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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第二部:王宮編
33/62

(27) ~ ただいま

 感じた風は冷たく、しかし、それ故にとても懐かしく。

 ぱっと目を開くと、見慣れた薄暗い、永遠の夜の世界。

 結界『永久墓地』。


 タイキの、第二の故郷。


「わあ……!」


 叫んで、見回すと見慣れた面々が騒々しく出迎えてくれた。スカルやファントムアーマー、ゾンビにマッドハンド、ゴースト。視界を埋め尽くす魔族達に、満面の笑みを浮かべる。


「みんな、大丈夫だったんだ!」

「ええ、あなたが最後に放った波動。人間達の気力を根こそぎ奪いとり、私たちへの生命力へ変換してくれた、あの力のおかげですよ」

「じゃあ、デルも? ていうか、デル灰になってたよね? 生き返った、の?」


 デルフェールの服の裾をつかむタイキは、気になっていたことを聞いてみた。デルフェールは笑って首を横に振ると、足下の土を手にすくいとった。


「私たちアンデットは、命の円環を外れた魂が朽ちた身体に宿って動く、理から外れたもの。神気を受けて魂が強制的に浄化されればひとたまりもありませんが、外部からの攻撃で身体が朽ちても、結界内であればじきに回復します。あの人の剣は、魔族対策に神気が宿っていたので危なかったですが、すぐにタイキから力が補給されましたから、こうして復活できたのですよ」


 へえ、と頷くと、背後からがっしぃ! と勢いよく抱きつかれて思わず前につんのめった。


「ああっタイキ、タイキ! よかったわほんっっっとによかったぁあああ!!」

「くっくるし……苦しいってゼフィ!?」

「タイキを押しつぶす気か」

「なによぉさっきまであんたが抱えてたじゃない!」


 ぎゃいぎゃいとタイキを間にはさんで言い合うゼフィストリーとロスティスラフの姿に、初めて見たヴァンパイアたちは目を白黒させていた。

 と、言い合いながらもタイキの顔色を見たロスティスラフは、真剣な顔つきになると、いささか乱暴にゼフィストリーの手から彼を引き離し、デルフェールに預けた。


「早く屋敷へ連れて行け。あれだけの時間地上にいた上、ずいぶん痛めつけられたのだからな」


 そんな、平気だよ。そう答えようとしたタイキは、ふっと視界が暗くなったのに気づいて、あれ? と首をかしげた。つもりだった。

 名を呼ばれ、抱き留められ……そこでタイキの意識は途切れた。




※ ※ ※




 それから、タイキはベッドの住人となった。フクロウ姿のホロたちにもふもふと囲まれながら、果物や木の実、そしてうさぎの肉をあぶったものなど、人肉以外でタイキが食べられるものが連日届けられた。


「おいしい! 最高! ていうかデル料理の腕あがったよね、お父さんっていうかもうお母さんの領域だよ……」

「いえ、そこまで言われると……単に香辛料をすり込んで、焦げないように焼いただけですから」

「ちなみに調味料とかってどこから手に入れてるの?」

「ロスティスラフ様が横流ししてくださってるんですよ。ヴァンパイアは人間社会に溶け込んで暮らしているものも多くいますから。そのツテで」


 もりもりとあぶり肉を食べるタイキを見て、デルフェールは笑みを深くした。


「と、タイキ、それを食べ終わったら、少し気分転換しませんか」

「気分転換?」


 肉を食べ終わったタイキは、手を拭ってベッドから飛び出すと、なになにーとデルフェールについていった。デルフェールは部屋の衣装箱からタイキの新しい服を取り出すと、それを着るよう言う。


「ずいぶん顔色もよくなりましたし、みなが貴方に会いたがっているんですよ。祭壇で、今か今かと末弟ます」

「えっ、マジで!? 行く!」


 タイキは手早く服を着込み、ぬらした布で顔を拭くと、デルフェールに頼んで下ろしていた髪をひとまとめにしてもらった。準備が整ったところで、ホロを一体抱きかかえ、数日ぶりに屋敷の外へ出る。

 デルフェールに案内され、たどり着いた祭壇周辺は、お祭り騒ぎだった。


「おーうタイキぃ! 元気そうじゃあねぇかっ」

「おっせぇぞー」

「リッパーさん、リジェ、久しぶりっ」


 タイキのために用意されているであろう木の実ゾーンの近くに座り、相変わらず酒をしこたま身体にぶちまけているリッパーと、行儀悪く木の実をつまんでいるリジェラスに駆け寄り、タイキはタックルをかました。それを受けたリジェラスはバランスを崩し、酒まみれのリッパーの鎧に後頭部からぶつかる。


「っでぇ……!? ってベッタベタしやがるし! おいリッパー、お前酒ぶちまけんならあっちいけっつってんだろ!!」

「あぁーん? うっせぇ! ガキが俺様の酒の飲み方に文句つけんじゃねぇよ!!」

「あらぁん、タイキの前だっていうのに、うるっさいヤツらねぇ」


 すると、影からするりと現れたゼフィストリーが、タイキの首に腕を絡めて抱き寄せる。リッパーは彼女の姿を見て、空の酒瓶を振り回した。


「くーもーおーんーなぁあああああ!!! タイキから離れろって何っべん言わせんだぁああ!?」

「やあよっ、んべーっだ」


 月明かりの下、食べ、飲み、踊る様は、記憶にある人間の祭りとなんら変わりはなかった。

 タイキは笑い泣きしながら、デルフェールの方を見る。

 彼は笑いながら手を挙げると、陽気に踊っていたゾンビやスカルたちが、声をそろえて叫んだ。


「ネクロマンサー、おかえりなさい!」

「よくぞお戻りに……!」

「おかえりなさい」

「おかえりー!」


「おかえりなさい、我らがリーダー」


 胸がいっぱいになる。帰ってきたんだと、思わせてくれる。

 立ち上がると、タイキは両手を広げ、答えた。

 今は、ここが自分の帰る場所。


「ただいま!」

これにて、『第二部:王宮編』の本編終了です。

いや……たらったらと申し訳ありませんでした。応援してくださった方には感謝の念が絶えません。

新しい生活がはじまったりバイトをはじめたりで、いろいろ生活リズムも狂ったりもしてますが、なんとかやっていけてます。


さて、現在私は本館『カゲナシ*横町』の方でも新連載を始めてしまいました。ので、そちらのストックが切れたら、そちらの小説にかかりきりになる可能性が高いです;

……というか、本当に気分で書いてるので、本館の作品か、なろう様での作品か、はたまた日の目を見ていない作品か、どれを書きに走るかまったく予測不能です。

ですので、あらすじ部分に書かれている ※更新不定期 のメッセージは下げないでおこうとおもいます。

ていうか、よほどストックしておかないと、毎日書くとか無理だから定期更新になるわけないんだよね……(´・ω・`)


長々と失礼しました。

ここからは、なんとなーく考えている外伝を二話ほど投下して、人物紹介を最後にはさんで、準備期間をおいてから『第三部:魔神編』をお送りしたいと思います。


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