(28) ~ 嵐の予感
ほの暗い、赤き月の結界にて。
「……なあ、どうすんだよ。カンッペキに目ぇつけられたけどさ」
「…………」
「このままだと、そのまま気に入ったってかっ攫うぜ? あの方は」
「…………それが、一番マズイ」
闇の中で顔を突き合わせる、二つの影。
二人は同じ問題について考えていたが……答えは、盛大な溜息だった。
※ ※ ※
「むーん」
アンデットの白き月の結界において、祭壇からの『供給』を終わらせたタイキは、デルフェールとホロ、そしてリッパーに囲まれながら、首をかしげていた。
「どうされました? タイキ。先日から何か悩んでいるようですが」
「ひょっとして、タイキの力の使いどころってぇやつかい?」
「あ、ううん、それじゃなくて……そういえば」
そこで言葉を切って、タイキは自身の両手を見下ろす。
「『聖者の加護』って、なんだったんだろ……」
ぽつりとつぶやかれた、その言葉。
ごく小さなつぶやきだったが、その中でも無視できない言葉を拾ったデルフェールが、目を見開いて問いかけた。
「『聖者の加護』、なぜ、その名称をあなたが?」
「え、デル、知ってるの?」
とたん、挙動不審になるデルフェール。しかし、今回はタイキに対してというよりも、そばにいるリッパーやホロの方を何度も見比べて、頭をかきむしっている。
「んだよデルフェール、てめぇなーんも言わねぇでこの先すむと思ってんのかぁ? あぁん?」
『さすがに、あなたは隠し事が多すぎる気がしますが……』
「い、いえ、ですがさすがにこれはー、そのー」
リッパーの太い腕(骨?)に羽交い締めにされ、身動きがとれなくなったデルフェールは、もともと青白い顔をさらに白くさせてもがいた。デルフェールがそこまでうろたえるのを見て、タイキは肝心なところを伏せつつ、こう聞いてみた。
「ね、それ、ひょっとして俺とデルの共通点に関係してる?」
「はぁん? おいデルフェール、てめぇとタイキの共通点だぁ?」
タイキの言葉を聞いて、リッパーはあごの骨を限界まで開くと、首をかしげた。それと同じ方向にデルフェールも首を押され、「ちょ、首は取れたらまずいんですってば!?」と叫び声を上げている。さすがにこれ以上追求するのはかわいそうだと思い、タイキはリッパーを止めようと近づいた。
そこへ。
「なんっっっっっで家にいねぇんだテメェはよぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「ぉおおおおああああああああああああリジェぇえええええええええええ!?」
大絶叫とともに、普段の数倍赤目をぎらつかせたリジェラスが降ってきた。その勢いに押され、タイキは思わず尻餅をつく。同じく彼の突然な登場に驚いたデルフェールとリッパーも、お互いを突き飛ばしてぶっ倒れた。
「な、なにをそんなに慌てて……」
「デルフェール!!! いいか今すぐ即刻とにかくタイキをどっかに隠せ!!! こうなったらどっかあいてる墓ん中でもいいから!!!」
「リジェ俺まだ死にたくないんだけど!?」
「死にたくなけりゃ言うとおりにしろっつのぉおおおおおおおおおおおお!!!」
だぁあああ!!! と叫んで髪をかき混ぜるリジェラスの取り乱す姿に、これは何かあったらしいと考えたタイキは、立ち上がって彼の腕をつかんだ。
そのまま呼びかけようとすると、リジェラスの後ろからぬっとヴォーゴも姿を見せた。驚いてそちらを見上げると、ヴォーゴはデルフェールの方へ向き直り、ぼそりとつぶやいた。
「……シェル」
「「みなまで言うなぁあああああああああああ!!!」」
なぜか、魔人がゾンビとバーサーカーの一撃で沈められた。
「理解しました、しましたのでリジェラスありがとうございますタイキ逃げますよ!!!」
「え? いや当の俺が何も理解してな」
「とにかく家に戻らねぇとっ! そらぼやぼやしてんじゃねぇ!!!」
「リッパーさん怖いよ!?」
あまりの友人たちの豹変具合、慌て具合に、タイキは腕をひかれながら疑問符を飛ばしまくる。
と。
(あれ、シェルって確か、前に聞いたような)
するりと。
誰かの腕が、タイキの首に絡みついた。
「キミが、新しいネクロマンサー?」
大変、お久しぶりです。
プロット状態で放置でしたが、序文だけは書いていたので、それを投稿しに参りました。
そんなこんなで、『第三部:魔神編』スタートです。
……ぶっちゃけ、ここから先R指定かけなきゃやばいかなぁと思いますが、どうにか緩和させたいと思います←←←
いや、グロくはないよ。グロくはないですよ。