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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第二部:王宮編
29/62

(23) ~ 交渉…宴か救出か

ちょっとタイトルがおかしなことに……orz

まっことお久しぶりでございます。何ヶ月ぶり? 三ヶ月ぶり!!!

とりあえず一本だけお話ができあがりましたので投下……連チャンにしたかったんですけどね。もう無理ですあばばばば


 異変はゆっくりと、しかし確実に起こった。

 綺麗にたたまれた布を両手に抱えて、滑るようにして廊下を歩いていた女官は、自分が通り過ぎようとしている廊下の中央にぼんやりと赤い光が宿るのを見て、ぴたりと足を止める。それが何なのかは皆目見当もつかなかったが、とにかく、『恐ろしい』。

 と、女官が見ているなかで、光がはじけた。


「ッッッ!!?」


 そこに、光と入れ替わるようにして現れた者たちを目の当たりにして、女官は腰を抜かす。壁に背を預け、ずるずるとへたり込んでしまう。

 まず目に入ったのは、銀髪赤眼の美丈夫。だが、異様に血の気のない白い肌、そして尖った耳の形から彼が人間ではないことがうかがえる。

 そして、彼の後ろには彼と同じくらい美しい容姿の男女が数名、それと人の身体に山羊の頭をした悪魔、腐りきった肉を布きれで覆っているゾンビたち、足を引きずっている艶めかしいドレス姿の女性……さらに、彼らの周囲を十数の淡い光が漂っている。

 先頭に立つ美丈夫は、ちらりと廊下の端で腰を抜かしている女官を見やった。瞬間彼女は、ひっ、と悲鳴を口からもらす。しかし、その頃には彼らは堂々とした足取りで、廊下を真っ直ぐに、女官を無視して歩いて行った。


「哀れで愚かしい。……では、行くぞ」




※ ※ ※




 玉座の間に集まる王や王妃、重鎮たちの間に瞬く間に広がる情報。それは防御結界による城の警護を任される神官たちからの緊急報告であった。


「城内に魔族の反応を確認!?」

「転移だと、神力の濃度がもっとも高いこの王都に……」

「気配が大きすぎて……おそらくは、さ、最上級……」

「馬鹿馬鹿しい!!!」


 報告に来た神官長は、顔色を無くしたまま、必死にこぼれ落ちる汗を拭いながら、震える口で訴える。


「それと、へ、陛下……防御結界の主要装置五つのうち三つの反応がありません。残る二つにも、わたくしの名で増援の神官、騎士を派遣してはおりますが、連絡がございません」

「……そうか」


 苦々しい表情で額を押さえ、もはやそれしか言うことのできない国王の隣で、王妃は唇を噛み、目を見開いて全身を震わせていた。自身が生活するこの城の中に、存在全てが厭わしい魔族がいると思うと、今にもヒステリックに叫びたいに違いない。


「ヤツらの狙いは、やはり……」

「は、結界に向かわれた騎士団が回収してきたという、最上級魔族」


「その、奪還しか思いつかないだろう?」


 玉座の間の荘厳な扉が、一瞬で吹き飛んだ。その轟音は、その場に集まっていた人間たちを強行の渦にたたき落とすには、十分すぎるものだった。


「五月蠅い。黙れ」


 阿鼻叫喚の室内に向けて、怜悧な声が響き渡る。すると、パニックに陥って絶叫をあげていた人間たちは一人残らず、口を閉ざして目を剥いた。そして、慌てて手で口をひっかくような動作をするが、口は開かず声も出せなければ、息もできない。やがて、そのままばたばたと意識を失うものが出てきた。

 口とのどを押さえて倒れ込む人間たちを眺めながら、ロスティスラフは呆れたように言う。


「単に口を閉ざしただけだというのに、鼻でも息ができるというのを知らないのか、この愚か者どもは」

「ま、魔族……ヴァンパイアか」


 ロスティスラフの姿を見て、口を閉ざされることを免れた比較的冷静だった者が、ぽつりとつぶやく。しかし、彼もロスティスラフの背後からぞくぞくと現れる魔族の姿を見て、言葉を失う。


「で、デーモン、アンデット……!? アンデットは、まだ分かる。だが、なぜ―――っ!?」

「あらぁん、実はここに、ビースト代表もいるわよ? ってことで、全種族大集合って感じかしら……」

「ふん、僕の部下たちに支えられなければ、ここに着くこともできなかったろうに」

「やっかましいわね」


 ゼフィストリーはロスティスラフの言うとおり、ヴァンパイアの一人に支えられながら頬を膨らませた。


「幻覚魔術で痛みを紛らわすのも、それが精一杯だ。戦えもしないというのに……はあ、僕も全く、戦力にならない者を連れてくるなんて血迷ったものだ」

「ふふん、タイキに会いたいっていうのが一番の理由でもいいでしょぉ? 戦うのは、ま、今日はあんたたちに任せるわよ」


 そう言うゼフィストリーの隣で、ヴォーゴが大鎌を背負い直す。先端につけられた鎖が刃とぶつかって、冷たい金属音を響かせる。


「……まさか、アンデットのリーダーを捕らえたことで、すべての魔族が集まるとは……」

「ふ、貴様らは一番手を出してはならない魔族に、手を出したというわけだ。さて」


 こーん、と甲高い音が鳴り響いて、玉座の後ろにある隠し扉や、その他の出入り口から騎士や魔法使い、神官たちがなだれ込んでくる。十倍以上の人数に取り囲まれながらも、ロスティスラフは冷笑を浮かべ続け、そっと自身の口元に人差し指をあてた。


「タイキは……今代のネクロマンサーは、どこだ? 吸血貴族(ヴァンプ)たるこの私が直々にやってきたのだから……今日は、人の歴史が一つ途絶えるような、素晴らしい宴になろうぞ」


 ロスティスラフの言葉に、迎え撃とうと戦意を高めていた騎士達が愕然とする。ヴァンプといえば、もはや伝説といっても良いほどの最上級魔族である。

 カチ、カチ……と騎士の青年は耳の奥で鳴り続ける音に眉をひそめた。そして、気づく。誰かの鎧がこすれる音でもなければ、剣のつばと鞘がぶつかる音でもない。それは、青年自身の歯がかみ合わず、ぶつかっている音だった。


 恐ろしい。


 ゆっくりと、ロスティスラフの右腕が上がる。あまりのプレッシャーに、神官たちもこの場にいる人間を守るための結界をはる余裕を奪われ、呆然としていた。

 そこへ。


 ドッゴン、ガシャン!!!


 重鎮たちが立っている方の壁、一面に蔓草の模様が描かれたそこが、普通の扉のように開け放たれると、その隠し通路から真っ黒な影が飛び出してきた。影は部屋一面にしかれた絨毯に足をとられ、顔面からすっころぶ。影はしばらくうずくまっていたが、ゆっくりと顔を上げた。


「いってぇ鼻、鼻曲が……って、やっぱロティじゃん!!?」

「「タイキ!」」


 ロスティスラフとゼフィストリーの声が、重なる。

 紛れもなく、魔族らしくないアンデットの新しいリーダー、タイキであった。




※ ※ ※




 少し、時は遡る。


「えーっと……うわ、ホントだみんないる……ていうかこれロティ? この一番でっかくて殺気だってる気配ってロティだよね!? やばい、このままじゃ城の人間見境無く皆殺しにしちゃう、ていうか城がなくなるっ!! ねえヤバイよ!?」

「ロティ、というのは貴様の手駒のなかでも強力な魔族か? ふん、いくら強大な力を持つとはいえ……」

「ちょっとおじさん、さっき知らせに来てくれた人、アンデット以外にも魔族来てるっつってたじゃん」

「お、おじ……っ」


 ひくっ、と頬を震わせるヨアヒムを無視して、タイキはデイジーに視線を合わせる。


「ロティっていうのは、えと、ロスティスラフ、だったかな。ヴァンパイアで一番強い……ヴァンプのことだよ」


 タイキの説明で、封印の間にいた人間たちが残らず凍り付いた。


「……そ、んな、馬鹿な。なぜ他の種族のリーダーを、わざわざ!?」

「うーん、ロティにはかわいがってもらったしなぁ……一緒に遊んだりもしたし。にしてもすごいな。…………いや違う、感心してる場合じゃなくて!!!」


 地団駄を踏みながら自分の頭を叩くタイキを、あっけにとられながら眺めているデイジーだったが、次にタイキがつぶやいた言葉にさらに顔色をなくす。


「なんか、みんな人の気配が多いところに真っ直ぐ向かってるみたいなんだけど……ねえ、今この城の中で一番人が集まってる場所って、どこ?」

「……きっと、あなたのことで会議をしている、玉座の間……」


 デイジーは息をのみ、ヨアヒムを振り返る。


「団長」

「……魔族の言うことを信じるなど、これほど屈辱的なことはないがな……しかし、最優先されるは我らが王の安全。我らも玉座の間へ」

「じゃ、俺も連れてってよ」


 さらりと言ったタイキに向けて、ヨアヒムは冷たい視線と剣の切っ先を向ける。


「それ、意味ないんだよな。俺は聖者の加護とやらのおかげで死ぬことは無いって言うし。あ、みみっちく攻撃するようなことも考えないでね。俺、自分から突っ込んでくから。そうやって『死なない攻撃』を『死ぬ攻撃』にすれば、加護は発動するだろうし。あと、さ」


 揺れる剣先をぼんやりと眺めながら、タイキは言う。


「あんたたち、怒ったロティを止められると本気で思ってる?」 


 剣を構えるヨアヒムの背後で、数名が息をのんだ。タイキの、その、子供と思えない瞳の暗さに。

 一瞬それに、その場にいただれもが飲み込まれ……いや。


「あ」


 タイキの表情が、先ほど仲間が来たと騒いでいたときのような生気あるものへと変わる。ヨアヒムがゆっくりと首をひねると、蒼白ながらも何か決意したような、そんな鋭さを思わせる表情を浮かべるデイジーが、タイキの右手を握っていた。


「連れて行ってあげる。きっと、あなたが出て行くしか、方法はないだろうから」

「フローマー、貴様……!」

「団長」


 一言、そう言ってデイジーはタイキの手を握りなおし、ヨアヒムと目を合わせる。

 この展開に思考が停止していた神官や他の兵士たちは、しかし慌てて戦闘態勢を整えると、タイキだけではなくデイジーにまでその矛先を向ける。

 言うべきは、ただ一つ。


 裏切り者!!!


 デイジーはゆっくりと目を伏せた。つかの間、震えた手がタイキの手を取り落としかける。

 しかし、逆にタイキに握りかえされ、デイジーは目を見開いた。


「ありがと、デイジーさん。オレ、頑張って止めてくる。ぶち切れたみんながどうなるのか、まだあんまり見たことないからわからないけど……。ここには、レイみたいな人も、すごく少ないだろうけど、いるんだし」

「レイ……?」


 タイキがぽつりとこぼした名前に眉をひそめていたデイジーだが、タイキが手をしっかりと握ったままその場を歩き出したのを見て慌てて足を動かす。


「あ、そーだ。じゃあおじさんも来てよ。オレが逆に向こうと合流して、この城……っていうか町をめっためたにするんじゃないかっていうかそれしかないだろって顔に書いてあるよ、心の声」

「んなっ」

「はい、砕けてるけど鎖持って、剣もしっかり支えて。はい、行こうデイジーさん。なんか殺気が膨れあがってるからそろそろやばい」

「え、ええ……そちらへ」


 騎士たちが眼を白黒させている間に、タイキはデイジーとヨアヒムの二人を連れて封印の間を出て行ってしまう。部屋を出た瞬間、妙に身体が軽くなったような気がして、早歩きで廊下を通りつつ、タイキは首をかしげた。


「あー、やっぱ一応あの部屋負担にはなってたわけか」

「……通常の魔族であれば五分と持たずに消滅する、この国で最も清められた場だったのだがな」


 タイキがまとうゆるい空気にとうとう気力が持たなくなったのか、鎖と剣をそれぞれ手に持ちながらヨアヒムはぼんやりとした頭で答えてしまう。そんな団長の哀れな姿に、デイジーは『少し前まで私もああだったのよね』と冷や汗を垂らしている。

 誰もいない廊下を駆け抜け、直通だと言われる隠し通路を稼働させる。デイジー、タイキ、ヨアヒムの順で細長い階段を登っていくと、薄い戸板が現れた。デイジーがそっとそれを普通の扉のように開いていくと、妙に静まりかえった玉座の間の空気が流れ込んでくる。

 そこへ響く、朗々とした男の声。


「あ、ロティだ」


 言って、タイキはいてもたってもいられず、デイジーが三分の一ほど開いた戸板の隙間からするりと這い出してしまった。まだ身体に絡んでいた鎖は完全に砕かれ、その場にころころと転がる。

 そして。


 ドッゴン、ガシャン!!!


 慌てて駆けたせいで、絨毯に足をとられその場でずっこけた。


「いってぇ鼻、鼻曲が……って、やっぱロティじゃん!!?」

「「タイキ!」」


 ロスティスラフとゼフィストリーが、そろって声を上げる。タイキは立ち上がろうとして……ふと二人の後にいる人影に目を向けた。

 耳がとがっていてやけに美形な人たちは、ロスティスラフの配下であるヴァンパイアだろうと思い、あああんなにホロたちがいる、ゾンビもいるし、と思ったところで。


 穏やかな、まるで魔族という肩書きが似合わない表情が、見えた。


「タイキ、よくぞご無事で」

「あ」


 目を、見開く。

 そのふちから、ぽろりと涙が転がり落ちた。


「で、る」


 名前を呼んで、後悔した。そうしたら、消えてしまうかもしれない。そんな意味のわからない不安にかられて。けれど。


「はい、我らがリーダー。ご心配をおかけしました」


 彼は、ちょっとばかし小綺麗で、人間並みに知識を持っている変わったゾンビ・デルフェールは、ちょっぴり表情に苦さを交えて、お辞儀した。それをみて、タイキの中の感情が爆発した。


「でる、デルだ。生きてた!!!」

 

ご都合主義ここにきわまれり。

さて、このあとどう収拾をつけるのやら!

……期待しないでくださいごめんなさいorz

では、じゃあ一ヶ月後くらいにでも(嘘です責任持てません)

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