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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第一部:結界編
19/62

(15) ~ 真剣トランプ(?)バトル!

…………おかしいな? 更新停止のはずだったのに、な?

あと、タイトルも若干おかしい。

これじゃあ普通のお茶会にしたほうが良かったわ!!!

トランプの出番一瞬じゃねーか! こらぁ!


というわけで、どうぞ。久しぶりの更新。やらかしたわー……orz


 こんこん、と控えめにノックされた玄関扉を、ホロウフレアたちに近くの村から失敬してきてもらったパンをかじっていたタイキは驚いた表情で眺めた。

 基本的に、最近タイキの屋敷を訪れる者はノックをしない。下級魔族たちは窓から低頭して声をかけてくるし、親しいものたちはノックをするような礼儀正しい性格の者は……はっきり言って、いない。


「誰だろ? ねえデル」

「私が応対しましょう」


 タイキの前に紅茶のカップを置きながら、デルフェールはお盆をキッチンに戻し、やや早歩きで玄関へと向かった。行儀悪く、体を反転させて椅子の背もたれに顎を乗せながら、玄関の方を伺っているタイキがデルフェールの肩越しに見た人物は。


「…………うっわ、超美形」


 思わず口に出してしまうほど、見目麗しい金髪の少年だった。ぴん、と髪の間から飛び出している尖った耳と相まって、タイキは一瞬「エルフ?」と言いかけた。だが、そんな美少年の背後に立っている人物を見て、言葉を失う。

 黒いマントに、黒いシャツ。さらりと揺れる銀髪に紅い瞳は変わりないが、以前初めて会ったときのような威圧感や冷たさとは全く異なる、気の置けない友人に向けるような、そんな笑み。


「おお、久しいな、タイキ!」

「ロティ!?」


 ほぼ条件反射のように彼、吸血貴族(ヴァンプ)ロスティスラフの愛称を叫んだタイキは、言った瞬間美少年が崩れ落ちたのを見て首をかしげる。


「えーっと、もしもし? どーしたのさ、そっちの美少年は」


 とたん、美少年は冷や汗を一筋垂らしながら、どこか引きつった笑みを浮かべながらタイキに向けて恭しく一礼した。


「い、いえ! 失礼いたしましたネクロマンサー。わたくしは上級魔族のヴァンパイア、名をツェーザリと申します。我が種族のリーダー、ロスティスラフ様の第一の側近でございます」

「あー……なにやらものすごい被害をこうむったであろうとみんなが予想してた、ロティの側近さん……って、若ぁ!?」

「あ、わたくしは変異種でして、幼体の姿ではありますが、生きている年月だけを言えば成体となんら変わりません」

「へえー、体の成長が止まってるってことか」


 タイキは椅子から降りると、食べかけのパンを皿に戻し、とことこと歩いていってデルフェールの隣に並んだ。とりあえず、軽く頭を下げて歓迎の意を示す。


「えっと、ロティは久しぶり、ツェーザリは初めまして。ネクロマンサーのタイキ……っていうのは、ロティから聞いてるかな? アンデットの結界へようこそ。ってわけで」


 頭を上げると、また面白そうに笑っているロスティスラフと、驚きを通り越してもはや愕然としているツェーザリとを見比べながら、タイキはまた、首をかしげた。


「一体、急にどうしたのさ?」

「ツェーザリたちに押しつけられた案件やら雑用やらをすべて済ませてきたのでな。遊びに来ただけだが」

「あ、そ、そう……で、あとツェーザリ、は、なんでそんなまたがっくししてんの?」

「い、いえ! その、ロスティスラフ様を、そのような愛称で呼ばれるほど、仲がよろしいとは思ってもみなくて……」


 もごもごと答えたツェーザリに、タイキは軽くぽん、と手の平に拳を打ち付ける動作で応えた。


「そっか、そういや俺新参者だしなぁ……長いから呼びづらいって理由もあったんだけど、やっぱちゃんと呼んだ方が」

「タイキ、最初に言っただろう。魔族は実力一番だと。ツェーザリも何か不満があるのか」

「違います! 純粋に驚いているだけです。ネクロマンサー、わたくしが言うのもなんですが、我が主は以前ここを訪れた際、アンデットの皆様がたに多大なご迷惑をお掛けしたはず……なのに、なぜそこまで?」


 タイキは本当に不思議そうに尋ねてきたツェーザリの顔をじっと見つめていたが、突然フッと表情を和らげて二人を屋敷の中へ招いた。


「確かに、みんな吹っ飛ばされたりしたけど、それはそれ。暴走しなきゃ、ロティだってそんなに悪い人じゃないっぽいしさ。いろいろと聞きたいこともあるし、種族リーダーの先輩としてね」

「はあ……」

「とにかく入ってよ、玄関口で立ち話ってのもなんだからさ」


 タイキは二人の案内をデルフェールに任せ、自身はキッチンへと向かっていった。お湯がまだ残っていることを確認して、ポットの茶葉を取り替えたりカップを用意し直したりと、来客の準備を着々と整えていく。

 茶葉を蒸らしている間とっておきの果物を切り分けていると、居間の方がなにやら騒がしくなってきた。甲高い怒鳴り声、だみ声の罵声。ああーこりゃ来たな、と苦笑を浮かべ、タイキはさらにカップを増やした。

 何かあったときのためと作ってもらっていた、木製の大きなおぼんに伏せたカップやお茶の入ったポット、フルーツ盛り合わせの皿などを乗せて、タイキはゆっくりとキッチンから顔を出す。直通の居間では、予想通りの展開が繰り広げられていた。


「なんであんたはのうのうとタイキの屋敷でくつろいでんのよぉっ!」

「まあたタイキになんかしようもんなら、ヴァンプといえど容赦しねぇぜぇ!?」

「も、申し訳ありません、本当に!」

「ツェーザリ、あんたはいいの。コイツ自身が謝らない限りは意味がないのよっ」

「……あいつもやっぱ苦労してんなぁ。なあ、ヴォーゴ。やっぱデルフェールって、側近の中でも当たりくじひいてるよな。あのタイキに付いてるんだし」

「……………言うな、リジェラス」


 おそらく彼らの気配を感じ取ったのだろう、タイキの友人たちが勢揃いしていた。おかげで居間の人口密度はびっちりで、テーブルに近づくことも出来そうにない。

 どうしようか、と小さくため息をついたところで、食卓の椅子に座るロスティスラフの背後に立っていたデルフェールが気がついた。


「皆さん、一旦静かにしたらどうですか。タイキがキッチンから出るに出られなくて困ってますよ」


 とたん、全員が口を閉じてキッチンの出入り口に目を向けた。そそくさと脇に避けたリッパーに笑みを見せて、タイキは大きな重いおぼんを抱えたまま、ゆっくりと歩き出した。


「よい、しょ」

「大丈夫ですか、タイキ」

「俺らが運ぼうかぃ?」


 少しよろけながらテーブルへ向かうタイキを見て、デルフェールとリッパーが近づいてくる。タイキは首を振ってこれを断り、なんとか時間をかけてテーブルの上におぼんを置いた。タイキが軽く息を吐くと、周りで見守っていた面々もほっとした表情を浮かべる。


「タイキ、これは」

「あ、うん。頼んでいろいろ作ってもらったんだ。果物の方は、ゼフィのつてでビーストたちに頼んで、外の森から持ってきてもらったヤツ。お茶も、適当にハーブとか寄せ集めて作ったやつなんだけど……まあ、俺の味覚基準だから、他の人達はどう感じるか分からないけど」

「ネクロマンサー自身がブレンドしたのですか?」

「そうだよ」


 タイキに無理矢理座らせられたツェーザリは、慣れた手つきでカップにお茶を注ぐ彼を疑問符だらけの表情で見つめる。そして、気軽に差し出されたお茶とその風変わりな香りに、あり得ないだろうと思いつつ警戒心を抱いてしまう。


「あ、苦手な味だったら残していいよ。ブレンドするとき、みんなに毒草とか混じってないの確認したけど、できた味がダメだったらしょうがないし」

「いや、なかなか面白い風味だ。町で飲む紅茶とも全く違うが、ふむ……やや苦みが強いが、後味は爽やかだな」

「って、もう飲まれたのですか!?」

「なんだ、お前は飲まないのか。ネクロマンサーが手ずから淹れた茶だぞ」


 ツェーザリはロスティスラフの言葉にハッとして、慌ただしく「いただきます」とつぶやくと奇妙な濃い緑色のお茶をすすった。色からしてどんなキツイ味なのかと思えば、それほどでもない。


「……美味しい、です」

「そう? そりゃよかった。あ、ゼフィもリジェも飲む?」

「タイキの淹れてくれるお茶なら、何杯だっていただくわぁ」

「タイキー、ヴォーゴの分も! なんか気になってるみたいだからよ」

「はいよ。じゃあデルと俺の分も淹れよっか」

「ネクロマンサー、私もちょっと飲んでみたいです! いつも見てましたけど、言い出せなくて……でも、あの、皆さんがお飲みになるのなら、私も」

「いいよ。じゃ、俺のカップからね。……リッパーさんは」

「くぅっ、骨の体が憎たらしいぜぃ……俺は匂いで楽しむとすらぁ」


 わいわいと賑やかに、タイキを囲んで談笑する魔族たち。種類も違えば種族も違い、客観的に見ても根本的に相性が悪いだろうとしか思えない組み合わせの面々ですら、彼が間に入るだけで態度を軟化させている。


「面白いだろう?」


 ゆっくりと振り返ると、すっかりお茶を飲み干して果実の一切れをつまんでいるロスティスラフが、珍しく子どもっぽい笑みを浮かべていた。

 そして、おそらくは今の自分も。


「はい。わたくしも、もう少しお話しがしたくなってきました」

「彼なら喜ぶだろう。ふむ……では、彼が食いつきそうなものをそろそろ出すとするか」


 そう言って、ロスティスラフはふところに手を突っ込んだ。手の平サイズの黒い箱が取り出されたところで、タイキが興味深そうに近づいてくる。


「ロティ、それなに?」

「最近、人間の貴族どもの間で流行っているというゲームらしい。これがなかなか興味深くてな。さすがは暇つぶしを次々と考え出す、知恵のまわる生き物というか……」


 ぶつぶつと何やら皮肉混じりのことをつぶやきつつ、ロスティスラフは箱の蓋を慎重に開いた。そのまま勢いよく箱をひっくり返すと、箱と同じ大きさをした薄いカードが何枚もこぼれ落ち、テーブルの上一面に広がる。その絵柄を見たタイキは、思わず歓声を上げた。


「トランプじゃん! うわーすげぇ、この世界にもあったんだ、こんなおもちゃ!」

「とらんぷ、というのか、これは。僕もいくつかゲームのルールを部下から聞き出している以外知らなくてな」

「いや、俺がいた……その、地方じゃ、こういうカードのことをトランプって呼んでただけで、他の人がどう呼んでるかは俺も知らないよ。うわあ、でもすげぇ、ちゃんと数も種類もそろってる」


 きらきらと好奇心に目を輝かせているタイキを見て、ロスティスラフは満足そうに頷くと、勝ち誇った笑みを浮かべてタイキの背後に立つ面々を眺めた。リジェラスやデルフェールは苦笑いを浮かべており、ゼフィストリーとリッパーは今にもロスティスラフへ掴みかからんばかりの形相をしている。


「どうだ、タイキ。一つこれを使って遊んではみないか?」

「え、いいの!? でも俺、コレ使った賭け事みたいな複雑ルールなヤツはできないんだけど……」

「ふむ……、では、タイキが知っているゲームで、何か簡単なものを教えてくれ。実を言うと、僕もルールを丸暗記しているだけで、実際にやったことはない」

「あーそうなんだ。えーっと、俺が知ってて、みんなもできそうな簡単な……っていったら、あれがちょうどいいか」


 一人頷いたタイキは、おぼんをしまいカップを適当に押しやってから、けんのんな雰囲気を漂わせている面々に声をかけた。


「ねえ、これからやるゲーム、五人くらいいると楽しいんだけど、誰か参加してくれない?」

「ゲーム、ねえ。ねえねえ、それ、誰しにも勝ち目はちゃーんとあるんでしょう?」

「勝ち目平等じゃなかったらイカサマじゃん。そんなの許さないよ」

「じゃー俺もやってみるかな。おい、デルフェールはやんねーの?」

「私よりも、ツェーザリさんが参加された方がよろしいのでは」

「わ、わたくしがですか!?」

「あ、ちょうど椅子に座ってるしね。じゃあまずはこの五人でやってみるか!」


タイキ、ロスティスラフ、ツェーザリ、ゼフィストリー、リジェラスの五人が椅子に座り、他の者はさらにテーブルを取り囲むようにして、タイキがカードを混ぜ合わせるのを眺めていた。


「いい? 後ろで見てる人達は、俺たちが持ってるカードのこと、言ったら駄目だからね」

「それぐれぇならわかってらぁよ。見てるだけにすんぜ」

「よし、じゃあ、これからするゲームのこと教えるね。名前は……ババ抜き」

「ばばぬき?」


 予想通り、首をかしげた一同に内心思わず笑ってしまったタイキだったが、なんとか表面上は真面目くさったままで、カードの束から二枚、選んで場に出した。


「これ、俺の知ってる名前だとジョーカーっていうんだけど……」

「ああ、確かに部下たちもそう呼んでいたな」

「そこは同じなんだなぁ。まあとにかく、俺はこいつのもう一個の呼び方を知ってるんだけど、それがババなんだ」

「なんでババっていうんだよ?」


 リジェラスの直球な質問に、タイキは曖昧に笑って「そこまでは知らない」とごまかした。


「とにかく、今このカードの山には二枚のジョーカーがあるわけなんだけど、このうち一方を出したままにするんだ。で、この出したままのジョーカーはゲームに使わない。残ったもう一枚のババを山に戻して、これで遊ぶんだ」


 しゃかしゃかとカードを混ぜ直したタイキは、一枚一枚丁寧に、五人の参加者の前へと順番に配っていった。


「んで、カードはそのまま全部配って……ほい、できた。手札を見て。同じ数字のカードが二枚あったら、それをどっちも真ん中に捨ててって。こんな感じで」


 タイキはいいながら、三と八のペアをぽいぽいと場に捨てた。他の面々も、タイキと同じようにペアになったカードを場に捨てていく。


「なあタイキ、三枚あるやつは……」

「あ、一枚だけ手元に残して、残り二枚を捨ててー」

「えー……一気に無くしちまいたいな」


 つまんでいたカードをしぶしぶ手元に戻したリジェラスを見て、タイキはそれぞれの手持ちカードが六、七枚になったのを確認する。


「よし、それじゃあ俺から始めるよ。残ってるカードを他の人に見られないようにして、俺は隣にいるロティのところから、カードを一枚だけ引くんだ。ロティもカード、誰にも見られないようにして……」

「ふむ、こうか?」


 慎重に差し出されたロティのカードの中から、タイキは素早く一枚を引き、おっ、と小さく歓声を上げた。


「ほら、五のペアがまたできた。んで、俺はこのカードをまた場に捨てて……ペアが出来ていくごとにカードを場に出して、カードが手元から無くなればその人は勝ちってゲーム!」

「あ、あの、ネクロマンサー」

「ん?」

「それでは、ジョーカーが一枚余ってしまうのでは……」


 ツェーザリの質問に、にやりと笑ってタイキは答える。


「だから、ジョーカーを最後まで持っていた人は自動的に負け決定。後半からは、いかにしてジョーカーを他の人の手に渡らせるかっていう心理戦もあるんだよ」

「なるほど、なかなか奥の深いゲームですね」


 頷くツェーザリも、隣のゼフィストリーからカードを引き、三のペアを作って場に捨てた。その後、ゼフィストリーがリジェラスからカードを引き、なんのアクションも起こさないまま、リジェラスがタイキからカードを引いたところで一周目が終わる。


「さて、どんどんやっていこう!」



 ※ ※ ※



 一時間後。


「だぁあああ! もう一回、もう一回勝負だぁああ!!」

「ちょっとリジェー、もう十回戦やったじゃん……」

「ありえねぇ、ぜってぇ誰かイカサマしてやがるッ!」


「なぁデルフェール、ここんところまでで、こいつらの勝敗ってどうなってんでぇ?」

「ええと、一抜けしたのを数えれば、タイキとロスティスラフがそれぞれ二勝、ゼフィストリーが一勝、ツェーザリが……五勝ですね。ちなみにリジェラスは六回ジョーカーを持ったままで最下位です」


「こ、こ、こんちくしょぉおおおお!」

「リジェ、落ち着いて……次のゲームしようよ」

「いーや、一抜けするまではこれだ! これ以外やらねぇっ!」

「もう飽きたわよぉ……」

「も、申し訳ありません」

「なに、ツェーザリが謝る要素など一つもありはしないではないか。単純にリジェラスに運がなかっただけのこと」


「ロティもそういうこと言うんじゃない!」

「っだあああああああ!!!」

もう一話!

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