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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第一部:結界編
12/62

(10) ~ 就寝時の訪問者?

ほのぼのを越えました! うん、本来の空色レンズのノリです。


 『供給』以外で外に出ることが少なくなり、このまま本を片手に引きこもり生活突入か?、と思われたところで追加されたリジェラスによる魔術講義。これにより、タイキの一日ごとのスケジュールはかなりアクティブなものへと変わっていった。

 最近ではデルフェールも、そうしつこくタイキに永久墓地内で警戒するよう言い含めなくなってきており、その裏には、永久墓地の面々がタイキのことを認めてきているという事実があった。最初はリジェラスと二人きりになるのも渋っていたが、彼とタイキがどう交流しているのか、どんな会話をしているのか……そんな他愛もないことを話しているうち、デルフェールも若干身を引き始めた。


「タイキは、ここでの生活は楽しいですか?」

「そりゃもちろん! 今のところ、会ってる人はみんないい人だしね。あ、デルは格別だけど」

「あ、ありがとうございます」


 ……その日の夕食時、ビーストの下級魔族たちに頼んで、結界の外の森から採ってきてもらった木の実やら兎の肉やらをアバウトに調理したものを食しつつ、タイキはちらりとダイニングテーブルの隣に座るデルフェールを盗み見た。

 どうにも、最初にリジェラスが押しかけてきて、初めて魔術が行使できるようになった日から、デルフェールの態度がおかしい。タイキに優しいのは変わらないが、タイキと話が続かなくなったりすることが多くなり、一人で何かを考え始めると、途端に険しい表情になって硬直してしまうのだ。

 以前、その様子が気になって、なんでも思ったことは口にしてくれて構わないとタイキは言ったのだが。


『いえ、これは、その……』

『あの時もさ、デルがなんか言おうとしたときにリジェラスが来たから結局分からずじまいだったし。な、あれなんて言おうとしてたんだ?』

『そーそーれーはー……』


 こんな調子で、いつもはぐらかされてしまう。よりタイキが強気に出て、上位命令ということで聞き出すことも可能ではあるのだが、それをするのはタイキの人間としての感性が許さない。

 今日も今日とて、タイキの食事が終わるやいなや、デルフェールは会話する間もなく食器を片付け、タイキの着替えを手伝い、そのままホロともどもタイキを寝室に連れて行って、自分はどこかへ消えてしまった。


「……ねえホロ、俺、デルに避けられてる?」

「いいえ、あれはネクロマンサーに一片たりとも責任などありません。彼自身の問題なのです。今はできるだけそっとして差し上げて、彼のなかで整理がついてからお話しをうかがうのがよろしいかと……」

「ん、そっか」


 ホロの答えにひとまず安心し、タイキはベッドの中央まで這っていって、ふと動きを止める。


「ネクロマンサー?」

「……ホロ、さ。ひょっとして、デルが何に悩んでるか、知ってない?」

「うすうす、気付いてはおりますが」

「マジで!?」


 枕元に並ぶ白フクロウに詰め寄るタイキだったが、まんまるの黒い瞳に見返されて、言葉に詰まった。


「ネクロマンサー、デルフェールのこと、待って差し上げてください。彼の悩みは彼の口から聞いて差し上げてください」

「う……わかった。じゃ、寝るね」


 毛布にくるまり、タイキが枕に頭を預けると、どこからともなく湧いてきたホロウフレアたちが次々にホロと同じような白フクロウの姿をとって、タイキに寄り添ってきた。

 ふわふわもこもこに埋もれる状況をうれしがりつつ、タイキはゆっくりと意識を深い場所へ落としていき……。



 ガンゴンダンダンダダンッッッ!!!



「な、何、何々っ!?」


 突然聞こえた轟音に、ホロもタイキも飛び起きた。寝間着のまま寝室を出ると、ちょうどこちらに向かってきていたデルフェールと鉢合わせする。


「デル、今の音は?」

「ああ、タイキ、どうしましょう、どうしましょう!」

「ちょっと一旦落ち着いて……」

「か、かかか彼が、彼の人が!」


 彼?、とタイキが軽く首をかしげる。しかし、タイキの腕のなかにいたホロはそれだけで何かを察したらしく、ぶわりとものすごい勢いで全身の羽毛を逆立てた。


「で、デルフェール、では」

「はい、はい! まったくもう、あんな人はゼフィストリー一人で十分だというのに! しかもタイキの休息時間ですよ!」


 完璧にパニックに陥っているデルフェールを必死になだめながら、タイキはどうにか彼の言葉の断片から、唐突な客人がこの永久墓地のある結界に訪れたらしいという情報をまとめあげた。

 ……しかも、その人物の人柄はゼフィストリーが引き合いに出されるほど。


「ホロ、デルのことはまあ納得した。けど、今回のことは知ってるなら本当に教えて。こんなにデルが慌てふためくって……」

「ネクロマンサー、とにかく準備を。その合間にお教えいたします!」


 あれよあれよという間にホロウフレアたちに寝間着を剥がされ、先ほどまで着ていたものと同じ形の衣装を押しつけられ、タイキは若干頬を膨らませる。


「だからさ!」

「魔族四種族が一柱、夜の血族、ヴァンパイアを統べる吸血貴族(ヴァンプ)がいらっしゃったようです」


「…………………………………はい?」


 ※ ※ ※


 どったんばったんと仕度を終えて、だいぶパニックの収まったデルフェールの手を握りながら、タイキはホロを肩に止めて屋敷の玄関扉を開いた。

 屋敷の前には、ゼフィストリーやリジェラス、ヴォーゴ、リッパーの他にも、デルフェールが従えているらしいゾンビの一団やマッドハンドたちが、そわそわと落ち着かない雰囲気で集まっていた。タイキが姿を見せた瞬間、勢いよくそちらへ視線を向ける。


「ちょっとちょっとちょっと、タイキ、どうしましょ!? 撃退!?」

「ストップ、ゼフィ。いろいろ冷静になってみようか。その発言かなりやばいよ!」

「いーや、こればっかりは案外やばくもねぇんだよなぁ……」

「え、どーゆうことさリジェ?」


 硬質な髪をがしがしと引っかき回し、リジェラスはタイキの前まで移動して、非常に言いにくそうに口をモゴモゴと動かした。


「あー、な? つまりはそういう性格なんだよ、これから来るヴァンプってのは」

「……俺はまぁいいとして、ディアブロとかバルバロイとかとも、全然?」

「中身的には、戦狂いのバルバロイが一番まともっちゃあまともなのかね」

「バルバロイ様を侮辱することは許さない……と言いたいところだけど、まあ争いごと大好きなのは否定できないわねぇ」


 細い顎に指先をちょいと這わせて、ゼフィストリーは心からのため息をついた。


「いいこと、タイキ。ヴァンプに会ったらとりあえず一通りあいさつして、ちょっと最近の状況とかぼやかして、じゃあ寝ますって引っ込めばいいわ。私たち上級魔族だったらヴァンパイアどもに八つ裂きにされるだろうけど、タイキならまだ、ヴァンプと同じ最上級魔族だから大丈夫なはず!」

「その根拠のあいまいな保証やめようか!? ていうかなに、そこまでヴァンプの人って……」


 なんとか周囲の者たちからヴァンプに関する情報を集めようとしたタイキだったが、勢いよくこちらに飛んできた一体のホロウフレアが持ってきた報で硬直する。


「ネクロマンサー、ヴァンプがこちらに……数秒で到着かと」

「うえ!?」


 ホロウフレアが言うやいなや、ゾンビやマッドハンドたちが小さく悲鳴を上げながら散らばった。大きく開かれたスペースのど真ん中に、直径一メートルほどの漆黒の円が浮かび上がる。

 タイキが茫然と、他の者達はどんよりとした表情でそれを眺めるなか、円は中央からするすると伸び上がって錐体を成し、それもまた二メートル程度の高さにまで先端が達したところで、真っ二つに割れた。

 溶け消えた錐体の中から現れたのは、一人の美丈夫だった。絹のような白銀の髪が肩より少し下の辺りまで伸びており、その目から放たれる眼光は鋭く、紅い。月光のもととはいえ異常に青白い肌と、やや先端が尖っている耳が、彼が魔族であると言うことを周囲に知らしめている。


「……ふう」


 長く厚みのある黒マントをひるがえし、ヴァンプたるその青年はゆっくりと辺りを見回した。そして、目当ての人物らしき少年の姿を認めると、ふっと妖しく笑って腰を折る。


「初めまして、ネクロマンサー。わたくしはヴァンパイアを統べる者、名をロスティスラフと申します」

「…………あ」


 周囲をアンデット以外にも、ビーストやデーモンなど他種族の魔族に囲まれていたタイキは、慌ててロスティスラフに駆け寄り、肩にホロを乗せたままぺこりと深くお辞儀を返した。そして、また顔を上げて、ロスティスラフの顔をまじまじと見て一言。


「すっげぇ格好いいー……」



 ―――――――――………………。



 瞬間、タイキの屋敷の周囲を、沈黙よりもなお重苦しいものが支配した。

 タイキがうろたえるなか、彼の背後ではデルフェールが両手で顔を隠し俯いた。ゼフィストリーはぱしりと片手で自身の右顔を掴み、目を閉じた。リジェラスとヴォーゴはそれぞれ天を仰ぎ、リッパーは思わず両手を合わせ軽く頭を下げた。ホロは、じっとタイキの肩の上で耐えた。


「…………………ふ」

「え、えぇ?」


 タイキの発言の後、顔を伏せて拳を軽く振るわせていたロスティスラフの口から漏れてきた言葉に、タイキは戦慄する。何か、嫌な予感しかしない。それほど自分はまずいことを言っただろうか?


(外見ワードはNGだったとか!? え、でもこんなかっこいいのにアウトってどういうことさ!)


 なるべくロスティスラフを刺激しないよう、その場から移動せずに視線だけを巡らせてみれば、下級魔族の姿はホロぐらいしか見当たらない。ゾンビやマッドハンドたちは、一足先に逃げ出してしまっていた。

 と、ロスティスラフの口から漏れる言葉が、だんだんと形を取り始める。


「…………ふ、ふふ、ふふふふふふふふ……」

「え、えーと……ろ、ロス、ティ、スラフさん?」


 噛まないようゆっくりと彼の名を繰り返し、タイキは彼の顔をのぞき込もうとさらに近づいた。近づいてしまった。背後から、デルフェールの悲鳴が響く。

「タイキ全力で離れてくださいお早くぅううううっっっ!!!」


「へっ」



「ふふふふふっ、そう、そうでしょう、そうでしょうともぉおおおおおおおおおっっっ!!!」



 そして、爆発。

タイキは目に見えない衝撃波に襲われ、「うぴゃあああああああっ!?」と奇声を上げながら吹っ飛んでいった。高速で回転する視界に酔いながら、必死に体を丸めようと空中でもがく。と、全身を誰かにしっかりと抱えられ、視界の回転が収まった。


「おい、生きてるか!? 生きてんなチクショウ!」

「……り、リジェ? あ、ヴォーゴさん」


 デーモン二人に抱えられて、タイキは頭痛のしてきた側頭部を押さえながら、今の状況を呑み込もうと地上を見下ろした。そして、後悔した。

 なんでかタイキの「格好いい」発言で理性の枷が吹っ飛んでしまったらしいロスティスラフを中心に、台風もかくやという暴風が吹き荒れていた。リジェラスたちの周囲には独自の結界が張り巡らされているらしく、暴風に巻き込まれてまた吹き飛ばされるという心配はないようだったが、地上にいるデルフェールとゼフィストリー、リッパーは必死に地面に伏せて風をやり過ごそうとしていた。


「ま、まずい、このままじゃデルフェールが五体バラバラになるし、ゼフィがやまんばになるし、リッパーさんの体が小さくなる! りりリジェ、あの人なんかどうにかして止める方法ないわけ!?」

「そんなん俺が知りたいわ!!! あのいかれヴァンプ(ロスティスラフ)の大暴走を問答無用で止められるなんて、あいつ直属の部下かバルバロイかディアボロ様ぐらいのもんだぜ!?」

「問答無用、てことは力業ってことだよな」


 ヴォーゴに抱えられたまま、ぼそりとタイキがつぶやく。は?、とリジェラスが眉をひそめるのと同時に、タイキは目を閉じて精神統一を開始した。


「……集え集え集え集え集え」

「え、ちょ、お前も一体何する気……!?」


 タイキの言霊に反応して、面白いぐらいに彼の手元に集まっていく力の大きさに、さしものヴォーゴですら口元を引きつらせる。彼はタイキを止めようとするリジェラスを逆に制止して、完全に瞑想(トリップ)状態のタイキの体を抱え直し、ゆっくりと高度を下げていった。

 一方地上では、完全に目が蕩けてイッてしまっているロスティスラフに向けて、無駄だと思いつつも残されたデルフェール、ゼフィストリー、リッパーが口々に制止の言葉を放っていた。


「こんの白髪ぁ!! とっとと黙りやがれっつってんでしょーぉ!?」

「おるぅあぁこの充血ヤロー、タイキまで吹っ飛ばしやがってテメェただじゃおかねぇからなぁっ!?」

「アンデット総力であんたのこと叩きのめしてやりますよぉっ!」


 ……訂正、制止と言うより最早暴言であった。特にデルフェールの言葉はキャラが変わってしまっている。

 そんな彼らの頭上から、思わず体の奥底から震えがはしるほどの存在感が近づいてきた。口を閉ざし、デルフェールたちは視線を上に向ける。暴風の中央にいるロスティスラフですら、「ん?」といった表情でそちらに顔を向けた。

 ヴォーゴに腰の辺りを抱えられて降下してきたタイキはすでに目を開いており、自分でも驚くくらい集まった純粋な力を両手でしっかりと押さえ込んでいた。リジェラスの講義によって魔力をだいぶまともに扱えるようになっただろうとは感じていたのだが、彼自身、ここまでとは思っていなかった。


「……みんなと、俺の家を吹っ飛ばす気かぁああああああああああっっっ!!!」


 そして、淡い光の粒として視認できるほどまでに高められた力をリング状にして、タイキはそれを勢いよくロスティスラフに向けて放った。その速度は、ロスティスラフが本能的に展開しようとした結界よりもなお速く。

 ……一秒後、ロスティスラフ暴走開始時よりもすさまじい衝撃が永久墓地全体を揺らした。


スミマセン。

爆音、絶叫、暴言の一大漫才。まさかロスティスラフの初登場でこのテンションを書くことになるとは思いませんでした。ええ、でも後悔は多分してません。このノリが大好きな人間ですから。

彼の訪問はまだ続きます。一ページにまとめようかと思いましたが、長い!と思ってやめました。

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