外伝(7) ~ タイキの能力
そういえばさ、と屋敷で食事をしながら、タイキは正面に座るデルフェールに声をかけた。
「俺、能力わかったかもしんない」
「なんと、それは今回のことで?」
「うん、多分精神的にぎりっぎりまで追い詰められたからだろーけど……あ、ごめん今のナシ。デル恐い!!!」
「……はい、失礼しました。それで、一体どんな力だったんです?」
「うん、幽体離脱っぽいんだよなー。魔力を使った気もしないし、それ以外だったらネクロマンサーの特殊能力じゃないかって」
ゆうたいりだつ、とデルフェールが首をかしげる。あれ、伝わってない? と少し困った顔をしたタイキは、残りのパンを平らげると、ホロに念力で自分の身体を支えるよう頼んだ。
「んじゃ、ちょっと今やってみるよ」
「はあ……」
いまだぴんときていないらしいデルフェールとホロは、椅子に座って目を閉じ、瞑想状態のようになったタイキを、少しばかり不安そうに見つめる。
と、突然タイキの身体から力が抜け、身体がかしいだ。デルフェールが椅子を蹴倒し、ホロが慌てて彼の身体を支えるのは同時。
「た、タイキ!?」
『……る、デルー、おーい!』
そこへ、鼓膜ではなく頭に直接響くようにして、タイキの声が聞こえてきた。きょろきょろと辺りを見回すと、ちょうどテーブルの上にぼんやりとした、ホロウフレアよりも尚薄い白い光が見え始める。光は少しずつ形を整えると、半分透き通ったタイキの姿をとった。
「これは」
『ん、デルなら見えるんじゃないかなって思ったけど、やっぱ見えてるし、話もできるんだね』
これだと空飛べるんだよーと言って、空中をふわふわ移動するタイキだったが、次第に自分も身体のことが心配になったのか、ホロに支えられたままの身体へ近づいていく。
『っと、わ!?』
すると、タイキの姿がくずれ、白い光が素早くタイキの身体に吸い込まれていった。直後、タイキが目を覚まし、呆然として口を開く。
「び……っくりしたー。あんなふうに急に吸い込まれるんだ」
「あれが幽体離脱……つまり、肉体と魂の分離ですね。なんといいますか、能力まで風変わりですね」
「え、そうなの? アンデットとかゴーストならではって感じの力な気がするけど」
「確かに」
デルフェールは自分が蹴倒してしまった椅子を直すと、タイキのそばに近づいて、その頭をなでた。
「おめでとうございます、タイキ。ですが、なかなか使いこなすには骨が折れそうな能力ですね。魂のみの活動が可能ながら、その間肉体は完全に無防備なのですから」
「そこなんだよなあ……まあ、ちょっとずつ考えてくよ」
『ネクロマンサー、頑張ってください!』
「ありがとうホロ!」
もこもこな白フクロウをぎゅっと抱きしめて、タイキは満面の笑みを見せた。
もう一つの外伝を押しのけて、補足的につっこみました。
あと、これと同じように『聖者の加護』についても『王宮編』で解決することがなかったので(本当は解決する予定でしたが;)、それについては『魔王編』までお待ちください……。