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アンデット・ターン!  作者: 空色レンズ
第一部:結界編
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(1) ~ 肝試しと言えば肝試し?



 古来より、この国には他の文化が生みだした化物共とは、一線を画する『妖怪』というものが存在している。八百万の神……どんなものにでも神は宿る。付喪神、というものが良い例だ。それすなわち、人ならざる身にて、人と等しい意識を持つものが現れてくる。知らず、人を助ける者もあれば、人に害なすもの……つまりは、妖怪とはそんなもの。

 さて。


「いや、夏の風物詩肝試し大会というのは、まあいいんだ。自由にやればいいと思う。けれど、相方が逃げた状態の人間も放り込まれなければならないものか……?」


 右手には雑木林、左手には四角い墓石の立ち並ぶ墓地が見える細い土の道を、一人の少年がぶつぶつとつぶやきながら、行灯型ライトを片手に歩いていた。平均男子よりもやや低めの背に、さらさらした黒髪が適度な長さで切りそろえられている。とろんとした目が印象的な眼鏡を掛けた顔は、上とも下とも言えず、中間の中間くらいの造作であった。

 熊谷 大輝(くまがいたいき)は、またさらに、盛大なため息を吐いた。

 事の起こりは数週間前。クラスの友人グループが人を集め、近くの海の家に一泊する小旅行を提案、その際近くにそれらしい雰囲気の山道や墓場があるから、肝試しもしてみようとなったのだ。最終的に集まった人数は十人。それぞれ二人一組のペアとなって、事前に下調べをされたコースを歩き、ゴールに設置された品物を持って帰ってくるという、ごくごく単純なルールのはずだった。

 だが、小旅行当日。一人だけ『体調不良』という名目で旅行をドタキャンした者がいた。それが、大輝とペアになって肝試しに参加するはずだった人間である。

 この場合、あぶれた大輝は他のペアのどこかに入れてもらうか、または一人海の家で待機することにするかの二択だろうと考えていた。さすがに一人で夜間の二キロの道のりは厳しすぎる。海の家に到着したばかりの頃は、他の面々もそう考えていた……はずだった。


「大輝、試しに一人で行ってみないか? お前、あんまり怖がったりしたところって見たことないし」


 このような馬鹿発言をする悪友、横田 出海(よこたいずみ)がこの場にいなければ。

 大輝は、確かにそれほどこの手のものを怖がったりしない。楽しんだりもしないが、林間学校で真夜中に教師の目を盗んで行なわれた百物語では、始終、話のつくりに感心するか、話のオチの弱さを指摘するかのどちらかであった。それでもまあ、ホラー映画やホラーゲームにはビビるし、実際に幽霊なんぞが目の前に出てきたら、失神できる自信もある。

 なのに。ちょっと人より驚きにくいからって、そりゃないだろう。


「おい出海、お前ふざけたこと言ってるんじゃ」

「はいはいはーい! 山道で驚いてこけつまろびつして若干目を潤ませながら戻ってくる大輝が見たい人ー、挙手っ」

「「「はーい!」」」

「お前らあああああっっ!!?」


 かくして、大輝は無理矢理一人参加で……しかも、最初の肝試し体験者に選ばれてしまったのである。



 ※ ※ ※



 時刻は九時半。町を歩いていれば、警官に声をかけられるか、そのまま補導されるかしてしまうであろう時間帯である。しかし、ここはちょいと寂れた沿岸の漁村(言い過ぎ)、気味の悪さでは定評のある山道には、大輝以外人っ子一人いやしない。


「いや、ここで何かの人影を見ても困るんだけどさ」


 さすがにそれは怖い、と身震いして、大輝はライトを持ち直す。なるべく早足で、雑木林と墓場の間の小道を抜けようとした。

 そのとき。

 チ チ チ ……


「ん?」


 なにか、小さな鳥のさえずりのような音がしてきた。雑木林……からではない。墓場の方からでもなく、空からでもない。

 下。


「…………まあ、いっか」


 空耳だ、と自分に言い聞かせて、空気が抜ける音しかしない下手な口笛を吹きつつ、大輝はずんずん歩いていく。今度はなんの音も聞こえなかった。五十メートルほど歩いたところで、ほっと一息をつく。


「えーっと、道なりだから、あれを曲がったらゴールだな」


 まったく、やはり幽霊なんかいないのだから、ちょっと木の葉がこすれあうような音を我慢すればあっという間にたどり着けてしまう。むしろあの騒がしい相方がいなくてよかったカモ。そう、思った瞬間に。


「え?」


 ライトが消えて、足下の地面の感覚も消失した。

 悲鳴すら上げられないまま、大輝は暗闇の中へと一直線に落ちていった。


さて、始まりました異世界トリップ小説。今までずっと書きたくて書きたくてしょうがなかったジャンルですw しかし、こちらには魅力的な異世界トリップ小説がたくさんあって……目の肥えている皆様にどう受け取って貰えるかビクビクです……。

それでは、多分近いうち更新停止になる可能性が高いですが(え)、よろしくお願いいたします!

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