そうこうしているうちに、シェルを手放したヴォーゴがリジェラスとタイキを扉の方へ押しやった。一瞬気を抜いたうちに、二人のリーダーはそれぞれ戦闘態勢に入っている。


「まずっ……逃げるが勝ちってな!? ヴォーゴ頼んだ!!」

「ああ」

「わ、っとぉ!?」


 扉の向こう、結界名の通り終わりが見えない回廊に飛び出したリジェラスは、迷わずその先へと飛ぶ。一拍おいて、背後からすさまじい魔力のぶつかり合いの波動が伝わってきた。命の危機すら覚えるそのすさまじさに、タイキは目を見開く。


「これ」

「リーダー同士がぶつかりゃ、あれぐらい序の口だ。バルバロイがいたらもっとぐっちゃぐちゃになったろうよ!!」

「な、なあ、三人とも大丈夫だよな!?」

「……あれぐらいで死ぬような魔族じゃないから。上位も上位しかいねぇから」


 呆れた口調で返しながらも、しばらく永久墓地で現実逃避しようかななんて考えているのは秘密である。美しいもの、可愛いものに目がないシェルであるが、どうにもロスティスラフとは相性が悪い。ロスティスラフも、自分とシェルとが諍いをして側近が仲裁するたび、その側近がシェルにさらわれ続けたりしたので完全無欠に嫌っている。……あれほぼシェルが悪くないか?

 バルバロイは力一択だし、ロスティスラフは生粋のナルシストでシェルは色狂い。


「俺、今ほどアンデットになりたいと思ったことねえわ……」

「え、なんでデーモンやめるまでの話になってんだよ」

「お前がリーダーとして没個性すぎんのが悪い!!!」

「没個性!? 俺ロティとかシェルみたいな個性いらないよ!!?」

「わかってらずっとそのままのお前でいろ!!! せめてアンデットどもには平穏をあげてやれ!!!」

「……あれ、結局これけなされてるの? 褒められてるの?」

「知るかよ!」


 回廊を進むうち、ぼんやりと橙色の光で照らし出されていたものが、うっすら青白い光のものへと変わってきていた。そこで見つけた扉を前に、やっとリジェラスはタイキを下ろす。


「ここが永久墓地行きの転移門。さっさと行くぞこれ以上被害がでないうちに! マジでデルフェールが廃人になる」

「あのさ、結局俺どのくらいさらわれてたの? あとデルそんなに重症なの!?」

「……地上の長さで換算するなら、太陽が三〇回くらい昇ったか」

「…………は?」


 太陽が三〇回昇ったということは、それだけの日数が過ぎていたということで。


「あはは、ジョウダンダヨネ?」

「だから言ったろ。あんな部屋にいやがってって。あそこはディアボロ様のさじ加減ひとつで時間の流れが変わるんだよ。一種の異空間だな。……まあ今回あのヴァンプが叩き潰してたからな……あ、やっぱぜってぇぶち切れてるディアボロ様……」

「……マジか」


 リジェラスの言葉を理解したタイキも、さーっと血の気が引く。まさか、そこまでここにいたとはついぞ思わなかった。だって一回しか御飯食べてないし。

 あたふたしはじめるタイキを見て、頭痛を堪えるように顔をしかめたリジェラスは、転移門に触れた。ドアノブもない、ただの木の板が打ち付けられただけのようなそれは、音もなく開かれていく。


「行くぞオラ」

「う、うん」


 呼びかけると、落ち着かない様子で近寄ってきたタイキは、何も言わずにリジェラスの手を握る。

 思わず無表情になって手を持ち上げてみれば、しっかりと握ったままのタイキの手も上がった。


「うえ?」

「……いやもういいよお前……」


 翼や尾をつかまれるよりマシ、と心の中でつぶやいて、リジェラスは彼の手を振り払わないまま転移門の中へ足を進めた。

だんだんリジェラスのキャラが思い出せなくなってきた。こんなんだっけ?


ちなみに想像つくとおもいますが、ヴォーゴは二人のバトルに一切手出ししませんから。デーモン2VSヴァンパイア1ではないですから。ガチンコリーダー対決してますこいつらは。

……タイキのことは起爆剤として、ここ数百年の鬱憤もあるかとごにょごにょ。

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