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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第三部:魔神編
40/62

(30) ~ 暇つぶし

 結局、その後一時間ほど経過しても、タイキの元へディアボロが現れることは無かった。その間、タイキはゆったりした格好で、フィーとの会話を続ける。というか、それしかやることがなかった。


「その真っ赤な目って、やっぱりデーモンの特徴なの? 俺の知ってるデーモンの人も、赤い目してたし」

「そうですね。人間に擬態する際は、当然白目と虹彩を分けますが、こちらのほうが視野も広いですし……。ちなみに、この目を見続けていると」

「見続けてると?」

「特に何もありません」

「ないんかいっ」

「ヴァンパイアならば誘惑の術を発動させる一種として、瞳を見つめるといった方法を利用しますが、わたくしたちデーモンは形無き力では無く、純粋な血肉を求める者が多いので、目が合ったらばっくりと」

「……フィーさん、なんか俺が会ってきた誰よりも魔族って感じするなー」

「お褒めにあずかり光栄です」

「あ、ほめ言葉になるんだ!?」


 結局、フィーがそばにいるので逃げに走ることもできずに、タイキはだらだらとソファに身をうずめながら彼女との他愛ない会話を続けていた。

 しかし、フィーとの会話は思っていた以上に興味深いものであり、デーモン種族の特徴などはこれから会うことになるだろうディアボロへの心構えになりそうだった。


「あっ、フィーは羽ある? 空とべるの?」

「ええ、今はヒトガタに擬態しておりますから、お見せすることはできませんが。服装もそれに適したものではありませんし」

「服……」


 タイキが首をかしげてフィーを見ると、フィーはおもむろに立ち上がりくるりとその場でまわってみせた。そして、ちょうどエプロンの結び目がある腰半ばを指差して言う。


「わたくしの翼はこのあたりにありますので」

「あー、そういやあいつもいっつも上の服着てないもんなー……やっぱり引っかかっちゃうんだ」

「わたくしたちデーモンの翼は肉体につながる一種の器官ですが、ヴァンパイアの翼は概念的な……幻のようなものですので、彼らは服の上からでも翼を出せるそうです」

「ロティたちの羽は、見たことないかな?」

「必要性の高いものでもありませんし。彼らの翼は飛行補助用です。わたくしたちやビーストは、翼なくして飛べはしませんが」

「ほえー」


 と、そこでタイキの腹が鳴った。ぐぎゅう、と音を立てるタイキの腹部を見て、少しばかり目を見開いたフィーと、思いっきり聞かれたことを恥ずかしがり丸くなったタイキで、目を合わせる。


「……なにかお食事をご用意しましょうか」

「うう、すみません……もっというなら、血肉とかよりも人間向きのご飯だとうれしいです」

「かしこまりました」



※ ※ ※



 二十分ほどして、フィーが用意したのはまさに、タイキの記憶の中にもあるフレンチフルコースさながらの料理たちだった。ほかほかと湯気を立てているスープとやわらかそうな白パンを前に、タイキは目を見開いてぷるぷる震えている。


「……これ、食べていいの?」

「ええ、ネクロマンサーのお口にあえばよろしいのですが」

「あっちの温野菜も、きのこソースのかかったオムレツも、鳥のソテーもこっちのスープもパンも!?」

「はい、すべてどうぞ」

「やったあああああああああ!!!!」


 示されて、タイキは嬉々としてナイフとフォークを構える。鶏肉やオムレツをほおばり、グラスに注がれた水をごっきゅごっきゅと飲み干す。

 ……実は、異世界にきて、ここまで手の込んだ料理を食べたのは初めてだったりする。


「ふぁっお、おいひい!」

「……それは、よかった、です」


 料理に夢中だったタイキは、フィーが料理を平らげていく満面笑顔のタイキを見ながらぷるぷる震えていることに気づかなかった。すべての料理を食べきって、タイキは満足そうにソファにダイブする。


「けぷ、あ、行儀悪いってデルにしかられる……まあいっか! ごちそうさまー」


 優に大人三人は座れるソファであったため、そのまま寝っ転がって寝てしまうという手もあったが、さすがにフィーもいる前でそれはないだろうと座り直す。そこで、ようやく肩を震わせているフィーと視線があった。


「ぷくっ」


 無表情なのに、唇の周りが膨れて音が出た。吹き出したらしい。


「……えーっと、そんなにおかしかった?」

「いえ、すみません。あまりにも可愛らしかったもので」

「かわ!?」


 とうとうデーモンにまで可愛いもの扱いされるのかと頬を膨らませたタイキは、足をばたばたさせながらぼそりとこぼす。


「あーあ、もう、こっちに来てからずいぶん経つよ! ディアボロさんってまだこないのかなー。早く挨拶して帰らなくちゃなのに。ていうか帰りたいよ! デルに怒られる!」


 うがー、と両手を挙げて叫ぶと、回答は案外近いところから聞こえてきた。


「そんなに会いたい?」

「……?」

「そーんなに、『僕』に会いたい?」


 さっきからずっと聞いていたはずの声なのに、なぜかまったくの別人に聞こえて、タイキはそろりとそちらに視線を向ける。目が合ったのは、無表情をくずしてにんまりと少々品のない笑みを浮かべた、侍女。


「フィー?」

「ふふふ、やっぱり、新しいネクロマンサー、すっごいかわいー!」


 そう叫ぶと、彼女は今までの礼儀正しさをかなぐり捨てて、満面の笑みでもってタイキに抱きついてきた。

さて、今度こそタイキは自身の身を守れるのか。

これ以上年齢指定つけるのはあれなんで、是が非でも守ってもらわねば困りますがね!


すいませんお久しぶりです。読んでくださる方ありがとうございます……。

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